ゲームの友な雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる

↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが……(ペイレスイメージズ/アフロ)

トップはVジャンプ…部数の現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視される、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)からさぐる。

まずは最新値にあたる2017年の7~9月期分と、そしてその直前四半期にあたる2017年4~6月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2017年の4~6月期と2017年7~9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷証明付き部数(万部)
↑ 2017年の4~6月期と2017年7~9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷証明付き部数(万部)

少なからぬ雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほど無いように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」だが、前四半期よりは減少してしまっている。

現在印刷証明付き部数を掌握しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌。日本雑誌協会の情報公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」に該当する雑誌は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している。かつては「マック・ピープル」「ネットワークマガジン」などがあった)、「ゲーム・アニメ情報誌」でも6誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

前四半期との相違確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年7~9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年7~9月期、前期比)

プラスを示したのは「声優グランプリ」と「メガミマガジン」の2誌だが、誤差領域(上下幅5%以内)を超えた伸びは「メガミマガジン」のみ。同誌は2017年7月29日発売の9月号において18周年記念としてオールカラー化しており、これが部数を底上げしたものと思われる。しかしながら実部数は2万2567部で、増加したのは1667部。カラー化した恩恵としては少々物足りない。

他方マイナスは5誌で、そのうち誤差を超えた下げ方を示したのは2誌。中でも「PASH!」は2割を超える下げ幅を計上している。「PASH!」は3四半期前の「ユーリ!!! on ICE」における特需の反動がいまだに続いている状態で、中長期的に見ればこれでもまだ部数としてはそこそこ。

↑ PASH!印刷証明付き部数(部)
↑ PASH!印刷証明付き部数(部)

もっとも部数の大きい「Vジャンプ」は今四半期では前期比でマイナスを示している。

↑ Vジャンプ印刷証明付き部数(部)
↑ Vジャンプ印刷証明付き部数(部)

同誌は特集や付録で部数の上下を見せるものの、大よそボックス圏内での部数を示している。2012年に新たなボックス圏を形成した後は、その下層での動きに終始、2四半期前で底抜けの雰囲気を見せ、前四半期でわずかに回復。しかし今四半期では再び下落を見せる形になった。実質的に下限を割り込んでおり、中期的にはさらにボックス圏を下方に再設定する必要があるかもしれない。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいはその方程式に代入できる要素が空振り状態なのか。

なお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供のため、電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減っているとの解釈は難しい。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系)(2017年7~9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系)(2017年7~9月期、前年同期比)

誤差領域を超えたプラス計上誌は1誌「PASH!」。「ユーリ!!! on ICE」による特需の余韻がまだ残っており、前年同期と比べれば部数は多いのが実情。

他方、マイナスは5誌で、すべてが誤差領域を超えた5%超、さらに3誌で1割以上の下げ幅。「Vジャンプ」に至っては2割超え。下方トレンドへの動きの中の結果によるものと考えられる。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が2015年第1四半期(Q1)以降は非公開となったため、残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を行っている。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみあいの形を維持している。最近では1年前の2016年第1四半期で両誌とも「おそ松さん」特需で部数が跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。

↑ 三大アニメ誌の印刷証明付き部数(部)(2017年7~9月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷証明付き部数(部)(2017年7~9月期まで)

直近期では「アニメージュ」4万1817部、「アニメディア」3万6300部。両誌とも特需反動で部数を落としているが、前四半期と比べると、両誌の差異はやや広がった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も今ジャンルの低迷は続くことだろう。

動向が掌握可能な期間の限りでは「進撃の巨人」や「おそ松さん」「ユーリ!!! on ICE」などが一部雑誌に特需をもたらした。元々部数が6ケタ台に届いていないのも一因だが、アニメ業界のトレンドに乗る形で適切な供給を行えば、大きな勢いを得られることが改めて明らかになった。他方、今該当期では2017年10月3日から放映中の「おそ松さん」第二期に関わる情報露出の影響があってもおかしくは無いのだが、部数動向の限りではその気配は確認できない。次四半期で特需があるか否かの実情が分かるのだろうか。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。