Yahoo!ニュース

パソコンの普及状況は世帯年収でちがいがあるのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ パソコンは導入当初は相応の費用がかかる。世帯年収との関係は。(写真:アフロ)

昨今ではインターネットへの窓口としてパソコンだけでなくスマートフォンやタブレット型端末も急速に利用者が増え、普及率を上昇させつつある。特に若年層では最初に触れるインターネット端末がスマートフォンとなる場合が多く、そのまま常用を続け、パソコンへの接触機会が学校の授業など最小限のものとなり、キーボードを使う場面が減っているのではないかとの話もある。そしてスマートフォンの普及・キーボード利用機会の少ない若年層の増加背景に、年収が少ない世帯ではパソコンを整備できず、代わりにスマートフォンを用いているとの説も呈されている。今回はそれらの話を検証する際に役立つであろう、世帯年収別のパソコンやスマートフォン、さらにはタブレット型端末の世帯年収別普及率などについて、内閣府が定期的に実施している「消費動向調査」の結果をもとに確認していく。

今検証では二人以上世帯のみを検証対象とする。単身世帯と二人以上世帯では世帯年収の意味合いが大きく異なるのに加え、主に若年層、とりわけ未成年者のパソコンやスマートフォンの利用機会に関する動向を確認するのが目的であり、他方で単身世帯で未成年者のケースは想定しにくいからである(つまり二人以上世帯において、子供=未成年者や成人直後の若年層が構成員として存在しているケースを想定している。二人以上世帯全部がそれに当てはまるわけではないが、今調査の結果では子供が居る・居ない別の仕切り分けが無いため、もっとも近しい値を精査できる二人以上世帯を対象とした)。

次に示すのは直近の2017年3月末時点における、世帯年収別パソコン、スマートフォン、タブレット型端末の普及率。一世帯に何台保有していても、あるかないかのみでの回答なので、100%を超えることは無い。

↑ パソコン・スマートフォン・タブレット型端末世帯年収別普及率(2017年3月末)(二人以上世帯)
↑ パソコン・スマートフォン・タブレット型端末世帯年収別普及率(2017年3月末)(二人以上世帯)

全機種とも大よそ高年収ほど高普及率を示している。一方でパソコン・スマートフォン共に750万円程度で普及率がほぼ頭打ちになるのに対し、タブレット型端末は一様に上昇を続けている。これはひとえにタブレット型端末の普及率そのものがまだ低めなため。パソコンとスマートフォンの高年収における普及率の動きは、いわばカウンターストップ、上限に近付いたためのものと考えられる。見方を変えるとパソコンとスマートフォンの世帯普及率は9割強が、世帯普及率の上限と見て良いかもしれない(数字的には10割が上限なのだから、当然の結果ではあるが)。

いずれにせよ、上限値はあるものの、世帯年収によるパソコンやスマートフォンの普及率に違いは確実に存在する。もっともパソコンとスマートフォンの普及世帯がだぶっていることは多分にありえるため、「スマートフォンがパソコンの代替として用いられている」「スマートフォンがパソコンを取得できない世帯の代用品的立ち位置として存在する」などの立証は、今件データだけでは不可能。

「保有世帯」における平均保有台数を確認すると、保有率とは異なり、パソコンもスマートフォンも年収が上になるほど一様に台数が増加しているのが分かる。

↑ パソコン・スマートフォン・タブレット型端末世帯年収別・保有世帯あたり平均保有台数(2017年3月末)(二人以上世帯)
↑ パソコン・スマートフォン・タブレット型端末世帯年収別・保有世帯あたり平均保有台数(2017年3月末)(二人以上世帯)

この動きは年収と共に上昇する普及率は一定額で頭打ちになるが、それより上の年収でも世帯内で複数持ちの人が増え、平均保有台数は増えていくことを意味する。パソコン保有世帯に絞っても、300万円未満では1.30台なのに対し、1200万円以上では2.27台となり、1台分の差が出ている次第である。世帯人数までの仕切り分けは元データでもされておらず精査は不可能だが、世帯台数が多ければ各世帯構成員がパソコンに触れる機会は増え、子供専用のパソコンが用意されている可能性も高くなる。

これらの数字を見るに、「パソコン、さらにはスマートフォンやタブレット型端末は世帯年収が高額になるほど普及率は高く、保有世帯における保有台数も多くなる」ことは確定事項と見なして良い。一方で「パソコンを持てない低所得世帯が、その代替端末としてスマートフォンを取得するようになった」との仮説を裏付けるまでには至らない。

ただし、これまでパソコンを所有していなかった世帯が、スマートフォンの所有ではじめてインターネットへのアクセス機会を得る事例は多分に考えられる。何しろ世帯年収区分で最低額の仕切りの層でも4割超えの世帯がスマートフォンを有しているのだから。

■関連記事:

パソコンの世帯主年齢階層別普及率をグラフ化してみる

携帯電話の普及率現状をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事