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母子世帯平均額は世帯全体の半分…母子世帯や高齢者世帯などの所得動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 経済上の困難が問題視される母子世帯。その所得の実情は(ペイレスイメージズ/アフロ)

世帯単位での所得の低さが問題視される母子世帯や高齢者世帯。その実情を厚労省の国民生活基礎調査(※)の結果から確認する。

次に示すのはいくつかのパターン別の世帯所得に加え、平均等価可処分所得(※※)を確認したもの。

「全世帯」は今調査の調査対象母集団全世帯における平均。「高齢者世帯」とは65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもので、例えば高齢世帯に18歳以上の人が加わり、稼ぎ頭が居そうな世帯は該当しない。「65歳以上の者のいる世帯」とは異なるので注意が必要。

そして「母子世帯」とは死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む)で、現に配偶者のいない65歳未満の女性(配偶者が長期間生死不明の場合を含む)、と20歳未満のその子(養子を含む)のみで構成している世帯。「児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯」とは異なるので注意。

なお「可処分所得」とは実収入から非消費支出(税金・社会保険料)を引いたもの。

↑ 世帯類型別平均世帯所得と平均等価可処分所得(万円)(2015年)
↑ 世帯類型別平均世帯所得と平均等価可処分所得(万円)(2015年)

全世帯の平均所得は545.8万円。他方、平均等価可処分所得は283.8万円。これが高齢者のみの世帯となると308.4万円・216.4万円となる。単に高齢者が居るのみで、それより下の年齢(かつ18歳以上)の人が居る場合もある世帯では、働き手が居る可能性もあるため、所得などは高めとなる。

一方、母子世帯は270.0万円・137.5万円。多分に共働きをしている世帯から構成されている、児童が居るだけの世帯とは大きな違いがある。

今件各世帯類型別に、所得及び平均等価可処分所得の推移を見たのが次のグラフ。なお母子世帯は取得年数によっては客体数が少数のため、値にぶれが生じている可能性があることに留意を要する。

↑ 世帯類型別平均世帯所得(万円)(母子世帯は客体数少数のため参考値)
↑ 世帯類型別平均世帯所得(万円)(母子世帯は客体数少数のため参考値)
↑ 世帯類型別平均等価可処分所得(万円)(母子世帯は客体少数のため参考値)
↑ 世帯類型別平均等価可処分所得(万円)(母子世帯は客体少数のため参考値)

まず平均所得だが、全世帯は低所得世帯比率の増加に伴い漸減している。また「65歳以上の者のいる世帯」でも、高齢者世帯の割合が増えていることもあり、同じようなペースで減少している。一方、高齢者世帯や母子世帯、児童のいる世帯はバブル期崩壊後あたりをピークとして、前世紀から今世紀にかけていくぶん下げたあとは、ほぼ横ばいで推移している。所得に限れば全体的な減少は、低所得とならざるを得ない世帯の比率増加によるものであることが改めて分かる。

また、直近の1、2年では少なからずの属性で上昇への値動きを示している。単なるぶれの範囲か、それともトレンドの転換かは次年以降の動向を見極めたい。

平均等価可処分所得で見ると、ピークはほぼ同じ時期だが、ピークを過ぎた後の各世代の位置関係が、単なる所得とは微妙に違うことが分かる。全世帯平均と児童のいる世帯、65歳以上の者のいる世帯がほぼ変わらず、高齢者世帯がやや上となり、母子世帯が下に置いて行かれているような形となっている。

全世帯の平均等価可処分所得を100%とした場合、母子世帯は48.4%(2015年)。1985年以降は大よそ40%強を維持し、50%を超えたことは無い。生活の厳しさが改めてうかがい知れよう。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。

今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

※※平均等価可処分所得

世帯の可処分所得を世帯人員数の平方根で割って調整した所得。単純に人数割りをした場合、同居する事による共有化のメリットが考慮外となるため。例えば4人家族で500万円の可処分所得なら、500万円÷√4=500万円÷2となり、250万円。1人暮らしの可処分所得250万円の世帯と大よそ同じ生活レベルと見なすことができる。

単純な世帯所得だけでなく平均等価可処分所得をも開示されているのは、該当する種類の世帯が構成人数によって所得に対する融通さに大きな変化が出てくること、そして可処分所得の方が重要性が高い事例が多々あることを考慮したものと考えられる。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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