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休日はテレビを5時間強…シニアのメディアライフの実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビは楽な娯楽。これまでの経験則も合わせシニアが大好きなのも理解はできる(写真:アフロ)

昨今では社会構造における高齢化に伴い、シニア層の数・比率が増え、その年齢階層の社会生活上の習慣に注目が集まりつつある。そのシニア層においては、テレビなどがよく好まれることで知られている。これは歳を経るにつれてインターネットのような双方向性メディアよりも、テレビや新聞のような一方向性メディアを多用する傾向が強くなるからであり、その理由としては自らの情報発信への気力が減退し、流されることを好むからに他ならない。また、長年に渡る生活様式を踏襲しているのも大きな要因。そこで今回は、総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)から、調査対象としてはもっとも高齢世代にあたる60代にスポットライトをあて、その年齢階層の主要メディアの利用状況を確認する。

次に示すのは60代に限定した主要メディア、具体的には生放送のテレビ、録画して再生視聴したテレビ、インターネット、新聞、ラジオの行為者率。1日単位で該当メディアを利用したか否かを示している。例えばテレビ(生)の平日における値は92.2%なので、60代の92.2%は平日においてテレビの生放送を10分以上連続して視聴したことになる(回答用紙では10分以上連続した行為について記録する様式となっている)。

↑ 主要メディアの行為者率(2016年、60代)
↑ 主要メディアの行為者率(2016年、60代)

平日と休日では大きな差が出ていない。つまりメディア周りに関しては平日も休日も同じように接していることになる。これは同年齢階層の多くが定年退職を迎え、就業や修学をしておらず、自宅にいる機会が多い、少なくとも就業に時間を拘束されるケースがあまり無いことを意味する。

多くの人はテレビを視聴し、録画の視聴も2割近く(録画は年齢階層別の差異があまりなく、全層でこの程度の比率)。インターネットの利用率はパソコン・携帯電話合わせても4割程度に留まり、残りの6割はインターネットを常用していないことになる。一方で新聞の購読率は5割強。時間の取れる休日は、より多くの人が目を通す。

利用時間の平均値(利用していない人=時間ゼロとした、調査対象母集団全体の平均)を見ると、シニア層のメディアライフがより一層透けて見えてくる。

↑ 主要メディアの平均利用時間(2016年、60代、分)
↑ 主要メディアの平均利用時間(2016年、60代、分)

平日よりも休日の方がテレビ視聴時間は長いが、それでも平日に限っても4時間強はテレビを観ている。「ながら視聴」が多分にあるのでは、との推測もできるが、併行利用されうるネットや新聞の利用時間を考慮しても、テレビの時間が長いことに変わりはない。休日に至ると5時間半はテレビを観ている計算になる。録画も合わせれば6時間近く。

インターネットは1日40分強。新聞は30分近く。今件は利用者・非利用者も合わせた平均利用時間で、行為者率の動向にも左右されるが、全体としてはネットの方が多く使われていることに違いは無い。

「高齢者層はテレビに釘付け」との表現はややオーバーかもしれないが、ながら視聴の時間が短く、注力視聴時間が長いことを合わせて考えても、テレビを大いに楽しんでいること自体は正しい。内容に没頭し、浸透し、盲信してしまうのも無理はない。詳しくは別途の機会を設けて解説するが、メディアの利用目的を尋ねた項目でも、高齢者ほど「いち早く世の中の出来事や動きを知る」「趣味・娯楽に関する情報を得る」の点でテレビを大いに用いている。

シニア層の人数が(絶対人数、全人口に対するシェアの観点で)増えることは、テレビに釘付けな人が増えることをも意味する。人の数そのものだけでなく、形成世論との観点でも、色々と変化が生じそうだ。

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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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