搬送人員は増加中、搬送時間は平均39分18秒…救急自動車の出動状況をさぐる

↑ 緊急搬送を要する病人には救急自動車が欠かせないが。(写真:アフロ)

・救急自動車が通報を受けてから現場に到着するまでの平均時間は2016年中では8分30秒、病院に収容するまでは39分18秒。

・救急自動車による搬送人員は増加中。軽症者数が大幅に増加していたが、ここ数年では中等症者が大きく増加に。

・高齢者の搬送者比率は人口構成比をはるかに上回る。

増加する需要に伴い遅延化する救急搬送

総務省消防庁は2017年12月20日、2017年版の消防白書を発表した。それによると119番通報を受けてから対象患者を病院に搬送するまでの全国平均時間は、2016年(中)においては39分18秒であったことが明らかになった。これは前年の2015年の39分24秒と比べて6秒短縮されている。また通報を受けてから現場に到着する時間は8分30秒となり、こちらも2015年の8分36秒と比べ6秒短縮された。

直近年では前年比で時間短縮を果たした救急搬送体制だが、昨今では遅延化が問題視されている。次に示すのは消防庁内のサイトから抽出可能な数字を用い、「救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均」、さらにそこから「現場到着後・病院収容までの時間」を算出してグラフにしたものだが、次第に時間が延びている実情がうかがえる。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均

「現場到着時間」とは通報を受けてから現場に着くまで、「病院収容時間」とは通報を受けてから現場に到着し、対象患者を収容して病院に収容するまでの時間を意味する。いずれの時間も年々増加の傾向を見せているのが分かる。現場に到着するまでの時間も、そしてその後病院に収容されるまでの時間双方とも少しずつ延びていた。ここ数年でようやく天井感を見せた雰囲気ではある。

進む搬送者の高齢化

「病院収容時間」などの時間が延びている原因はいくつか推測でき、白書でも問題点として指摘している。そのうちの大きなものが「軽症患者、あるいは救急搬送が不必要な事例による出動が増え、救急活動がオーバーフロー気味となっている」と「高齢者の呼び出しによる出動回数の増加」。それを裏付けるデータを確認していく。

まずは傷病程度別運搬人員の状況。もっとも古い1998年から直近の2016年までのデータをもとに算出して比較したもの。軽症者比率はほぼ横ばいで、中等症者(3週間未満の入院が必要な病症な者)比率が増加、重症者以上が減少している。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)

ただしこれは全搬送者数に対する比率。1998年当時は約354万人だった搬送者も10年後の2008年には約468万人、そして直近の2016年では約562万人にまで増加している。その上で比率に変化があまり無いことから、軽症の搬送者数は増加していることが分かる。もっともここ数年ではそれ以上に、中等症者が増加しているが。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)

怪我にしても病気にしても本人自身ではその重度が判断しにくい。「軽症に思えるのなら救急自動車は呼ぶな」との意見に正当性は無い。しかし同時に、数字の上ではこのようなデータが出ている事実を認識しておく必要はある。

もう一つは年齢階層別区分。消防庁でも年齢階層別構成に係わる問題については近年注視しており、2008年以降からデータを公開している。

↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送
↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送

明らかに高齢者の比率が上昇しているのが確認できる。また確定値が出ている直近の国勢調査(2015年実施)の人口比も併記したが、高齢者の搬送比率が人口比よりはるかに多いのも一目瞭然。

病状の悪化や怪我の発生比率を考えれば、高齢者搬送比率が人口比率より高いのは当然。しかし一方で、総務省などの統計データによる人口比率の変移と比べても、非常に高い上昇率を示しているのが気になるところだ。

↑ 高齢者の総人口比率推移(~2017年)(総務省統計局・統計トピックスより作成)
↑ 高齢者の総人口比率推移(~2017年)(総務省統計局・統計トピックスより作成)

あるいは「高齢者」(65歳以上)区分の中でもよりリスクの高い年齢層の比率・絶対数の増加によって、必然的に搬送人数が増えていると見た方が妥当かもしれない。

消防庁でも限られたリソースの中で、できる限りの効率運用を成して状況の改善を図るべく、さまざまな施策を打ちだしている。消防本部の拡大(広域化)により管轄区分に伴う問題点(距離的には近いが管轄外のため出動対象とならず、現場に車両が到着する時間が遅れること)、人員配置の効率化と充実、体制の基盤強化などを推し量ったり、複数の消防司令本部の業務を1か所の消防指令センターで共同運用する「消防指令業務の共同運用」などがよい例である。

しかし急増する対応事例には応じきれず、病院収容時間などが延びてしまっているのが現状。状況の改善のためには救急体制の抜本的な改革(例えば論議に挙がっている、救急搬送の一部有料化による、実際には救急自動車を必要としない病症者の利用減少模索)や、投入リソースの増強が求められよう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。