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アメリカ合衆国の喫煙状況をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アメリカ合衆国における喫煙率の実情は(写真:アフロ)

米国18歳以上の喫煙率は17.0%

先進諸国では健康リスクを受けて喫煙率は漸減状態にある。アメリカ合衆国の実情を同国の医療保険関連の公的機関CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病予防管理センター)の部局BRFSS(Behavioral Risk Factor Surveillance System)の公開値を元に確認する。なお今件における成人とは18歳以上、そして現時点での最新データは2016年分。

まずは調査時点でたばこを吸っている人の割合、つまり純粋な「現在喫煙率」。全体では17.0%との値が出ている。前年分2015年では17.5%だったので、1年間で0.5%ポイント減少している。

↑ 現在喫煙率(アメリカ合衆国、18歳以上、2016年、CDC・BRFSS)
↑ 現在喫煙率(アメリカ合衆国、18歳以上、2016年、CDC・BRFSS)

男女別では男性の方が喫煙率が高い。男女間の喫煙性向を思い返せば納得のいく結果ではある。興味深いのは他の属性別傾向で、一部イレギュラーなところもあるが、「若年層」「低年収」「低学歴」ほど喫煙率が高い傾向を示している。

「若年層」は若気の至りや健康に対する意識がまだ薄いのが、高めの値を示す要因だろう。「高年収」「高学歴」で喫煙率が低いのは、喫煙が社会的に敬遠されていることもあり「喫煙していると『たばこすら我慢できない』と軽んじられる」結果によるものと考えられる。

あるいは年収や学歴が上の人ほど生活環境が良好なものとなり、たばこ以外の娯楽をより多く選択できる結果かもしれない。見方によっては、そして健康などへの影響といった弊害を考慮しなければ、たばこはもっとも安易で安価な娯楽ともいえるからだ。

また、学歴と世帯年収が同じような動きを示しているのは、両属性が多分に連動性を有しているのも一因だと考えられる。

たばこへの姿勢を詳しく見ると

喫煙動向についてもう少し詳しく見たのが次のグラフ。喫煙しているのならどの程度なのか、喫煙していないのなら「経験無し」か「以前吸っていたが今は止めている」かを答えてもらったもの。非喫煙者のうち大体1/3程度は「昔は吸っていたが、今は禁煙している」状態なのが分かる。なおこちらはアメリカ合衆国全体の値は非公開で、調査が行われた州の公開値を元に加重計算をした結果のため、上記の結果とはいくぶんのずれが生じている。

↑ 喫煙動向(アメリカ合衆国、18歳以上、2016年、CDC・BRFSS)
↑ 喫煙動向(アメリカ合衆国、18歳以上、2016年、CDC・BRFSS)

女性は元々たばこを吸わない人が多い一方、男性はたばこを止めた人が多め。また当然ながら高齢者ほど「昔は吸っていたが今は吸わない」人が増え、歳を経るに連れてたばこを止めていく実情がうかがえる。

興味深いのは学歴の部分。学歴による「喫煙経験はあるが現在たばこを吸っていない人」の比率にさほど違いが無い。純粋に「今吸っている人」と「一度も吸ったことが無い人」との違いが、学歴上の差異に現れている。

なお、喫煙が法令で許される年齢だが、日本では20歳以上なのはご承知の通り。一方アメリカ合衆国では18歳以上となっている。2年ほど「大人」の概念が異なる点に注意してほしい。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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