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日本は48位、自由判定…報道の自由度ランキング最新版

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 報道の自由を脅かす事案は数多く…(「報道の自由度」報告書より)

日本は48位、報道の自由がある国判定

報道の自由はそれが社会的利益にかない倫理と公正に従うものである限り、絶対的なもので自由と民主主義の維持のために守られるべき存在。その度合いを国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)※が2017年4月に発表した「報道の自由度(Freedom of the Press)」※※の報告書「Freedom of the Press 2017」から確認していく。

直近となる「報道の自由度2017」だが、これは2016年の動向を確認したもの。発表ページでは世界地図を色づけした形で大勢が分かるような図版が用意されている。

↑ 報道の自由度(Freedom of the Press)2017
↑ 報道の自由度(Freedom of the Press)2017

グリーンの国は自由、黄色はやや自由、紫は不自由判定が下されている。アジア地域は大よそ不自由、欧米諸国は大よそ自由、ただし東欧は「やや自由」判定国が多め。南米・アフリカ大陸はやや自由から不自由。地域で大体の仕切り分けができるのは興味深い。報道に係わる文化的な姿勢の違いが根底部分にあるのだろう。その観点で、日本がアジア地域では台湾と共に数少ない自由判定を下されているのは注目に値する(太平洋地域まで含めるともう少し数は増えるが)。

続いて最新のデータに基づいた、報道の自由度をランキング付けしたもの。全部の国を一つに集約するのは無理があるので、自由、やや自由、不自由それぞれの該当国のみで仕切り分けし直し、グラフに収めている。日本を含む自由判定のグラフでは国名を日本語に書き換えている。

↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「自由」判定の国)
↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「自由」判定の国)
↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「やや自由」判定の国)
↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「やや自由」判定の国)
↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「不自由」判定の国)
↑ 報道の自由度(2017年発表、2016年分)(「不自由」判定の国)

日本は27点で48位。もっとも数点の差異は誤差レベルのものであることを考えると、プラスマイナス5点位の国は大よそ同じ報道の自由度を有していると考えても良い。オーストラリア(22点)、アメリカ合衆国(23点)、台湾・イギリス(25点)、スペイン(28点)、チリ(29点)辺りが知名度の高い国として同一領域だろうか。数年前に大きく「報道の自由」が論議されたフランスは26点で、日本とほぼ同じ領域。

一方、値が高い、つまり報道の自由度が低い国としては、最上位は北朝鮮とトルクメニスタンの98点、次いでウズベキスタンの95点が続いている。イランは90点、中国は87点、ロシアは83点といずれも高い値。自由度の高い上位陣と共に納得できる結果ではある。

太平洋アジア地域に限定して…

上記結果を太平洋・アジア地域に区分された国に限定して、内容をもう少し確認していくことにする。まずは全体値の状況。

↑ 報道の自由度ランキング(2017年発表、2016年分)(低値ほど自由)(アジア太平洋地域)
↑ 報道の自由度ランキング(2017年発表、2016年分)(低値ほど自由)(アジア太平洋地域)

同地域でもっとも自由度が高いのはパラオ、次いでマーシャル諸島、ニュージーランド、ミクロネシア、そしてオーストラリア。日本はバヌアツに続く値。自由・やや自由・不自由の仕切り分けにおいて、国数としてはほぼ等分だが、諸島や人口の少ない国が多い中で、日本は数少ない「人口の多い自由判定国」であることが分かる。

韓国は34ポイントでやや自由判定、香港も42点でやや自由。インドは43点、フィリピンは44点でやはりやや自由。中国や北朝鮮はともかく、タイやシンガポール、マレーシアが不自由判定を下されていることに、それぞれの国の第一印象からすると意外さを覚えるものもある。

これを「A:法的環境」「B:政治的環境」「C:経済的環境」それぞれのポイントで仕切り分けしたのが次のグラフ。

↑ 報道の自由度ランキング(2017年発表、2016年分)(低値ほど自由)(アジア太平洋地域)(ポイント要素仕切り分け)
↑ 報道の自由度ランキング(2017年発表、2016年分)(低値ほど自由)(アジア太平洋地域)(ポイント要素仕切り分け)

国によってやや違いを見せる部分もあるが、大よそ法的な環境、政治上の環境、経済上の環境の上で、それぞれ同程度のチェックが入り問題があるとされ、ポイントが加算されていることが分かる。日本はやや政治的要素が大きいがその分、法や経済の縛りが緩い、不自由な国では法や政治上の縛りが強い、自由度の高い国では概して法的しばりが緩いなどが傾向として挙げられる。

これらの指標はフリーダム・ハウスの判断によるもので、絶対無比のものでは無い。報道を取り仕切る側における品質、「報道」の名に恥じぬ行為を成しているのか否かの問題もある。他方、76年に渡り各方面の自由を尊重し、監視を続け啓蒙を果たしてきた機関による精査であり、「報道の自由度」に限っても1980年以降毎年継続して精査と公表が行われ、調査のたびに状況に応じた指針の変更模索がなされていることや、その内容が極めて高い透明度で公開されていることから、大いに参考になる値にも違いない。

日本ではあまり伝えられることが無い今指標だが、注目すべきものであることは言うまでもあるまい。

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※国際NGOフリーダム・ハウス

1941年にアメリカ合衆国国内で設立された国際NGO団体。同国としては初の世界規模で自由を守るために活動する組織として知られており、創設者はウェンデル・L・ウィルキー(1940年時点の共和党の大統領候補)やエレノア・ルーズベルト(当時のアメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの妻)。同大統領の支援も受けているが、超党派的な存在として設立され、その方針は今も続いている。

設立当時同国内をはじめ世界には孤立主義、共産主義、ナチズム、全体主義が広まりを見せており、それに対抗しうる最大の武器が、自由と民主主義の浸透であるとし、それを監視しその現状を知らしめることを存在意義としている。またその考えに連なる形で、世界中に自由や人権を広め、強化していくことも使命として掲げている。現在では12か所に事務所を構え、120人以上の専門家や活動家から構成されている。なお同国の指標的報告書「Freedom in the World(世界の自由度)」は1973年から展開を開始した。

※※報道の自由度(Freedom of the Press)

報道の自由度合いを示した指標。3つの主要カテゴリ「A:法的環境」「B:政治的環境」「C:経済的環境」に分類された合計23の質問(さらにそれらは複数の質問に分岐され、合計で100)に対し、該当しうるか否かでポイント付けされる。結果は国別に判断され、100点がもっとも報道の上では不自由、ゼロ点がもっとも自由。30点以下は自由、31~60点がやや自由、61点以上が不自由と大別化される。

それぞれの質問への判断は該当地域の専門家や学者によって多層プロセスでの評価が成されている。90人ほどのアナリストによって分析が行われているが、その分析の際には実地調査以外に専門家へのインタビュー、国際的民間組織からの報告書、政府や地域の国内外のニュースメディアからの情報取得が行われている。なお「報道の自由」は紙媒体に限らない。また質問内容および従事担当者はすべてその詳細なプロフィールと共に公開されており、透明性は確保されている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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