主要テレビ局の10年以上にわたる視聴率推移を確認する

↑ テレビの立ち位置、影響力を推し量る指標の一つが視聴率(ペイレスイメージズ/アフロ)

HUTは減少の流れ

各テレビ局のすう勢、さらにはテレビ業界動向を推し量るのに欠かせない指標の一つが視聴率。その視聴率の年単位での動向を、上場テレビ局(を傘下に収める持ち株会社)の公開資料(特に決算短信)に掲載されている資料から確認する。原則としてTBSホールディングスの資料を利用しているが、他社の公開資料とつき合わせ、整合性は確認済み。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値である(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19時~22時)、全日(6時~24時)、プライムタイム(19時~23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も合わせて)変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記し、状況を確認する。

↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(全日)
↑ HUT推移(全日)

かつてゴールデンタイムのHUTは70%前後を維持していた。しかし直近では60%強にまで落ち込んでいる(縦軸の最下方が54%になっていることに注意)。取得できたデータの限りでは1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっていた。また、年末年始は特番が多く放映される、正月休みで自宅待機率が高まることを受けてテレビ視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。無論年度ベース、つまり通期の値は、上期と下期の平均値となる。

中期的には全日・ゴールデンタイム共にHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じていた。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。

ところが2014年度上期以降、再び下落基調に転じている。直近となる2016年度下期では、前年同期比ではゴールデンタイムがマイナス0.9%ポイント、全日がマイナス0.1%ポイントを計上している。また例年生じる「下期は上期よりHUTが上がる」現象が生じていないのも特徴的。明らかな下降傾向にあると見て良いだろう。

2016年10月からは視聴率動向にタイムシフトの調査がなされ、タイムシフト視聴率や統合視聴率が試験的に一部ではあるが公開されている。しかしながら各報告書の言及や他の公開状況の限りでは、HUTはリアルタイム視聴率のままだと考えられる。HUTの下落もあるいは、タイムシフト視聴をしている人が増えているのが一因かもしれない。

主要キー局+αの視聴率

次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2006年度から2016年度(2016年4月~2017年3月)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして生成した。なお類似データとして全日・プライムタイムのものもあるが、大局的に違いは無いので、別途生成はしない。また併記している折れ線グラフは取得可能な全期の動向を対象としている。

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)

この数年の動向として、「NHKの下落から回復」「TBSの不調から横ばい」「フジテレビの凋落」「テレ朝の復調から失速、転落」「テレビ東京の持ち直しから再び下落」が確認できる。TBSは7年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行し、その値動きが継続中なので、今後上下いずれかに動く可能性は多分にある。

NHK・フジテレビは双方とも6、7年間ほぼ継続して下落を継続、特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示した。NHKは直近年で回復に転じたが、フジテレビの下げが急降下モードに突入しており、懸念を覚えざるを得ない状態にある。

↑ 2017年3月期通期・視聴率前年比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)
↑ 2017年3月期通期・視聴率前年比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)

NHKは直近年の好転ぶりを自認しており、今後も強気の展開を示している。TBSや日テレも制作環境の改善を継続し、番組の再編なども積極的に行うなど、コンテンツの充実に力を注いでいる。他方フジでは上層部の入れ替えが行われたものの、現在進行期では売上減を予測し、コストの調整で利益をはじき出すとの言及が見られることから、制作サイドはますます苦しい状況に置かれそうだ。それらの動きが視聴率にいかなる影響を与えるのか、各局の動向に留意したいところではある。

各局の視聴率動向、主に下方基調がこの1、2年の短期的なものの動きでは無く、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは把握できる。単発的に勢いをつけるコンテンツもこの時期には多数輩出されたはずだが、それでもなお、下落の流れを変えるまでには至らなかったことになる。もちろん、かつて社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気、そして視聴率の動きの方向性を変える可能性も秘められている。

各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにも関わる話なだけに、大いに気になるところではある。

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