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任天堂のゲーム機の販売動向推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 任天堂の最新鋭ハードのNintendo Switch

最新の累計販売台数

家庭用ゲーム機業界では今なお絶大な威厳と実力を誇る任天堂。その任天堂発のゲーム機に関し、同社の公開資料をもとに、その販売動向の精査を試みることにする。今回は「主要ハード編」とし、ハードウェアにスポットライトを当てることにしよう。

まずは現在公開されている最新値となる、2017年3月時点の累計ハード販売実績。据置型は次の通り。なお以下の値は販売台数で、現在稼働台数では無いことに注意。

↑ 任天堂ハード・累計販売実績(据え置き型)(万台)(2017年3月末時点)
↑ 任天堂ハード・累計販売実績(据え置き型)(万台)(2017年3月末時点)

意外なのは稀代の名ゲーム機ファミリーコンピューター(ファミコン)以上に、Wiiが売れていること。日本国内でこそまだファミコンの方が上だが、全世界で計算するとほぼ6割増しでWiiの販売台数が多い。

また、横軸は左から右へ行くほど販売された年代が新しいものとして配置しているが、ファミコンの販売以降スーパーファミコンも合わせ、ハードの販売台数が漸減しているのが分かる。ハードの台数がソフトの売れ行きに大きく影響する事実を考えれば、Wiiの直前まで「据置型ハードでは」任天堂が苦戦を強いられていたのが見て取れる。

なお一番右、つまり一番新しいNintendo Switchは2017年3月3日に日米欧で同時発売されたばかり。現時点では一番台数の少ないハードとなっているが、これから加算されていくことは言うまでもない。

続いて携帯ゲーム機。

↑ 任天堂ハード・累計販売実績(携帯型)(万台)(2017年3月末時点)
↑ 任天堂ハード・累計販売実績(携帯型)(万台)(2017年3月末時点)

御承知の通りニンテンドーDSと3DSは何度かマイナーバージョンアップが行われているため、そのうち「Lite」「DSi」「DSiLL」、「3DS LL」「2DS」「New 3DS」「New 3DS LL」は別途数字を掲載している。ゲームボーイやニンテンドーDSの市場がいかに大きいか、そしてニンテンドー3DSへの期待がどれほどのものだったのかがすけて見える。

単年と累計の経年変化

上記のデータは「累計」販売台数の状況だが、これを日本国内に限定した上で、「年次」の販売推移で見たのが次のグラフ。要は毎年どれくらいの数のハードが販売されたかを見たものである。例えばニンテンドー3DSなら2017年3月末期(2016年4月~2017年3月)は199万台となる。

↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(累計、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(累計、万台)(日本国内)

ゲームキューブやWii Uのような例外もあるが、任天堂のハードは大よそ発売2年目から3年目に年次セールスのピークを迎え、後は漸減する流れを見せている。これは任天堂に限らず他のハードにも当てはまることで、よほどのテコ入れや状況の変化がない限り、発売後しばらくしてから盛り返すことは考えにくい。

また、少なくとも年間1万台以上のセールスを打ち出すまでが「商品生存期間」と想定すると、大体6年から7年がハード上の寿命(累計グラフでほぼ横ばいになったあたりが「寿命」といえる)であることが予想できる。

ただし昨今は技術開発速度や娯楽上の競合他メディア(現状ならばスマートフォンなどの携帯電話)の進歩発展スピードの加速化に伴い、この「6年から7年」が縮小する傾向がある。直近ハードではニンテンドー3DSやWii Uの「寿命」がどれほどの長さを示すことになるのか、気になるところではある。3DSはすでにピークを超えた感があり、今後はDSと同じような歩みを示すものと考えられる。

他方Wii Uはゲームキューブと似たような動向を示していたが、2016年3月末期では大きく盛り返した。これは多分に社会現象まで巻き起こしたソフト「スプラトゥーン」によるところが大きいと考えれば道理は通る。ただしそれに続く、ハードのセールスを後押しするタイトルが無かったため、次年の2017年3月末期では大きく落ち込んでいる。

Nintendo Switchの初年度台数は60万台。発売のタイミングの都合上、計測期間が1か月に満たないのも一因だが、スタートダッシュとしてはやや少なめの値。現在進行期の2年目が勝負どころではある。

過去のハードの発売時の環境と異なり、現在では携帯電話、さらにはタブレット型端末の躍進による、市場の「食い合い」が生じている。100%領域が重なっているわけではないが、多分に共通する部分は多く、影響が無いことはありえない。人の時間は一人当たり1日24時間しかない。スマートフォンで遊びながら携帯ゲーム機でも同時に遊ぶマルチタスクな曲芸は、ほとんどの人には不可能である。

日本国内で年間1万台以上の台数増加が計上されているのは、現時点ではニンテンドー3DSシリーズ、Wii U、そしてNintendo Switchのみ。これらのハードが今後どこまで躍進するのか、今後も推移を見守っていきたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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