独裁制が自国にとって是か非か、世界の人たちはどのように思っているのか

↑ 独裁制に対する人々の思いは(写真:ロイター/アフロ)

施政の仕組みとして特定のカリスマ性の高い一個人、あるいは少人数が施政を行う仕組みを独裁制と呼んでいる。身分制が前提の場合は前世紀的な専制政治となるが、近代では支配する少数と支配される大多数=国民という構図(表向きの身分的な違いはなく、国民が独裁者に権限を認めた形となっている)になる。その独裁制について、世界の人達は自国に受け入れられる仕組みだと考えているのだろうか。米国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した調査報告書「Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy」(※)を基に、その実情を確認する。

次に示すのは議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)について、回答者の国での導入について、よいことであるか、悪いことであるかを尋ねた結果(導入の度合いは設問上では記されていない。仕組みそのものの是非を問われている)。肯定派(「とてもよい」「よい」)は青系統、否定派(「悪い」「とても悪い」)を赤系統で着色している。

なお独裁制は冒頭で説明の通り、厳密には一個人によるものだけでなく、少数の集団、あるいは党などの政治的なまとまりによる場合もあるが(中国や北朝鮮が好例。実質的にはその中心人物一人によるものだが)、今件では設問に「a strong leader」とあり、強力なカリスマ性を持つ一個人による施政と説明されている。

↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(2017年春)
↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(2017年春)

報告書では調査国全体における具体的な中央値は示されていないが、否定派は71%だとの説明がある。否定派は特にドイツやスウェーデン、オランダなどで大きな値を示しており、第二次世界大戦の経験が根強く残っているようだ。他方イタリアやイギリス、ハンガリーなどでは肯定派が20%以上いるのも気になるところ。

アジアではインドやインドネシア、フィリピンで肯定派が多く、半数以上の値を示しており注目に値する。インドの肯定派55%は調査国の中では最大の値である。他方、ヨーロッパ同様に過去において独裁者の施政を受けた国は反発の動きが強い。韓国、ベネズエラなどが好例。

詳細値の公開は無いものの、報告書では一部属性に関する傾向も記されている。

・一部の国の高齢者では独裁制への支持が高い。50歳以上に関してハンガリーでは29%、韓国では34%が肯定派。

・一部の先進国、例えばイギリスや米国、ポーランド、韓国では低学歴者ほど肯定派が多い傾向がある。

特に学歴に関しては一部の国で具体的な値が提示されており、その実情をうかがうことができる。

↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(「とてもよい」「よい」の合計が学歴差で大きく差のついた国)(2017年春)
↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(「とてもよい」「よい」の合計が学歴差で大きく差のついた国)(2017年春)

ポーランドやフランスで学歴によって3倍以上もの差が出ているのには驚かざるを得ない。

他方、独裁制への姿勢は一部の国で、政治的な思惑による大きな差も生じている。なお米国では民主党支持者≒リベラルを左派、共和党支持者≒保守を右派と定義している。

↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(「とてもよい」「よい」の合計が右派と左派で大きく差のついた国)(2017年春)
↑ 議会や裁判所からの影響を受けずにリーダーシップを持つ一個人が施政を行う政治制度(独裁制)は自国にとってよい仕組みか悪い仕組みか(「とてもよい」「よい」の合計が右派と左派で大きく差のついた国)(2017年春)

大よその国では右派の方が独裁制への支持率が高い結果が出ている。特にイタリアでは右派の肯定派が41%、韓国では35%に達している。他方、ベネズエラでは現在左派のポピュリズムな政権が独裁的な状態で実権を握っていることもあり、左派が群を抜いて独裁制を肯定している結果が出ている。要は、自身の思惑に都合のよい施政の仕組みであれば、それが独裁制でも肯定するという動きなのだろう。

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※Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy

世界38か国に対して2017年2月から4月においてほぼ同時に実施されたもので、各国の調査対象母集団数は、RDD方式などで選択された18歳以上を対象とする各国約1000人ずつ。調査方法は対面調査や電話インタビュー形式。それぞれの国の国勢調査の結果を元に年齢や性別、学歴、地域などの各属性によるウェイトバックが行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。