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テレビや新聞、インターネットなどのメディアとの接触時間の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 情報を伝達する多様なメディア。その利用時間の実情は(写真:アフロ)

年齢階層別に大きな差異が見えるメディア接触時間

世の中には情報を伝える多種多様なメディアが存在する。それらに人々はどの程度の時間を費やしているのだろうか。博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2017年6月に発表した「メディア定点調査2017」(※)の公開値から確認する。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌から構成される従来型4マスディア、パソコン・携帯電話(従来型携帯電話に加えスマートフォン含む。特記無き限り以下同)、さらにはタブレット型端末の利用まで含めたメディアの接触時間の総計は、 2016年では378.0分/日(週平均)。昨年2016年が393.9分/日だから、わずかながらの減少。

また性別・年齢階層別では、20代男性がもっとも長く450.9分の値を示している。次いで長いのは60代男性で432.5分。

↑ 年齢階層・性別メディア接触時間(2017年)(一日あたり、分)
↑ 年齢階層・性別メディア接触時間(2017年)(一日あたり、分)
↑ 年齢階層・性別メディア接触時間(2017年)(前年比、一日あたり、分)
↑ 年齢階層・性別メディア接触時間(2017年)(前年比、一日あたり、分)

全般的には男女とも中堅層の時間が短めで、若年層・高齢層の時間が長めとなっている。ただし10代はいくぶん短めだが、これは就学時間中はメディアに触れる機会があまり無いことによるものだろう。

若年層の時間が長いのは、携帯電話・スマートフォン・タブレット型端末の接続時間が他の層と比べて長めなのが原因。男性はパソコンの利用時間も長く、これが女性と比べメディア接触時間の長さを後押ししている。

また前年2016年分と比べると、男性は中堅層が大きく下落、女性は若年層で特に下落が著しいものとなっている。男性は年齢階層別の差異が拡大し、女性は縮小した感はある。

これを各メディア毎の時間配分で区分すると、多様な特徴が確認できる。

↑ 年齢・性別メディア接触時間(一日あたり、分)(2017年)
↑ 年齢・性別メディア接触時間(一日あたり、分)(2017年)

・男女とも30代まで、タブレット型端末と携帯電話・スマートフォンの利用時間の合計が長時間(100分超)。ただし男女の時間を比較すると男性の方が押しなべて長い。

・テレビ視聴時間は男性が30代、女性では10代がもっとも短い。男性は40代以降、女性は10代以降は大よそ年齢経過と共に増えていく。また同年齢階層なら視聴時間は、男性よりも女性の方が長い。

・男女とも歳を重ねるに連れて、従来型4マス(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の利用割合が増え、新メディア(パソコン、タブレット型端末、携帯)の利用時間が減っていく。

・男性は10代~40代まで、女性は10~30代でテレビ視聴時間を、パソコン・タブレット・携帯電話による(インターネット)利用時間(緑系統の着色部分)が上回っている。

インターネットを用いるデバイスの利用時間が、特に若年層で長いこと、歳を経るに連れてテレビの利用時間が伸びることなど、メディア系の調査結果ではお馴染みの、そして実体験からも容易に想像可能な、年齢階層間におけるメディア接触様式のギャップが改めて認識できる結果となっている。

若年層とメディアとの関係、接触時間の移り変わり

モバイル端末、具体的には携帯電話が従来型からスマートフォンに移行し、さらにタブレット型端末も本格的な普及を始めたことにより、インターネットの利用機器もパソコンから携帯電話やタブレット型端末へとシフトする気配を見せている。特にお気軽さを好む若年層でその傾向が著しく、パソコン内のデスクトップからノートパソコンへのシフトの動き同様に、他のメディア関連調査でも確認できる動きが今件調査でも明確に表れている。

若年層のデジタルメディアへの傾注がますます大きなものとなる、長時間投入されるようになる傾向に変化は無い。しかし主役はパソコンから携帯電話(とりわけスマートフォン)へ移りつつある。全体のメディア接触時間の経年変化を、全体接触時間に占める割合でグラフ化してみると、状況変化が良くわかる。

↑ メディア接触時間(~2017年)(一日あたり、全体接触時間に占める割合)
↑ メディア接触時間(~2017年)(一日あたり、全体接触時間に占める割合)

2011年から数年間はラジオの視聴時間シェアが増加するイレギュラーな動きを見せたが、(2011年分は調査タイミング上、震災とは関係なし。2012~2013年は震災の影響の可能性がある)、全般的にテレビやラジオの接触時間比率は減少過程にある。またパソコン(によるインターネット)の利用時間も2011年をピークに減り、その分タブレット型端末や携帯電話の利用時間は増加し続けている。2014年は特に新設されたタブレット型端末が全体ではいきなり5%近いシェアを占め、さらに携帯電話・スマートフォンも2割近い時間を確保するなど、モバイル系の利用時間が大幅に増加しているのが分かる。20代男性ではその値動きはさらに顕著なものとなっている。

直近の2017年では、タブレット型端末と携帯電話・スマートフォンではじめて3割超の利用時間シェアを確保することとなった。パソコンも合わせれば5割に近づく値。パソコンは漸減傾向にあるが、それ以上にタブレット型端末や携帯電話が増加しており、早ければ来年にも過半数に達する勢いを見せている。

新技術に敏感な世代、例えば20代男性に限ると、変化はもっと際立ったものとなる。

↑ 20代男性におけるメディア接触時間(~2017年)(一日あたり、全体接触時間に占める割合)
↑ 20代男性におけるメディア接触時間(~2017年)(一日あたり、全体接触時間に占める割合)

パソコン・タブレット型端末・携帯スマホを合わせたインターネット機器で6割を超えている。またその中でもパソコンが増加から減少に転じ、モバイル系端末の利用率がそれを補って余りある実情がうかがえる。新しいメディアの普及浸透が、若年層から推し進められていることが改めて確認できる結果ではある。

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※メディア定点調査2017

調査方法は郵送調査方式。調査期間は2017年1月26日から2月10日。東京・大阪・愛知・高知の4地区を対象に RDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女に対し調査票が送付され、2496通が回収された。各値は2015年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。また特記無き限り記事内のデータは基本的に東京地区のもの。

過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている感が強い(メディア接触時間が有意で増加している)。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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