景気のよさを実感している人ほど「今の政権は自国のために正しいことをしている」と思っている
自国の政権が国のために正しいことをしているか否かの判断は、人々の思惑や置かれている環境によって大きく異なる。その要素の一つとして景況感の認識があるようだ。その実情を米国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した調査報告書「Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy」(※)から確認する。
調査対象国それぞれの国民において、自国の政権が正しいことをしている、正しい国のかじ取りをしているとの認識をしているか否かは国によってまちまち。大きく影響を及ぼす要素の一つが、回答者の支持政党が政権を担っているか否か。
それでは回答者の国全体としての経済状態の認識では、どのような違いが出るのだろうか。次に示すのは、今の自国の政権が自国のために正しいことをしていると信頼できるか否かを「大変信頼できる」「信頼できる」「信頼できない」「まったく信頼できない」の4選択肢で答えてもらったうち、「大変信頼できる」「信頼できる」の合算を信頼派として計算。その上で、別途質問として現在の回答者の経済状態を「よい」「悪い」の2択で答えてもらい、その回答で仕切り分けした上で、よい派と悪い派における信頼派の値を比較して、よい派の方が上回った国を列挙し、その差をグラフに反映させたもの。
全体では該当設問に回答した37か国のうち35か国までが該当している、自国経済がよい状態にあると判断した人の方が、悪い状態にあると判断したよりも自国の政権が正しいことをしていると信頼している人の割合が多いことになる。
例えばベネズエラでは自国経済がよい状態だと考えている人の79%は自国政権を信頼し、悪い状態だと考えている人は16%しか信頼していない。結果として63%ポイントもの差異が生じている。ベネズエラ全体では信頼派は29%に留まっているため、自国経済が悪いと考えている人の方が多いことは容易に想像ができる。
さらに29か国では差異が20%ポイント以上開いていることから、国レベルでの経済的な不調ぶりもまた、国が正しいかじ取りをしているとの信頼ができない要因となると報告書では説明している。他の国の例として「インドは85%もの人が自国の政権を信頼しているが、これは同国が2012年以降年平均でGDPの成長率がプラス6.9%と高い値を維持しているのに裏付けされる」「イタリアではわずか26%しか自国の政権を信頼していないが、同国では2012年以降のGDP成長率がマイナス0.5%を計上している」などが挙げられている。
また差異が大きい国はベネズエラのような特殊事情を持つ国を除けば、ヨーロッパの国が多い。これも支持政党が政権についているか否か別で、自国の政権のかじ取りが正しいと思えるかの差異同様の傾向。支持する政党が政権についている≒国の経済がよいとの認識≒国のかじ取りは正しいと考えているといった構図が透けて見える。
国民の関心事は主に経済にあり、それが堅調にあると認識できれば、国のかじ取りは上手く行われている、政権は自国のために正しいことをしていると考える人が増える。当たり前の話だが、改めて確認できる結果に違いない。
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※Globally, Broad Support for Representative and Direct Democracy
世界38か国に対して2017年2月から4月においてほぼ同時に実施されたもので、各国の調査対象母集団数は、RDD方式などで選択された18歳以上を対象とする各国約1000人ずつ。調査方法は対面調査や電話インタビュー形式。それぞれの国の国勢調査の結果を元に年齢や性別、学歴、地域などの各属性によるウェイトバックが行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。