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シニア層で増加傾向続く…年齢別のインターネット利用率

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ シニアでもネットを使いこなす人が増えている昨今だが……(写真:アフロ)

パソコン世代の経年化、生活への浸透に伴う必要性の増加、機能拡大による便宜性向上などにより、インターネットの利用層は、老若男女を問わず拡大中。一方、高年齢層における利用率は、若年層と比べて今一つ値が低めな状態にあることも否定できない。現状ではどのような状況で、過去からはいかなる推移を示しているのか。総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値をたどり、「年齢階層別インターネット利用率」を確認する。

今回発表された最新版(2016年版)「通信利用動向調査」をひも解くと、2016年時点のインターネットの普及率(過去1年間にインターネットを一度でも利用したことがある人の率)は83.5%・利用者人口は1億0084万人との値が出ている。

↑ インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)(~2016年)
↑ インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)(~2016年)

これを直近5年間分について、年齢階層別に確認したのが次のグラフ。「全体で8割強とはやや少なくないか?」との印象を持つ人もいるだろうが、年齢区分で見ると13歳以降は50代まで、8割どころか9割強の利用率を占めているのが確認できる。

 ↑ 年齢階層別インターネット普及率(個人)(~2016年)
↑ 年齢階層別インターネット普及率(個人)(~2016年)

6~12歳が8割強に留まっているのは、まだ幼い状態の人も含まれ、またリスクを考えれば仕方がない。一方、50代以降では利用率は漸減し、60歳以降になると値の減少度合いが加速度的なものとなる。シニア層ほどインターネットの利用を避ける傾向にあることは、これまで数多くの調査で明らかにされている通りで、今回の結果も納得がいく。

その理由までは今件資料だけでは特定できないが、経年による視聴覚の衰えの問題や、利用の際に覚えねばならないことが多く難儀させられる、さらには「新しい物事への挑戦」には何事も失敗がつきものだが、その失敗を恐れる(主に時間のロスの観点で)傾向が強いこと、そして昨今浸透しつつあるスマートフォンやタブレット型端末におけるタッチパネルは苦手(指先が乾燥気味で反応しにくい)などが考えられる。また現状の生活環境においてインターネットが要らない、メリットとデメリットを比較した場合に必要性を感じない人も多分にいるのも要因だろう。

ただしここ数年、シニア層の大きな伸びも確認されている。上記グラフでもその伸び方はよくわかるが、それをさらに対象期間を拡大したのが次のグラフ。さすがに80代以降はやや凸凹がある、ここ数年では逆に減退の動きすらあるものの、60歳以降は概して上昇を見せている。

↑ 年齢階層別インターネット普及率(個人)(~2016年)(60歳以上限定)
↑ 年齢階層別インターネット普及率(個人)(~2016年)(60歳以上限定)

元々伸び代が大きいこともあるが、若年層に追いつき追い越せとばかりの勢いが感じられる。

50代までと60代以降にやや大きな差異が生じるのは、50代までは業務としてインターネットの利用が求められる事例が多いからに他ならない。経年による身体機能の衰えで利用ができなくなる事例をのぞけば、それらの人達は定年退職を迎えても(60歳代を過ぎても)インターネットは利用し続けるはず。シニア層の利用は環境の変化とネット「世代」の経年化、二つの要素で底上げされていく。

このままの勢いが続けば、この数年のうちに「インターネットは若者のツール。シニアには関係の無い話」といった、世間の一部で語られている、常識扱いされている言い回しも、過去のものとなりそうだ。

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※通信利用動向調査

2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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