正規・非正規・失業・仕事を希望しない…学歴別の労働力状態を国勢調査の結果からさぐる
学歴で就業に影響はどこまで生じているのか。その相関関係上の実情を、失業中の人や仕事を希望しない人の実情もあわせ、国勢調査の結果から確認していく。
次に示すのは国勢調査のうち10年毎に行われる大規模調査(2010年分が最新)で調査されその結果が公開されている、回答者の最終学歴と労働力状態を比率換算し、グラフにしたもの。例えば「大学・大学院」では正規職員・従業員の項目が56.4%となっているが、これは大学卒や大学院卒の学歴を持つ人の56.4%が現在正規社員として働いていることを意味する。
概して高学歴者ほど正規社員の割合が大きくなる。パート・アルバイトなどば逆行する動きだが、短大・高専の値が最多で高卒や小中卒の値が低めに出ているのは、非労働力人口(少なからずは高齢者や女性の家事従事者)によって圧迫されているから。
在学者は教育機関に通っている人を指し、ほとんどが非労働力人口に該当する。パートやアルバイトが1割強居るのは、大学生などでアルバイトをしているのが該当する。
男女でライフスタイルや教育機関への意識の違いがあるため、労働力状態には当然違いが出てくる。そこで男女別に仕切り分けして再計算をした結果が次のグラフ。
高学歴ほど正社員率が高くなるのは男女ともに変わらないが、女性は男性と比べて正社員率が低くパート・アルバイト率が高い。結婚後に家事従事者として非労働力人口入りをするか、兼業主婦としてパートなどに従事するライフスタイルがそのまま数字となって表れている。
また、女性は一律に高学歴ほど正社員率が高くなるものの、男性では短大・高専と大学・大学院卒の間にほとんど差異が生じていない実情も確認できる。もっとも役員の比率は大学・大学院卒の方が高いのだが。
学歴はそれ自身が就業条件となるケースもあるものの(例えば大卒相当の学歴が無いと、実質的に就業できない企業など)、多分に学歴は本人の学力、能力による結果であり、それを裏付けする指標以上のものでは無い。今件は「高学歴ほど正社員としての就業率が高い」現状を客観的に統計から裏付けたものではあるが、それが「学歴があれば本人の能力は二の次でも就業上好条件となる」を意味しない点に注意したい。また男女差の動向からも見受けられる通り、学歴以外の要素でも就業様式は大きく変わりうるのもまた事実に違いない。
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