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銃による事件と社会のあれこれとの関係性、米国民の意識をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 米国で日々発生する銃による犯罪。社会的な他の問題との関連性の認識は(写真:アフロ)

銃犯罪が起きた原因は、他の問題との関連性への認識

銃の一般人への所有が許可され、その銃を使った事件が多発する米国。その米国では銃による事件と社会の様々な事象との関係についてどのような認識がされているのだろうか。同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月に発表した調査報告書「America’s Complex Relationship With Guns」(※)から、銃に関わる事件が多発している同国の現状において、何が関係しているのか同国民の意識を確認していく。

次に示すのは銃を用いた事件が多発する米国の現状において、それぞれの項目が関係しているのか否かを回答者自身の意見として判断してもらい、関係があると認識している人の割合を示したもの。例えば「非合法の銃を入手しやすい」で銃所有者は83%と出ているので、米国で銃犯罪が多発する現状は非合法の銃を手に入れやすいのが原因の一つだと、銃所有者は認識していることになる。

↑ 米国の銃に関わる事件の現状に関係があるのか否かの認識(関係がある派率)(銃所有・非所有別)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)
↑ 米国の銃に関わる事件の現状に関係があるのか否かの認識(関係がある派率)(銃所有・非所有別)(2017年3~4月、米国)(18歳以上)

もっとも多くの同意が示された意見は「非合法の銃を入手しやすい」で銃所有者は83%、非所有者は87%。米国では銃の所有は認められているが、様々な規制を設けて安全性の確保をしている…のだが、法の網の目を潜り抜けた銃が多数出回っているのも否定できない。それが銃犯罪を増加させる一因だと考えている人は多数に及んでいる。

次いで多いのは「家族内不和」。家族のトラブルの行き着く先で用いられるのが銃であるとするもの。また「ビジネスチャンスが無い」(金銭的に恵まれていない、働いて裕福になれない)なども高い値を示している。要は問題解決の手段として銃が使われてしまうとする意見。例えば刀が銃の代わりに同様の普及をしていれば似たような意見は出てくるのだろうが、銃は操作も容易で攻撃力も大きいのが問題であると暗に意識している。

他方、規制をかけているが「合法的に銃を入手しやすい」からとする意見も多い。しかしこれは銃所有者と非所有者で意見の対立が生じている。銃所有者は合法的に、規制の範囲内での所有であるから問題はないとする意見も多々あるためか44%に留まっているのに対し、非所有者は67%と高い値。

関連性のあるなしの観点では銃の入手しやすさや生活・経済面の環境の悪さよりもずっと関連性は薄く、さらには関連性のあるなしも個別の精査が必要となる、「ゲームや映画、テレビ内での演出に影響を受けた」に同意する意見も少なくない。銃非所有者では6割、銃所有者でも4割から5割は関係があるとの認識を持っている。いずれの立場でも映画やテレビより、ゲームの方が強い関係があるとする意見が多いのは、やはり昨今の流行のゲームでは銃が登場するのが多いからだろうか。あるいは中高年はゲームで遊ぶ人が少ないのも要因かもしれない(年齢階層別の回答率は非公開のため判断はできない)。

銃所有者の存在はどのように思われているのか

銃を持たなければ銃犯罪は起こしえない(他人から奪って使う場合もあるが、犯罪可能性は小さい)。銃を持たない人には銃を所有しているだけで忌み嫌う存在だと認識する人もいるだろう。他方、銃所有者にはそれが必要不可欠である場合も多い。銃を所有している人は、地域社会の人からはどのように見られているのだろうか。

↑ 自分の周辺では銃所有者にどのような認識を示しているか(2017年3~4月、米国)(18歳以上)
↑ 自分の周辺では銃所有者にどのような認識を示しているか(2017年3~4月、米国)(18歳以上)

全体では6割が肯定派、4割近くが否定派。今調査の限りでは銃所有者は調査対象母集団の3割なので、銃所有者自身以外にも多数の人が、銃所有そのものは悪いことではないと認識している。無論銃所有者の方が肯定意見率は高いが、銃の非所有者でも否定意見者は4割強でしかない。

興味深いのは回答者の居住地域別。都市部ほど否定派が多く、地方に行くほど肯定派が増える。これは地方では銃所有が狩猟目的である場合が多々あり、趣味や仕事の道具として当然の権利であるとの考えがあるからだろう。

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銃所有の規制と権利主張、そのはざまでゆれるアメリカの心境

※America’s Complex Relationship With Guns

2017年3月13日から27日と、同年4月4日から18日にかけて行われたもので、RDD方式によって無作為抽出された電話番号(携帯・固定を問わず)の対象者(18歳以上限定)に専用のウェブへアクセスし回答してもらっている。対象者がインターネットへのアクセス環境を持っていない場合は、タブレット型端末と無線インターネット接続環境が貸与される。対象者数は合計で3930人。国勢調査の結果に基づき、年齢や性別、学歴、居住地域、人種などでウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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