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新聞への信頼感の上下とその理由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新聞への信頼感は下落しているとの話もあるが…。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・新聞への信頼感は下落中。

・新聞への信頼感が上昇した人の理由は「情報が正確」「根拠に基づく情報を報道」が上位。

・新聞への信頼感が下落した人の理由は「特定勢力に偏った報道」「政府・財界の主張通りに報道するだけ」が上位。

新聞通信調査会が2018年1月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)によれば、NHKテレビや新聞、民放テレビなど主要メディアの信頼度は下落を続けている。人々は信頼感の下落を強く覚えているようだ。

次に示すのは問い合わせ時に過去1年間において、各メディアに対して信頼感は変化したのか否かを尋ね、「上昇」から「下落」の値を引いたDI値を算出した結果。プラスならば上昇と考えた人が多く、マイナスならば下落と考えた人が多い。それぞれの方向の絶対値が大きいほど、その思いが強いことになる。

↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)
↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)

信頼感の上下度合いは回答者それぞれで一概には言えないが、大よそ「上昇」が「下落」より多ければ信頼度は増加し(DI値はプラス)、逆なら減少(DI値はマイナス)と見ることができる。その観点で結果をチェックすると、全メディアで信頼度は減少していることになる。何しろDI値のグラフでゼロを超える値が存在しないのだから。

新聞のDI値におけるマイナス幅は年々縮小していたが、直近年度では再び拡大している。2014年度では大幅下落が生じたが、その時の影響は継続中と解釈できる。なお2014年度の急落は、いうまでも無く朝日新聞における誤報・捏造・誤報に対する再精査への意図的な無作為による放置の数々が取りざたされたこと。この事案による不信感は時の流れとともに薄れつつあるが、一向に改善しない新聞の体質に、信頼感のDI値をプラスに押し上げるまでの環境は期待できそうにも無い。

新聞に関しては直近年度では信頼感が上昇した(高くなった)と回答した人は4.2%、下落した(低くなった)と回答した人は7.9%。それぞれの回答者に、なぜその選択をしたのか・思ったのかを尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)

新聞の信頼感が高くなった人、より信頼するようになった人の理由だが、情報の正確さや根拠に基づく情報を報道したこと、公正・中立さへの評価が主なものとなっている。ドラマや映画で新聞社に勤める主人公が語りそうな「政府や財界に迎合しない」との意見は直近年度では2.3%。

前年度との比較では、根拠に基づく情報を報道の値が大きく増加し、公正・中立な立場で報道したとの値を超え、順位が入れ替わる結果となっている。少なくとも信頼感が高くなった人としては、新聞が根拠に基づく情報を報道すると判断し、その姿勢を評価し、これまでより一層信頼をするようになった人の割合が増えていることになる。

他方信頼感が低くなった人、信頼が損なわれたと感じる人のトップの意見は「特定勢力に偏った報道」で41.4%。ただし設問、報告書ではどの方面、対象の特定勢力とは書かれていない。色々な解釈ができそうだが、いわゆるダブルスタンダード的な報道が日常茶飯事化しているとの指摘も多々ある現状では、無視できない動きには違いない。ただし別選択肢に「政府・財界の主張通りに報道するだけ」がある以上、それと同じ方面に優遇した上で偏った報道との読み方は難しそうだ。

「誤報があった」は直近では4.8%で順位としては5番目に過ぎない。2014年度から2015年度の大きな値は言うまでも無く朝日新聞の複数事案が大きく影響したものだが、2016年度以降は優先順位は下げられている、ほとぼりがさめつつあると認識できる。とはいえ、話題性はともかく問題の重要性の観点では肩を並べるほどの誤報は日々のごとく行われ、それに対する新聞社側の姿勢も改善を期待できるようなものでは無いのも事実ではある。

択一問題であるため重要度としてはさほど高く無いと認識されているのか、回答率は9.2%とさほど高くは無いが、憶測による情報も流しているとの意見が増加傾向にあるのも気になるところ。ある意味、誤報よりもたちの悪いものに他ならないからだ。

新聞は主要メディアの中ではNHKテレビに次いで高い信頼度を持っているが、それはこれまでの先人諸氏の努力によって積み上げられた「信頼」と名付けられた資産を食いつぶして、ようやく維持しているに過ぎない。その現状を認識し、行動を律する事ができなければ、「信頼感は下落した」との回答者率は、来年度以降も高い値を維持したままとなる。果たして新聞に携わる人のどれだけが、その事実を理解しているだろうか。

■関連記事:

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世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をグラフ化してみる(2010-2014年)

※メディアに関する世論調査

直近分となる第10回は2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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