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し好品代・雑誌や書籍代へのウェイトが大きくマイナス…サラリーマンのおこづかい内部事情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 何度計算してもお金が増えるわけでは無く。おこづかいのやりくりは大変(写真:アフロ)

おこづかいの使い道で欠かせないものは昼食代

サラリーマンが直接、そして自分自身にもっとも大きな影響を与える金銭のやり取りといえば「おこづかい」に他ならない。そのおこづかいの使い道として一番欠かせないものは「昼食代」であるとの実態が、新生銀行が2017年6月に発表した、定点観測的な調査「サラリーマンのお小遣い調査」(※)の最新版で明らかになった。今回はこの調査結果から、最重要視されている昼食代も含め、サラリーマンのおこづかいの消費実態について確認をする。

サラリーマン諸氏におけるこづかいの使い道として、欠かせない、ウェイトの高い項目を複数回答で尋ねたところ、もっとも多くの回答が得られたのは「昼食代」だった。率にして51.2%。

↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2012~2017年)(上位一部のみ)
↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2012~2017年)(上位一部のみ)
↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2016年から2017年への変移、ppt)
↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2016年から2017年への変移、ppt)

もちろん「欠かせない」を選ばなかった場合、それは「無くても良い」を意味しない。「優先順位が低くてもかまわない」(1かゼロではなく、金額配分の際の割当が低くなる)と見れば、「こづかいの使い道として昼食代が欠かせない」と”回答しなかった”48.8%の存在も納得できる。持参弁当を利用する人もこの48.8%には多分に含まれるのだろう(今件調査におけるおこづかいとは昼食代を含んでいる)。あるいは文字通り「昼飯を後回しにしても、抜きにするなり減額しても、おこづかいを投じたい対象がある」人もいるかもしれない。

「昼食代」以外の項目では「こづかい」の内容にふさわしく、プライベートな項目が上位を占めている。具体的には「趣味の費用」「飲み代」「携帯電話代」「し好品代」が続いている。他方、数年前には上位についていた「家族への気配り」の項目が、今年も合わせて5年連続で上位10位から消えている。厳しいこづかい事情の中で、家族よりもサラリーマン本人への注力に重点を置いたものと考えられる。

また前年からの変化を見ると、上位陣では「昼食代」「車関係・ガソリン代」以外は大よそ下落。特に「し好品代」「雑誌・書籍代」の下落ぶりが著しい。「し好品代」の具体的内容の説明は報告書には無いが、たばこやお酒(飲み代とは別)、通常の各種飲料水が該当することは間違いない。喫煙者にとってはたばこは生命線のようなものであるし、好きな飲料水を愛飲することを日々の楽しみにしている人もいるはずだ。それらへのウェイト減退は、辛さを覚えるものがある。

ここ数年の動向を見るに、「趣味の費用」「雑誌・書籍代」「車関係・ガソリン代」が低下傾向にあり、他方で増加の動きを見せる項目が無い。

↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2005年から2017年、上位5位+αのみ)
↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2005年から2017年、上位5位+αのみ)

「欠かせない」と回答しない場合、一切出費しないわけではないが、優先順位は下がる。限られた予算枠でやりくりをする中で、より重要性のあるものへ注力する姿勢が、今設問にも表れているのかもしれない。

その観点で考えると、「趣味の費用」「雑誌・書籍代」「車関係・ガソリン代」のウェイトは減退しつつあるのだろう。自らの趣味趣向に直結する対象の予算振り分けの減少は、心の安ねいの観点では不安ではある(その分「携帯電話代」に割り振られているのかもしれないが)。

年齢でちがいを見せる携帯電話・飲み代のウェイト

直近の2017年分につき、「昼食代」「携帯電話代」「飲み代」の比率を年齢階層別に並べたのが次のグラフ。

↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2017年、年齢階層別、昼食代・携帯電話代・飲み代限定)
↑ こづかいの使い道として欠かせないもの(2017年、年齢階層別、昼食代・携帯電話代・飲み代限定)

「昼食代」の高さは年齢階層で大きな変化はなし。30代から40代がやや低めなのは、既婚者における持参弁当比率が高いのが一因と考えられる。

一方「携帯電話代」は20代がもっとも高く、歳を経るに連れて減少。50代がやや伸びているが、これはイレギュラーだろう。逆に「飲み代」は歳を取るに連れて上昇する傾向にある。歳上になるほど会社内での立場・役職も上がり、部下を連れて、あるいは接待として飲みに行く機会が増えるのも一因。また見方を変えると、年齢階層間における「デジタル」と「リアル」のコミュニケーションへの注力の違いが、おこづかいの配分にも見えてくるようで、非常に興味深いものである。

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※2017年サラリーマンのお小遣い調査

今調査は2017年4月7日から9日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2714人。男女正規就業者に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多分を占める会社員(正社員以外に契約・派遣社員も含む)は男性1252人・女性789人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が43.6対56.4、女性は64.9対35.1。なお今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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