「ネットが社会に与える影響は?」米国シニアに聞いてみました
インターネット関連技術やその普及浸透で先んじるアメリカ合衆国で、先端技術を忌避しやすい高齢者はいかなる利用スタイルをしているのか。またネットが社会に与える影響をどのように考えているのだろうか。同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年5月に発表した調査報告書「Tech Adoption Climbs Among Older Adults」(※)から確認していく。
次に示すのはインターネット利用者(利用端末は問わず。パソコン以外にスマートフォンやタブレット型端末などもアクセスしていれば該当)に限定した、インターネットの利用頻度を尋ねた結果。どのようなサービスを利用しているかは限定されず、単純に「どれぐらいの頻度でインターネットを使っていますか」とのみ質問されている。
年齢階層別のインターネット関係の調査では利用率そのものも若年層ほど高い値が出るのが普通だが、利用者においてどれほど使っているのか、その頻度はあまり問われることはない。利用する・しないだけでなく、利用頻度においても若年層ほど高頻度になることは容易に想像ができるが、今調査ではその通りの結果が出ている。
30歳未満では4割がほとんど常時利用し、5割近くが1日数回。1日複数回利用しているとの仕切り分けでは9割近くに達している。これが30代・40代では8割強、50代から60代前半では7割足らず、そして65歳以上では約6割にまで落ち込む。歳と共にインターネットの利用状況はする・しないだけでなく、利用頻度においても減退を見せるようだ。しかし一方で、見方を変えると、65歳以上でも毎日使っている人は大よそ3/4にまで届くことになる。それなりに高い値だとの評価はできよう。
もっともスマートフォン利用者に限れば、高齢者でも高い値を計上する。さすがに「ほぼ常時」の値こそ12%でしかないものの、「1日数回」は65%にまで伸びる。恐らくはソーシャルメディアやインターネットニュースを利用しているのだろう。
このような利用性向もあり、高齢者に限定してもインターネットによる社会への影響への懸念は少なく、むしろ有益に作用するとの意見が多数を占める結果が出ている。
有害でしかないとの意見は4%に留まり、功罪併せ持つのではとの意見は1/3。大よそ有益と合算すると9割超えの人がインターネットによって便益が生じている、社会にプラスとなる部分があるとの認識を示している。
報告書では具体的な動向も一部ではあるが記されている。それによると高齢者の21%が新しい技術は積極的に使いたいと答えており、家庭へのブロードバンドの普及が欠かせないと認識している人は不可欠・重要合わせて91%に達しているとのこと。特に後者は他の年齢階層と変わらない高値を示しており、自宅で高速回線を利用できることの有意性は、歳を問わず認識されているようだ。
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※Tech Adoption Climbs Among Older Adults
今調査のメイン部分は2016年9月29日から11月29日にかけてアメリカ合衆国に在住する18歳以上の男女に対し電話による対話形式で行われたもので、総数は3015人。757人は固定電話、2258人は携帯電話(そのうち1342人は固定電話を所有せず)。国勢調査などによるウェイトバックが行われている。他調査もほぼ同等の条件で実施されている。