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日本人は北朝鮮の問題をどの程度憂慮しているのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 常に笑顔の文官・武官に称えられる委員長様。日本人の目には?(筆者作成/撮影)

昨今の国際情勢で直接日本が対峙している懸案事項のうち、もっともリスクが大きいのは、対北朝鮮問題。核兵器の開発や弾道弾発射試験など、日本のすぐそばの敵性国家が軍事力を誇示し、日本領土上空を飛び越すような「試験」を繰り返している。北朝鮮の動向に関して、日本人はどのような認識をしているのか、その実情をアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、日本人を対象にした日本の現状に関する調査報告書「Japanese Divided on Democracy’s Success at Home, but Value Voice of the People」(※)を基に確認する。

まず最初に示すのは、北朝鮮の核兵器保有に対する憂慮の度合い。「大変憂慮」と「憂慮」を合わせた憂慮派は90%に達している。

↑ 北朝鮮の核兵器保有への憂慮はどれほどか(2017年、日本)
↑ 北朝鮮の核兵器保有への憂慮はどれほどか(2017年、日本)

大変な憂慮をしている人だけでも2/3もおり、憂慮をしていない人は度合いを問わずに合算しても9%でしかない(全部単純計算しても100%にならないのは、公開値が整数部分までのため)。ほとんどの人が憂慮していると考えてもよいだろう。

それでは具体的に、北朝鮮の核問題への対応はどのようにすべきなのだろうか。現在行われている経済制裁をさらに強化する強硬策をとるべきか、それとも融和的な姿勢をするべきか、双方か、あるいは別の選択肢か。

↑ 北朝鮮の核問題への対応はどちらの選択肢が望ましいか(2017年、日本)
↑ 北朝鮮の核問題への対応はどちらの選択肢が望ましいか(2017年、日本)

日本が取れ得る選択肢は限られているため、基本的には経済制裁か友好的な折衝のいずれかしかないわけだが、前者を望む人は61%、後者は25%となり、さらなる強硬策を望む人が多いことが分かる。双方を同時にすべきだとの人も1%、いずれでもない別の選択肢(具体的な話は説明になし)は6%となっている。

今項目では報告書本文で属性別の値も一例ではあるが紹介されている。18~29歳層では41%が友好的な折衝を望んでいるが、50歳以上では21%に留まっているとのこと。

仮に北朝鮮が日本に対して具体的な軍事行動を起こすとなれば、海軍や空軍による侵攻作戦ではなく、弾道ミサイルなどによる攻撃や日本国内での破壊活動が主なものとなると予想される。そのような深刻な軍事的対立状態となった時に、アメリカ合衆国は軍事力を行使して日本を助けてくれるだろうか。日米安保など各種条約などの履行は成すだろうが、具体的な兵力の上陸や戦闘ではないため、対応は難しい。あるいは攻撃地点を「元から絶つ」ことで、目的を達成するかもしれない。

↑ 日本が北朝鮮と深刻な軍事的対立状態となった時、米国は軍事力を行使して助けてくれるか(2017年、日本)
↑ 日本が北朝鮮と深刻な軍事的対立状態となった時、米国は軍事力を行使して助けてくれるか(2017年、日本)

軍事力の行使で対応してくれると考えている人は82%、そうはしないとの考えは13%。大よそは何かあった時に、アメリカ合衆国による軍事的対応を期待しているようだ。無論これは日本人の期待であり、実際にそのような事態に陥ることも、その時に対応がなされるか否かも確証はできないのだが。

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※Japanese Divided on Democracy’s Success at Home, but Value Voice of the People

報告書の内容は2017年春のPew Research Centerによる国際的な一斉調査によって行われた調査結果の中から、日本における調査部分を抽出したもの。実施期間は2017年3月8日から4月2日。電話による音声対応でのインタビュー形式で行なわれており、RDD方式で選ばれた電話番号(固定電話と携帯電話が半々)にかけて、電話に出たのが18歳以上だった人が対象。総回答者数は1009人。性別、年齢階層別、地域別などでウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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