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世界各国の石炭埋蔵量や採掘量の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 掘り出される石炭。石油と比べれば地域偏在性も少なく、利用もしやすい。(写真:アフロ)

・石炭の埋蔵量トップは中国、次いでアメリカ合衆国、ロシア。

・石炭の採掘量トップは中国、次いでアメリカ合衆国、インド。

・中国は計算の上では自国で採掘した石炭のほとんどすべてを消費してしまっている。

環境に与える負荷が大きいものの、採掘できる場所の偏りがさほど無いことから、エネルギー源として重要視されている石炭。その埋蔵量や採掘量の実情をアメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)の公開データベースの値を基に確認する。

石炭といえば、かつて日本国内では主要エネルギーの一つであり、国内でも大量に採掘されていた。1961年には年間5541万トンもの採掘が行なわれピークを記録したが、それ以降は石油に主要エネルギーの座を譲り渡したことや、外国産の石炭の方が割安との状況下で国内産の採掘量は激減。現在では年間消費量約1億7770万トン(2015年度)のほとんどが輸入品の状況にある。

その石炭についてだが、地質学的な埋蔵量は3.4兆トンほどとされているものの、技術的・経済的に採掘が可能な埋蔵量は約1.1兆トン(2014年時点)に留まっている。その埋蔵量の上位国を列挙したのが次のグラフ。今件データはEIAでは2014年のものが最新値として収録されており、それをそのまま用いている。

↑ 石炭埋蔵量トップ15(億トン)(2014年、採掘可能量)
↑ 石炭埋蔵量トップ15(億トン)(2014年、採掘可能量)

トップは中国、次いでアメリカ合衆国、ロシア、オーストラリアの順。なお今回記事の「石炭」とは、瀝青炭・無煙炭・亜瀝青炭・褐炭のすべてを含めた値である。石炭の採掘、輸出でよく名前が上るオーストラリアも上位に名を連ねている。上位国のうちドイツの名前は意外に思う人もいるかもしれない。

次いで年間の採掘量上位国、そして「採掘量の上位国における」その国の消費量をかぶせたグラフを併記する。エネルギーの需要は効率性や環境などの観点から原子力や太陽電池、石油、ガスなどに主軸を移している国が多い。必ずしも石炭の消費量の大きさが、エネルギー関連の技術の先端性を意味するものでは無いことに注意する必要がある。

↑ 石炭採掘量トップ15(億トン、2015年)
↑ 石炭採掘量トップ15(億トン、2015年)
↑ 石炭採掘量トップ15とその国の消費量(億トン、2015年)
↑ 石炭採掘量トップ15とその国の消費量(億トン、2015年)

埋蔵量の順位とは入れ違いがいくつか見られ、トップは順位こそ変わらないものの、他国を大きく抜きん出る形で中国、ついで大きく差をつけられる形でアメリカ合衆国がついている。これは石炭の工業使用が技術的に容易であること、さらには安価で経済的に優れていることに起因する。ただし石炭は「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。

また、消費量との重ね合わせグラフを見ると、大量の採掘量を有している中国が、(少なくとも数字の上では)自国内消費分でほぼ消費してしまっているのが分かる。中国が(言葉通り)桁違いで採掘と消費を行っていることが理解できよう。

上記グラフは「採掘量順の」消費量。そこで次に純粋な消費量のみでの上位陣をグラフ化しておく。

↑ 石炭消費量トップ15(億トン、2015年)
↑ 石炭消費量トップ15(億トン、2015年)

中国の消費量の多さが改めて実感できる。2位以降の14か国分全部を合わせても、中国の消費量の方がまだ多い(2位から15位までの計14か国の合計は30.611億トン)。また日本や台湾のように、石炭を輸入に頼る国の名前が入っている(採掘量上位をもとにしたグラフでは出てこなかった)のも確認できる。

石炭は製鉄の原料として使われるだけで無く、発電用エネルギー源としてもいまだに重要な役割を担っている。2007年の乱高下相場をきっかけにした資源の価格上昇以降、採掘技術や環境対策の進歩を受けて石炭が見直されつつある。昨今においても同様の状況が見られる。また日本に限れば、LNG同様に火力発電所の燃料としても注目を集めているのが実情。

今後も石炭の動向には大いに留意を払いたいところだ。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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