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40年で2倍強に上昇、しかし…給食費の変遷をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 皆で楽しいお食事ができる給食。それを支える給食費の動向は(写真:アフロ)

40年で約2倍に上昇

運動会や文化祭、遠足のような非日常的イベントはもちろんだが、ほぼ毎日行われる学校行事においても、子供達にとって楽しみなことは多い。その一つが「学校給食」。毎日配膳される給食はバラエティ豊かで栄養にも配慮がなされたもの。毎月配られる献立表を見て、その内容を想像し、胸踊る気持ちになった経験を持つ人も多いはず。一方、その学校給食を利用している子供達自身はもちろん、その保護者にも、学校給食の費用(給食費)は気になる出費の一つではある。今回はその給食費について、総務省統計局の「小売物価統計調査」の結果から確認していく。

「小売物価統計調査」では給食費に関して1975年以降の値が確認できるので、それ以降、年次ベースで数字を取得できる2016年分までのもの(東京都区部小売価格)を逐次抽出していく。さらに2017年分は月次で3月分まで確認できるので、その3か月分で平均値を算出し、暫定的に2017年分として取り扱う。

なお小学校の低学年に関しては2016年12月分をもって計測が終了してしまっている。よって今件記事では小学校低学年の値は2016年の値が最新のものとなる。

↑ 公立小中学校の給食費推移(月額、円)(1975~2017年)
↑ 公立小中学校の給食費推移(月額、円)(1975~2017年)

学校給食が戦後再開されたのは1946年であるとされている。しかし法律で正式に制定された(学校給食法)のは1954年。小売物価統計調査の公開値として取得できるのは、給食開始(再開)から20年あまり後をスタートとしているため、給食費の全ぼうを確認するのには、不完全な感は否めない。しかし今回取得できた範囲内で見ても、急激な変化は無く、緩やかな上昇に留まっているようだ。

一番古い値の1975年当時は、月額で小学校低学年では約1800円、高学年で約2000円強、中学校で2300円近く。これが直近の2017年(小学校低学年は上記の通り2016年)ではそれぞれ約3700円・4400円近く・4900円強。2倍強に留まっている。消費者物価の動向もこれに近い動きであることを考えると、それなりに健闘しているといえよう。

消費者物価指数動向を反映

学校給食の場合、単純に額面の移り変わりだけでなく、当時の物価を考慮して考えた場合が良い、とする意見もある。各家計への負担を考えると、単純な価格変動だけでは比較が難しいからだ(40年前の1000円と今の1000円とでは、家計の負担が違うのは言うまでも無い)。

そこで各年の給食費に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を反映させることにした。具体的には直近の2017年における消費者物価指数をベースとし、過去の各額面を修正する(いわゆるウェイトバック)。

その計算の上で生成したのが次のグラフ。良い機会でもあり、最古のデータ1975年から直近の2017年に至る変化率も算出し、合わせてグラフにした。

↑ 公立小中学校の給食費推移(月額、円)(1975~2017年)(2017年の値を基に、消費者物価指数を考慮)
↑ 公立小中学校の給食費推移(月額、円)(1975~2017年)(2017年の値を基に、消費者物価指数を考慮)
↑ 公立小中学校の給食費上昇率(1975年→2017年(小学校低学年は2016年))
↑ 公立小中学校の給食費上昇率(1975年→2017年(小学校低学年は2016年))

消費者物価指数を考慮すると給食費は1975年以降むしろ漸減、1990年前後からようやく上昇しはじめるも、その上昇幅はゆるやかであることが分かる。1975年からの上昇率は、わずか2割足らずでしかない(小学校低学年13%、高学年18%、中学校19%)。給食の内容まで精査すれば、実質的に値上げなどないも同然といえる。金額の上でも実質的には400円から700円台(物価指数反映後における比較)。給食費がいかに「物価の優等生」であるのがうかがいしれよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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