アメリカ合衆国の喫煙率推移をさぐる
先進諸国では健康リスクを受けて喫煙率は漸減状態にある。アメリカ合衆国の喫煙率の推移を同国の医療保険関連の公的機関CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病予防管理センター)の部局BRFSS(Behavioral Risk Factor Surveillance System)の公開値(※)を元に確認する。
その公開値によればアメリカ合衆国において最新の調査時点(2016年)でたばこを吸っている、つまり純粋な「現在喫煙率」は17.0%。
その喫煙率の過去からの動向は次の通り。まずは全体および性別の動き。
男性は女性よりも喫煙率は高く、その差はほぼ一定。時代が移り変わっても、男女差にあまり変化は見られない。そして今世紀初頭でやや上昇ぶりを見せるが、喫煙率は減る傾向にある。2011年に大きな上昇の動きをしているが、これはグラフ内注釈にもある通り、計測様式の変更によるもの。2012年以降は再度減少傾向を示していることから、喫煙率は実質的に2005年以降確実に減少の動きを示していると見てよい。2013年では男性の喫煙率が横ばいを見せたものの、直後の2014年では大きく下がり、イレギュラー的な動きであったことが分かる。
一方年齢階層別に見ると、最若年層の喫煙率減少度合いが大きいことが確認できる。
前世紀末期から喫煙率では最上位を見せるようになった18~24歳層だが、2003年から2004年以降は急激に値を落としている。一方で25~34歳層をはじめ他の階層の減少率は緩やかで、2007年には両者の喫煙率はほぼ同じ値となる。「若年層のたばこ離れ」との言い回しは陳腐だが、あながち間違ってもいない表現なのが(少なくともアメリカ合衆国では)分かる。2011年の計測様式の変更後も、18~24歳層の喫煙率は落ち込み続け、25~34歳層が最上位を維持しており、この状況はしばらく続くものと思われる。2014年には55~64歳層よりも低い値となり、翌年にはやや増加したものの、直近の2016年では大きな下落を示し、55~64歳層との差はさらに開く形となった。
ところが高齢層、具体的には55歳以上は喫煙率の減退ぶりは穏やかなまま。むしろ直近数年では横ばいの動きすら見える。あるいはあと数年で、微減の動きにある25~34歳層が、それより上の層よりも喫煙率が下となるかもしれない。
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※公開値
CDCにおける健康関連調査やその結果の公開は2011年分以降において、CDC自身からその部局のBehavioral Risk Factor Surveillance System(BRFSS)に移行し、それに伴い調査方法にも多少の変化が生じている。注意書きでも「厳密な連続性は無いので、比較の際には注意を要する」と説明書きがある。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。