「小学一年生」~「小学六年生」などの部数動向をさぐる

↑ 晴れて入学、小学一年生。専門雑誌は読みたいかな?(写真:アフロ)

・「小学●年生」シリーズで現存している定期発刊誌は「小学一年生」のみ。

・経験則から5万部が休刊判断の死活ラインだが、「小学一年生」はすでにそれを割り込んでいる。

・幼稚園児向け雑誌も部数は漸減中。「妖怪ウォッチ」による特需も今は見受けられない。

残るのは「小学一年生」のみ

紙媒体としての雑誌はメディアの変化の荒波にもまれ、部数を減らしている。少子化との関連も併せて動向が気になる、小学生向け雑誌の「小学一年生」~「小学六年生」などの実情を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。電子版は含まれない)から確認する。

「小学一年生」~「小学六年生」の印刷証明付き部数の動向を示したのが次のグラフ。「GAKUMANPLUS」は「小学五年生」「小学六年生」の統合・刷新版として登場した雑誌のため、あえて今グラフに含めている(すでに休刊しているが)。また後述する「小学8年生」は印刷証明付き部数が計上されていないので、当然グラフには登場しない。

↑ 小学一年生~六年生の印刷証明付き部数(部)
↑ 小学一年生~六年生の印刷証明付き部数(部)

昨今では子供が小学生、さらには幼稚園・保育園児の時期からスマートフォンやタブレット型端末を貸し与える保護者も少なくない。子供への情操教育などまで含めて、子供向けの学習用タブレット型端末をパッケージ化した教育プログラムも多数の関連企業から展開されており(ベネッセの「チャレンジタッチ」が好例)、それらが学習用も兼ねた子供向け雑誌の代替品として扱われる面もある。結果、高学年向け雑誌になるに連れて購買対象種類は増え、一雑誌あたりの購入部数は減っていく。今グラフではその実情が見事に現れた形となっている。

その上、昨今の雑誌業界全体の不況のあおりを受け、該当雑誌は次々に休刊。かつてこれらの雑誌で育ってきた大人にはショックな話ではあるが、すでに「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」「小学六年生」が休刊しており、これまで発行を続けているのは「小学一年生」「小学二年生」の2誌のみだった。

そして「小学二年生」も2016年12月26日発売の「2・3月合併号」を最後に休刊。残りは「小学一年生」のみなのが現状。ちなみに直近期となる2017年10~12月期の部数は4万2667部。

直近期における前四半期比、つまり季節変動などによる影響がある動向は、「小学一年生」ではマイナス25.1%。お世辞にもかんばしいとはいえない。ちなみに季節変動を考慮した上での変化が分かる前年同期比はマイナス31.7%で、低迷感は否めない。「妖怪ウォッチ」特需による部数底上げの影響はすでに無く、再び慢性的な下落基調に転じている。

「小学二年生」の休刊後はその代替、というよりは「小学二年生」も含めた小学生全体に向けた雑誌とのコンセプトで、増刊号的立場の「小学8年生」が展開を開始している。該当期間内では2017年11月28日に発売された第5号が最新号。付録もあわせ非常にリッチで、部数面でも大いに期待できそうな内容ではあるが、部数は非公開。

幼稚園関連誌を追加して再確認

「小学●年生」の現存誌が現時点では1誌しか無くなったことから、幼稚園児向け雑誌「学習幼稚園」「幼稚園」「たのしい幼稚園」の3誌を加え、再構築したのが次のグラフ。タイトルに「など」が入っていることに注意。

↑ 小学一年生~六年生などの印刷証明付き部数(部)
↑ 小学一年生~六年生などの印刷証明付き部数(部)

追加した幼稚園関連の3誌の動向を「小学●年生」シリーズと重ねたが、幼稚園向け雑誌では小学生向け雑誌のような、「春に伸び、冬に落ちる」といった年単位での季節変動的な特性は確認できない(ここ5年ほどに限れば「たのしい幼稚園」がその傾向があるように見えるぐらい)。一方で、幼稚園児向け雑誌もまた小学生向け同様に、中期的にはその部数を減らしているのが分かる。あえてポジティブにとらえれば、「幼稚園」が下落から横ばいに移行したと解釈できる程度。

部数動向を一層分かりやすくするため、各年の同四半期の動向に絞ってグラフを再構築したのが次の図。季節変動を考慮せずに済む、年ベースでの動向を推し量ることができる。

↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園関連(一部)の雑誌・印刷証明付き部数(部、各年10~12月期のみ)
↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園関連(一部)の雑誌・印刷証明付き部数(部、各年10~12月期のみ)

一部イレギュラーはあるもののほぼ右肩下がりで推移してきた現存誌において、2014年から2015年にかけて、明らかにこれまでとは異なる動きを一部(「小学一年生」「幼稚園」)で示しているのが一目でわかる。これが「妖怪ウォッチ」特需によるもの。しかしそれ以降はあえなく失速し、再び下落基調に転じている。

また2016~2017年の「小学一年生」の減少ぶりが非常に大きなものであることも確認できる。過去の各誌の最終防衛ライン的な部数は5万部との経験則があるものの、そのラインすら下回ってしまった。早急な手立てが求められよう。

子供向け教材の不調さの一因としてよく語られる「少子化」だが、状況として存在する以上、その影響が無いわけでは無い。しかし今記事グラフの領域時期に該当する期間中に、幼稚園児や小学生が半減するようなスピードで少子化が進んでいるわけでは無く、少子化だけを理由とするのには無理がある。

↑ 小学生数推移(国公私立合計、人)(文科省・学校基本調査から筆者作成)
↑ 小学生数推移(国公私立合計、人)(文科省・学校基本調査から筆者作成)

「小学●年生」で現存しているのは、現時点では1誌「小学一年生」のみ。経験則から死活ラインとなる5万部切れすら生じてしまい、先行きは明るいとはいえない。

「妖怪ウォッチ」による特需的な部数の底上げをよい経験とし、今後はいかにこのタイプの特需となるネタを活用して部数の維持、さらには引き上げに活かすか。その施策を断続的に続けることができるか。感度の高い子供市場に向けたレーダーの実装と、即時に対応できる機動力、そして企画力の高さが求められる。子供を育てる立場にある保護者の納得がいくものを創り上げるのはもちろんだが、子供自身が興味を抱き、保護者にねだるほどの魅力を創生し盛り込み続けるのも、職人ならではの使命であり、状況改善の道の一つに違いない。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。