年齢階層別に平均賃金の推移をさぐる

↑ 賃金と年齢の関係を具体的な数字で確認。(写真:アフロ)

・一般労働者の2017年における平均賃金は男性33万5500円、女性24万6100円。

・男性の平均賃金は50代前半まで上昇、以後下落。女性もピークは50代前半だが男性と比べると上げ幅は小さく、40代前半でほぼ上昇が止まっている。

・20代前半における平均賃金の経年推移を見ると、金融危機直後は上昇しているが、これは手取りの低い非正規社員が失職して平均値が底上げされているのが原因。リーマンショックで大きく落ちた後は上昇に。最近では過去最高額を更新し続けている。

男女で異なる年功序列制のような賃金実態

以前と比べると随分と慣習としては薄れてきたが、それでもなお根強く残っているのが「年功序列制」。年を取れば誰もが昇進し、給与も増えていく仕組みだが、そのような制度が明確化されていなくとも、同じ職場で経歴・経験を積めば有能な人材となり、その実力にあった評価がされれば、次第に昇格・給与の上乗せは望める。日本ではどの程度、年齢と賃金との間に関係があるのだろうか。厚生労働省が2018年2月に発表した賃金構造基本統計調査の報告書から、その実情を確認する。

今回検証する賃金とは「賃金(所定内給与額)」を意味する。これは基本給に家族手当などを足したもので、通常はほぼ固定して受け取れる額を意味する。また今件はフルタイム労働者を意味する「一般労働者」を対象とし、フルタイムなら契約社員や派遣社員も該当する。ただしパートやアルバイトは「一般労働者」では無く「短時間労働者」なので、検証対象外となる。

まずは2017年における男女別・年齢階層別の平均賃金。

↑ 男女・年齢階層別平均賃金(2017年、千円)
↑ 男女・年齢階層別平均賃金(2017年、千円)

男性が50代前半まで年功序列制的に大きく上昇、以降は下落傾向の動きをしている。女性もピークは男性と同じ50代前半だが、上げ幅は小さく、40代前半でほぼ上昇が止まっているような状態。他方、男女とも50代後半以降、特に60代前半に大きな減少を示しているのは、(早期)退職で一度離職し、非正規社員として再雇用される事例が増えてくるからだと考えられる。

女性は男性と比べれば年齢階層間の差異は小さい。非正規社員率が男性と比べて高いことが影響している。

続いて同じ区分で前年比を計算したもの。

↑ 男女・年齢階層別平均賃金(2017年、前年比)
↑ 男女・年齢階層別平均賃金(2017年、前年比)

男女別・年齢階層別で確認すると、女性は大よその年齢階層でプラスが出ているが、男性は中堅層以降でマイナスが多々出ており、これが全体値の足を引っ張った実情がうかがえる。なお60代後半で男性が大きなマイナス、女性で大きなプラスが出ているのは、この層の回答実数が少なくぶれが生じやすいことに加え、前年における前年比がそれぞれプラス2.3%、マイナス5.3%と大きな幅だったことによる反動も影響している。

男性の中堅層で賃金上昇率が低めどころかマイナス値を示す層があるのが目に留まる。これは前年から続いている傾向。世代間格差の一端を見せられているようで、複雑な気分になる人も少なくあるまい。あるいは早期退職制度を適用した人によるものだろうか。

一部の年齢階層を経年推移で

続いて過去のデータを絡めた、平均賃金の経年推移を年齢階層別に確認する。男女のデータはそれぞれ存在するが、すべてを精査するとあまりにも雑多なものとなるので、男性に焦点を絞る。まずは一番気になる人が多いに違い無い、今件公開値では一番若い仕切りとなる、20代前半について。

↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)

金額の絶対額ではこの20年強の間ほとんど変化が無く、100円玉のやり取り程度の変化に留まっていた。しかし2014年以降は明らかに上昇の動きにあり、2015年以降は最高額を更新し続けている。

2007年から2008年では景気動向(サブプライムローンショックにはじまる「金融危機」は2007年夏から)に反して上昇しているが、手取りが低い非正規社員(契約社員、派遣社員など)の失職が想定できる(実際、2008年分の該当属性の動向を見ると、前年比で正規社員はプラス1.6%なのに対し、非正規社員はマイナス1.3%を示している)。全体に占める「手取りの低い非正規社員」の比率が下がれば、その母体での平均賃金は上昇するからだ。

直近の2017年に限れば賃金は前年に続き上昇。今回確認した期間内では最高値を更新し、当然のことながら金融危機ぼっ発直前の水準を超えている。2013年以降前年比でプラスを計上し続けているのは、グラフの形状から見ても珍しい、そして喜ばしいパターンであることがうかがえる。

続いて、20代前半だけで無く30代前半・40代前半・50代前半の前年比を一つにまとめたグラフ。

↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)

中期では30代前半が各層の中では下側にいるが、金融危機ぼっ発以降(2008年以降)ではむしろ40代の下げ率が大きい。20代~30代、50代と比べ、1ランク下の動きのように見える。この年代の男性非正規社員が増えたのか、あるいは元々賃金が高く、しかも下げやすい層として経営陣側に目をつけられた可能性はある。

これらのグラフから分かるのは、今回対象とした1993年以降(前年比では当然1994年以降)では多少の起伏があるものの、賃金に大きな上昇・下落の変移は無い(毎年2%から3%内に収まっている)こと、そして年齢階層別に賃金の上下の点で格差が生じていること。

すべての年齢階層で一斉に上昇・下落するパターンはほとんど無く、必ず互いに補完し合っているように見える。例えば2005年は30代・40代・50代がプラス、20代が大きくマイナスといった形である。今回はグラフが雑多になるため各年齢階層の後半(20代後半など)は略したが、仮に入れたとしても同じような傾向が確認できている。

ただし2009年は例外。補完云々などは無く、皆が大きく下落している。2009年の急落ぶりと翌年の反動(ただし前年比プラスの動きを示したのは20代前半と50代前半のみ)がいかにレアケースであったか、つまり「リーマンショック」の影響力の大きさが改めて理解できるというものだ。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。