Yahoo!ニュース

尖閣諸島を何で知った? 知っている人の95.1%がテレビやラジオ経由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 尖閣諸島問題は様々な方法で告知が行われているが……(写真:ロイター/アフロ)

尖閣諸島はテレビやラジオ経由の認知が圧倒的

内閣府は2017年10月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から尖閣諸島に関わる情報の取得ルートについて確認する。

尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。

なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(及び周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。

↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)
↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)

今調査対象母集団では尖閣諸島を知っている人は91.3%に達していた。

↑ 「尖閣諸島」を知っているか
↑ 「尖閣諸島」を知っているか

この「知っている人」に、どのような経路で知るに至ったかを尋ねた結果が次のグラフ。圧倒的に「テレビ・ラジオ」が多く95.1%、次いで「新聞」が61.6%。いわゆる4マス経由で知った人が多数に及んでいる。

↑ 「尖閣諸島」の認知経路(複数回答、知っている人限定)
↑ 「尖閣諸島」の認知経路(複数回答、知っている人限定)

同じ4マスでもテレビやラジオのような電波媒体系の効果は大きく、紙媒体系の「新聞」は低い。また同じ紙媒体系でも報道色の薄い「雑誌・書籍」は、ひときわ回答率が低い。

もっともこれは雑誌や書籍の場合には、掲載される機会そのものが少ないのに加え、記事掲載誌がある程度絞られてしまい、「他の記事に合わせてついでに」との機会があまりないのが原因だと考えられる(例えば週刊漫画雑誌に、いきなり尖閣諸島問題の特集記事が何十ページにも渡り掲載されれば、よほど上手い切り口で無い限り、違和感を覚える人が多数に上る。そのような企画は普通は通らない)。一方テレビやラジオ、新聞の場合は、尖閣諸島問題そのものだけを視聴するのではなく、全般的に利用する中で、併せて見聞きして知ったことが想定される。

一般のインターネットによる情報は7.5%、官公庁のインターネット情報にいたっては2.2%でしかない。解説しているサイトが比較的少ないことも一因だが、インターネットの情報はほとんど公知には役立っていないようだ。

今後の啓蒙にも期待がかかるテレビ

テレビやラジオ、新聞経由で認知した人が多いこともあり、今後の啓蒙に求められる取り組み方法においても、テレビや新聞に対する期待は大きい。

 ↑ 「尖閣諸島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)
↑ 「尖閣諸島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)

「テレビ番組や新聞を利用した詳細な情報提供」を期待する声は3/4強。見方を変えると、現状の広報・放送量では啓蒙としてまだ足りない、さらに質・量共に必要であるとの認識が強いと解釈できる。

興味深いのは展覧会の開催を求める声が1/4を超えていること。認知経由としての「講演会・研修会・シンポジウム」は2.3%のみだったが、展覧会への需要はかなり大きい。

需要の大きさといえば「見易さ・分かりやすさを重視したウェブサイトの開設」の期待も高く、30.7%。インターネット経由で認知した人が1割を切っているだけに、適切で分かりやすく、ハードルが低いタイプの専用サイトが開設されることを望む声は強い。

今リリースには調査目的として「尖閣諸島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」との文言が確認できる。今回の項目に関しては、この言葉通り、積極的かつ正しい方向性で「参考」にし、今後に活かしてほしいものである。

■関連記事:

強い懸念を示す周辺国…領土紛争における東南アジア諸国の対中軍事衝突への懸念度

日本の高さは竹島・尖閣が原因か…戦争やテロのリスク、国民はどれほど懸念しているか

※尖閣諸島に関する世論調査

2017年8月3日から13日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1771人。前回(2014年実施)までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、今調査からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性はないことに注意が必要。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事