自家用乗用車の世帯当たり普及台数をさぐる
移動の道具として広く普及している自動車。家庭用はどこまで浸透しているのか。自家用乗用車(登録車と軽自動車)の世帯当たり普及台数の実情と推移を、財団法人自動車検査登録情報協会の公開資料から確認する。
次に示すのは公開されている値をすべて抽出し、グラフに収めたもの。世帯数は総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」を参考にしている。
1975年以降自家用車の保有台数(総数)、世帯当たり普及台数、双方とも増加している。ところが1990年前後からは普及率のカーブがやや急なものになる。バブル時代の旺盛な出費傾向の後押しで、自動車の購入意欲が増したものと考えられる。その後1996年にははじめて世帯当たり普及台数が1.000台(言葉通り「一家に一台」)に。その後は景気後退局面もあり、総数・世帯当たり普及台数の伸びは鈍化していく。
注目すべきは世紀の切り替わり、2001年前後以降の動き。総数・世帯当たり普及台数の伸びは鈍化し、特に世帯当たり普及台数は2007年に初めて前年比マイナスを記録する。2012年から2013年においては総数が前年比で大きく増加し、核家族化・一人暮らし世帯の増加による世帯数増加をしのぎ、結果として一世帯あたりの普及台数はわずかながらも増加する結果となっている。
2007年からの減少傾向から転じ、その後数年間再び世帯当たり普及台数が上昇への動きを見せたのは「エコカー補助金効果による新車販売の好調さ」「世帯数伸び率の鈍化」(震災を直接・間接的要因とするものも含む)によるところが大きい。また2013年に限れば、景気回復感に伴う購買意欲の向上も一因だろう。
一方2014年以降の世帯当たり普及台数の減退は、世帯数の増加によるところが大きい。ここ数年前年比で1%未満に留まっていた世帯数増加率が、2014年は2.49%と大きく上昇。一方で保有台数は1.18%の増加に留まり(これでも前年の1.08%と比べれば上乗せされている)、結果として世帯当たり台数が減少したことになる。世帯数は総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」が基だが、2014年から総務省側の発表において調査期日が従来の3月末から1月1日に変更されたこともあり、それが一因かもしれない。
直近の2017年では保有台数こそ前年比で約42万台の増加(プラス0.70%)を示したものの、世帯数はそれ以上の上昇幅となる約53万世帯の増加(プラス0.92%)を計上。結果として世帯当たり普及台数は減少する形となった。
世帯内構成人数の減少に伴う自家用乗用車の需要は(主に必要性が低い都心部で)低下している。実際、直近年となる2017年において、世帯当たり台数が1台未満の地域は東京都、大阪府、神奈川県、京都府、兵庫県、千葉県、埼玉県となっている。
短期的には世帯当たり普及台数・総数共に漸増する機会があるかもしれないが、中期的には横ばい、さらには漸減の可能性は多分にあるものと考えられる。また、世帯構成人数の減少に伴い、軽自動車の比率はさらに高まるに違いない。
■関連記事:
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。