主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をさぐる

↑ テレビの成績表ともいえる視聴率。その推移は?(ペイレスイメージズ/アフロ)

HUTの意味とその推移

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が視聴率。キー局などにおける複数年の視聴率の移り変わりを確認する。

具体的には先行記事[【https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20171104-00077752/ 主要テレビ局の直近視聴率をさぐる(2018年3月期上半期)】]で行った手法と同じように、TBSホールディングス・決算説明会資料集ページに掲載されている各年の決算短信資料を確認し、主要局(キー局とNHK)の視聴率を抽出、各種精査を行う(他局の決算短信資料で補完や確認も併せて行っている)。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値である(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19時~22時)、全日(6時~24時)、プライムタイム(19時~23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も合わせて)変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記し、状況を確認する。

↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(全日)
↑ HUT推移(全日)

かつてはゴールデンタイムで70%を超えていたHUTも、直近データでは60%足らずにまで落ち込んでいる。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっている。また、年末年始は特番が多く放映される、正月休みで自宅待機率が高まることを受けて視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。

中期的には全日・ゴールデンタイム共にHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じていた。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に電通・博報堂や経済産業省による月次の記事を展開している広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。

ところが2014年度上期以降、再び下落基調に転じている。直近となる2017年度上期では、前年同期比でゴールデンタイムがマイナス1.0%ポイント、全日がマイナス0.7%ポイントを計上している。明らかな下降傾向にあると見てよい。

2016年10月からはタイムシフト視聴率の調査が実施され、タイムシフト視聴率や統合視聴率が試験的に一部ではあるが公開されている。しかしながら各報告書の言及や他の公開状況の限りでは、HUTはリアルタイム視聴率のまま。HUTの下落もあるいは、タイムシフト視聴をしている人が増えているのが一因かもしれない。

主要キー局などの視聴率動向

次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2006年度から2017年度(2017年4月~2018年3月)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして生成した。併記している折れ線グラフは取得可能な全期の動向を対象としている。

なお直近分となる2017年度は上期のデータしか存在しないので、それをそのままグラフ上に反映させるが、上記説明の通り上期は下期と比べて視聴率では低い値が出るため、2016年度までと比べると低めの結果が出ていることに注意する必要がある。これについては2017年度通期分の結果が出た際に修正を行う。

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)

この数年の動向として、「テレビ東京の持ち直しから再び下落」「フジテレビの凋落」「NHKの下落」「TBSの不調から横ばい」「テレ朝の復調から失速、転落」が確認できる。TBSは8年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行し、その値動きが継続中なので、今後上下いずれかにぶれる可能性は多分にある。

NHK・フジテレビは双方とも7、8年間ほぼ継続して下落を継続、特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示した。NHKは2016年度で回復に転じたが、直近年度で再び下落。「真田丸」などによる底上げはイレギュラー的な動きでしかなかったようだ。他方、フジテレビの下げが急降下モードに突入しており、懸念を覚えざるを得ない状態にある。

各局の視聴率動向、主に下方基調がこの1、2年の短期的なものの動きでは無く、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは確認できる。単発的に勢いをつけるコンテンツもこの時期には多数展開されたはずだが、それでもなお、下落の流れを変えるまでには至らなかった。

もちろん、かつて社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気を変える可能性も秘められている。この「スターコンテンツが複数、定期的に登場すれば、全体の流れは容易に変わりうる」状況は、かつてのテレビ局の状況そのもの。また媒体は異なるものの昨今の雑誌業界、具体的には「進撃の巨人」や「妖怪ウォッチ」「おそ松さん」で大きく飛躍した雑誌が複数存在している状況にも当てはまる。

直上で示した各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにも関わる話なだけに、大いに気になるところではある。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。