ジャンプ一強だが200万部割れ継続中…少年向けコミック誌の部数動向をさぐる

↑ 店頭に並ぶ雑誌群。盛況そうに見えるが……(筆者撮影)

・2017年10~12月期で少年向けコミック誌の印刷証明付き部数トップは「週刊少年ジャンプ」の181.3万部。

・部数では「週刊少年マガジン」が第2位、そして「月刊コロコロコミック」「月刊少年マガジン」が続く。

・部数の前四半期比では「月刊コロコロコミック」「別冊コロコロコミックスペシャル」のみがプラス。前年同期比では全誌がマイナス。

ジャンプ最強伝説継続中…直近四半期の実情

専用の電子書籍・雑誌リーダーだけで無くパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇の一途との解釈もある。一方で紙媒体を用いた本は相対的な立ち位置の揺らぎを覚え、多分野でビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。今回はその雑誌のうち、特にすき間時間の良き友といえる少年向けコミック誌について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)のうち、2018年2月に発表した最新分にあたる、直近四半期分となる2017年10~12月分(2017年第4四半期、2017年Q4)を中心に実情を確認する。

まずは少年向けコミック誌の直近四半期、2017年10~12月の実情。「週刊少年ジャンプ」が群を抜いている状況は想像の通り。少し前までは唯一のダブルミリオンセラー(200万部以上の実績)誌として君臨中だったのだが、公開データとして取得可能な最古の値となる2008年の4~6月期以降では3四半期前にはじめてその大台を割り込み、今四半期でも挽回はならず、200万部割れが継続する形となった。次いでやや年上の少年向け雑誌「週刊少年マガジン」、さらには小学生までの低年齢層向け(主に男子向け)雑誌「月刊コロコロコミック」。

↑ 2017年7~9月期と2017年10~12月期における少年向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)
↑ 2017年7~9月期と2017年10~12月期における少年向けコミック誌の印刷証明付き部数(万部)

かつては複数誌が100万部を超えていたが、「週刊少年マガジン」が2016年Q3に100万部を割り込んだことで、少年向けコミック誌で100万部超えの雑誌は「週刊少年ジャンプ」だけとなってしまった。恐らくはこの状態が今後も継続するのだろう。やはりすき間時間の消費対象の代替的存在、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末の普及による影響は極めて大きいようだ。

他方、唯一の100万部超えの「週刊少年ジャンプ」だが、直近データで確認すると印刷証明付き部数は現在181万3333部。雑誌では返本や在庫本(売れ残り)なども存在するので(返本率などは部数動向では非公開)、それを勘案すると最終消費者の手に渡っている冊数は、これよりも少なくなる。雑誌の種類やジャンルによって返本率は大きな変動があるが、暫定値として4割と試算すると(上場している取次会社の決算資料によると、雑誌の返本率は大よそ4割)、実セールスは110万部ぐらいだろうか。あるいは「週刊少年ジャンプ」だからこそもう少し返本率は低いかもしれないが、雑誌別の返本率は非開示であるため、その実情は分からない。

↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年ジャンプ)(部)
↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年ジャンプ)(部)

同誌はピーク時となる1995年では635万部の値を出していた記録を目にするに、その4割足らずにまで落ちてしまった現状は、時代の流れを感じさせる。「週刊少年マガジン」の100万部割れと併せ、雑誌全体の歴史において一つの時代を刻んだ流れと考えれば、冷静に受け止めることもできるのだが。

コンビニなどでもよく見かけるメジャーな週刊コミック誌で、大規模かつ大胆な組織構造改革宣言を行った「週刊少年サンデー」の部数は、今四半期では30万6000部。公開データとして取得可能な最古の値となる2008年の4~6月期における86万6667部からは約35%にまで部数を減らしている。

↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年サンデー)(部)
↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年サンデー)(部)

グラフの形状からも分かる通り、何度か大胆な改革により部数持ち直しの気配も見られたが、全体的な流れに逆らうまでには至っていない。今回の改革に関しても、現時点ではその成果は数字には現れていない。もっとも2015年8月に宣言をしたのだから、今回の該当期間で成果を見せろとは難しい話であり、むしろ今後の動向に期待をしたいところ。

ただしそこまで同誌そのものが現状の体制を維持できるのか、早ければ次四半期にも陥る可能性がある30万部割れが一つの節目となるのでは無いか、その点が不安ではある。他方コミック誌は電子化が進んでおり、電子雑誌版に流れた読者が原因で、「印刷」部数が上向きになっていないだけの可能性も否定できない。

2誌のみがプラス…前四半期比動向

続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売部数変化率を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

なおデータが雑誌社側の事情や休刊などで非開示になった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌は、このグラフには登場しない。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌)(2017年10~12月期、前期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌)(2017年10~12月期、前期比)

今四半期で前四半期比によるプラス計上の雑誌は2誌「月刊コロコロコミック」「別冊コロコロコミックスペシャル」のみ。誤差領域(上下幅5%以内)を超えた確実なマイナスは3誌、「コロコロイチバン!」「少年サンデーS(スーパー)」「ゲッサン」。

数少ないプラス計上をした「月刊コロコロコミック」だが、2018年1月号(2017年12月15日発売)で付録に「スプラトゥーン2」の「エンペラーギア完全限定シリアルコード」が付録だったのが注目を集め、部数を底上げしたようだ。「別冊コロコロコミックスペシャル」も同様の付録攻勢でプラスに転じたもの。

季節動向を考慮し前年同期比で検証

続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2017年10~12月分に関する検証であることから、その1年前にあたる2016年10~12月分の数字との比較となる。年ベースと少々間が開いた期間の比較となるが、雑誌の印刷実績で季節変動を除外し、より厳密に知ることができる。

数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で数十パーセントもの下げ幅を示す雑誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる…とはかつて用いていた表現だが、最近では「見受けられる」ではなく「よく見受けられる」とした方がよい状況となっている。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌)(2017年10~12月期、前年同期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少年向けコミック誌)(2017年10~12月期、前年同期比)

プラスの雑誌は皆無。前期比では付録で飛翔した「月刊コロコロコミック」も、前年同期比ではマイナス5.1%で誤差領域を超えた下げ幅。誤差領域を超えた下げ幅を示したのは10誌、10%以上の下げ幅は4誌。

水曜発売の週刊誌として相並び紹介されることが多い、そして昨今では100万部割れで注目を集めた「週刊少年マガジン」と、その宿命的ライバルな存在の「週刊少年サンデー」の部数動向は次の通り。

↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年サンデー/週刊少年マガジン)(部)
↑ 印刷証明付き部数推移(週刊少年サンデー/週刊少年マガジン)(部)

「週刊少年マガジン」の方が部数は3倍近く多いが、部数の下げ方もやや急で、その差は少しずつだが縮まりつつある。このような形での競争では無く、双方とも上昇の中での競り合いを見せてほしいものだが。

現在は電子本、ウェブ漫画が世間に普及する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。これまでは馬車でしか行き来できなかった場所への輸送ビジネスが、バスや電車、飛行機などが登場し、馬車業界において顧客が奪われているような展開とも表現できる。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。そのため、印刷証明部数が減少を続けても、各誌そのものの需要がそれと連動する形で減少しているとは限らないのには注意をする必要があろう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。