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男女別でも大きな違いを見せる喫煙率の実情を都道府県別にさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 喫煙率は男女でどのような差異が生じているのか。地域別に仕切り分けした上で確認(ペイレスイメージズ/アフロ)

健康意識の高まりなどを受け、喫煙をする人は減少中との話がある。その喫煙をする人の割合は地域によって違いがあるのだろうか。男女別の動向を、厚生労働省が2017年6月に発表した「国民生活基礎調査の概況」(※)から確認する。

次に示すのは、「男女別」の都道府県別喫煙率。これは喫煙状況について20歳以上の人に「毎日吸っている」「時々吸う日がある」「以前は吸っていたが1か月以上吸っていない」「吸わない」「不詳」のいずれかに該当するかを尋ね、そのうち「毎日吸っている」「時々吸う日がある」を喫煙者と判定し、全体に占める比率を算出したものである。例えば女性・大阪府の値は10.8%と出ているので、大阪府に住む成人女性の喫煙率は10.8%となる。男女で横軸の仕切り分けが異なっているので要注意。なお熊本県は熊本地震の影響で未調査のため、数字も空欄となっている。

↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(都道府県別)(男性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(都道府県別)(男性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(都道府県別)(女性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(都道府県別)(女性)

全般的に男性の方が女性よりも喫煙率は高い。その傾向はすべての都道府県で変わらない。他方、都道府県別の並びは男女で揃えてあるのでパッと見で把握できるが、男性の喫煙率は地域による差がさほど出ない(福島県や奈良県の低さがやや目立つ程度)なのに対し、女性では地域別の差異が結構大きな形で出ているのが分かる(無論、%ポイントの差では男性の方が大きいが、全体に占める比率では見た目で判断できる)。

例えば全体では喫煙率トップの北海道だが、男性に限れば青森県よりも低い。しかし女性では群を抜いてトップについている。絶対値は男性の方が高いのだが、女性の高率度合いが全体値を大きく押し上げていることになる。「男性は他地域とさほど変わらないが、女性の際立った高さが全体を引き上げる」事例としては、他に大阪府などが該当する。

男女差の動向を別の切り口から見たのが次のグラフ。男性喫煙率が女性喫煙率より高いのはすべての都道府県で共通なので、男性の喫煙率が女性の何倍かを算出し、その値をグラフにまとめたもの。この値が高い方が、男女の喫煙率の差が(比率的に)大きい。%ポイントでの差ではないことに注意。

↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(男性の喫煙率は女性の何倍か)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2016年)(男性の喫煙率は女性の何倍か)

先に挙げた「女性の喫煙率が他地域よりも高く、全体値を引き上げている」事例の北海道、大阪府では倍率が2倍台に留まっており、男女の差がさほど無いことが分かる。似たような値は青森県や東京都など関東などでも確認できる。女性のみの喫煙率を見直すと、確かにいずれも他地域よりは(多少ながらも)高めの値が出ている。

女性の喫煙率が他地域より高い値が出る都道府県に関して、それを後押しする特定の社会現象や地域環境、法的制限の類は確認できない。東京都と大阪府だけなら「企業が集約している」「女性の社会進出が進んでいるため、それと共に喫煙率が上昇しうる」との仮説も成り立つが、他に該当する地域も合わせると、その仮説も的は外れているように見える。

ともあれ、男性の喫煙率が女性よりも高いのは全国共通に違いないが、その差異は地域によって千差万別、中には女性が男性の半分程度の喫煙率にまで達している県もあることには、留意をしておくべきだろう。

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年齢階層別喫煙動向をグラフ化してみる(JT発表)

※国民生活基礎調査

全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。

今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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