戦後の雑誌と書籍の発行点数をさぐる
インターネットの普及で業界全体が厳しい状態にあるとの話が絶えない出版業界。雑誌や書籍の発行点数はどのような推移を示しているのか。総務省統計局の公開資料「出版年鑑」(「日本統計年鑑」も補完的に使用)から確認する。
次に示すのは各年における雑誌の点数と書籍の新刊点数の推移。現時点では1945年から2015年までの値が取得できるので、それをグラフにする。
雑誌は最近では2005年(4581点)をピークに低迷、書籍は2005年以降はやや落ち込みを見せたものの、2008年以降は堅調な流れだった。しかし2013年がピークで、その後は下落に転じている。「出版不況が書籍にも到来した」とは表現が安易だが、数字として落ちているのは事実であり、注目に値する。
グラフ全体を見直して目に留まるのは、1947~1948年における大きな伸び。特に雑誌は1947年に直近2015年の2倍に迫る、7249点もの雑誌が出版されている。これについては終戦で各種統制が解除されて、出版が比較的自由にできるようになり、また書物の需要も急増するに伴い、1940年代後半には未曾有の出版ブームが到来した結果。統制時は皆が皆、活字に飢えていたので、出版物であればなんでも売れるといわれるような状況が生まれ、それが数字となって表れている。
雑誌は2005年をピークに漸減を続けている。直近の2015年分でも減少の動きは止まっていない。書籍は上記にある通り漸増する挙動を見せていたが、ここ数年では下落に転じている。雑誌や書籍のような、印刷出版物界隈は、電子書籍の浸透、デジタル配信の一般化でその相対的社会価値観がゆらぐ一方、販売ルートとして重要視されながらも敬遠化が進んでいたコンビニで、その存在意義の見直しの動きが見られるなど、多様な環境変化が見受けられる。
今件はあくまでも点数で、部数とはまた別物だが、業界のすう勢を示す指標の一つには違いないだけに、今後の動向が大いに気になるところだ。
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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。