日本国産の原油量をさぐる
「日本では石油(原油)消費量のほぼすべてを輸入に頼っている」との事実は誰でも世間一般レベルの常識として理解している。しかしその一方で、ごく少量ながら日本国内でも原油は産出していることを知る人はさほど多くない。その実情を資源エネルギー庁が2017年7月に発表したエネルギー白書から確認する。
日本国内油田から産出される原油の産出量推移が次のグラフ。ややぶれが大きいが、1960年以降の限りで見れば、年間50万から100万キロリットルの原油を産出していることになる。直近の2015年度では57.8万キロリットル。
直近の2015年度における産出量57.8万キロリットルは、表現を変えれば5億7800万リットル。仮に自動車1台あたりの満タン量を50リットル、原油から精製されるガソリンの割合を3割とすると約350万台の自動車を満タンにさせるだけのガソリンが供給できることになる(※正確には原油からガソリン・重油などさまざまな石油派生物を精製する際において、原油の種類によって精製比率が異なる)。
この値だけを見ると「国産でもそれなりに経済を支えられるのでは」との印象を得るかもしれない。しかし次のグラフを見ると、厳しい現実を突きつけられることになる。各年度の原油「輸入量」と日本国産原油生産量を「同じ縦軸単位」で積上げ、日本国内で供給される原油量の推移を示したもので、2015年度の値まで対応している。
まず最初に気がつくのは「国内生産」の色が見当たらないこと。そして縦軸の区切り値が先のグラフと数ケタ違うこと。あまりにも国産と輸入量の差が大き過ぎ、このサイズでは「国内生産」分がグラフ上に反映されなかったのが実情。
このグラフを縦に引き延ばしてようやく、ほんのわずかにグラフ上に「国内生産」が現れる。いかに日本が大量の原油を輸入しているか、そして国産原油量だけでは足りないかが分かる。無論ガソリンだけが原油の使い道では無く、多種多様な方面に使われる。当然、必要な量も増える。
状況を把握しやすいよう、国産原油が原油供給量全体に占める割合を、折れ線グラフにしてみる。言い換えれば「日本の原油・輸入依存率」。
原油の利用量が増えるにつれ、あまり生産量の変わらない国産原油の比率は落ち、1954年に95%、1960年に98%、1964年に99%を超えてからは、それぞれの値以下に戻ること無く、依存度は高いままを示している。最新の2015年度では、原油全体に占める日本国産原油の比率は0.3%。見方を変えれば国内で利用している原油の99.7%を輸入に頼っていることになる。
輸入量99.7%がどれくらいのものなのか、ビジュアル化してみよう。2015年度の原油使用量全体を2リットルのペットボトル1本分にすると、国産原油量は約6ミリリットルに過ぎない。目薬1つが15ミリリットル前後なので、その4割程度。
いかに現在の日本が輸入原油に頼っているか、その実態が分かるはずだ。
■関連記事: