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有料動画配信は1256億円…映像ソフト市場の推移と現状

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 映像観賞は昔も今も楽しい娯楽の一つ。その媒体毎のセールスは…(写真:アフロ)

映像ソフトの市場動向

インターネットメディアの普及と回線の高速化、映像技術の進歩に配信サービスの加速的充実から、昨今では物理メディアにおけるエンタメ部門のセールスが思わしくないとの話がある。音楽業界、CD・DVD部門がその最たるものだが、映像ソフト(ビデオソフト、DVDやBD(ブルーレイディスク、以下同)、さらには有料動画)でも状況に大きな変わりはない。今回は日本映像ソフト協会が2017年4月に発表した、日本の映像ソフト協会そのものやソフト関連の実地調査結果を絡めた白書「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」をもとに、日本の映像ソフト市場の実情を確認する。

まずは映像ビデオ市場の市場規模。「セル」は販売、「レンタル」は貸出を意味する。過去発表分のレポートも合わせ、確認できる経年データ(2005年以降)を見る限り、全般的にはセル・レンタル共に市場規模は縮小する傾向にある。

↑ 映像ソフト市場規模推移(億円)(~2016年)
↑ 映像ソフト市場規模推移(億円)(~2016年)

特に2008年以降の急落ぶりは音楽CDの売れ行きとおおよそ似ており、非常に興味深い。メディア環境の変質は音楽メディアと映像メディア双方に、同時期に起きたことが分かる。見方を変えればメディアそのものの変質が状況変化の主要因であり、コンテンツの種類はさほど関係が無い。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年~2016年)(日本レコード協会公開資料から作成)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年~2016年)(日本レコード協会公開資料から作成)

エンタメ系メディアは直近においては、2007年から2008年が大きなターニングポイントと見て問題はなさそう。コンテンツの質や方向性では無く、鑑賞媒体・ツールなどの周辺環境変化が、市場に大きな影響を与えていることになる。

2013年分からは緑色の部分、有料動画配信サービスの市場推計値が追加されている。これは2012年までがゼロで推移していたのでは無く、単に今件調査結果で対象としていなかったまでの話。具体的には「定額見放題サービス」「都度課金サービス」「有料動画購入サービス」などが該当する。さらに2015年からはこれまで計上されていなかったWOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアムなども該当するものとして数字に含まれている。2015年の有料動画配信サービス市場における前年からの躍進ぶりは、一部にこの定義変更によるところ。ただし2016年では定義の変更が無いにも関わらず前年分から値は上乗せされており(前年比で約3割増)、有料動画配信サービス市場は拡大フェイズにあるとの現実に変わりは無い。

また有料動画配信市場は2013年分からの計上だが、2012年以前の数年間は、セル市場+レンタル市場+有料動画配信市場の合計額、つまり広義の意味での映像ビデオ市場は、大きな変化が無かった可能性が高い。他方物理メディア(DVD&BD)市場規模に限れば、縮小の動きを示しているに違いは無い(2016年は4002億円、前年比マイナス4.1%)。

右肩下がり映像ソフト市場のうち物理メディアによるビデオソフト市場は、セル市場もレンタル市場も、そして総計でも縮小の一途をたどっている。そしてそのうちの少なからずは、動画配信に利用者がシフトしたものと考えられるが、その際に市場に支払われる対価が減退し、市場全体も縮小している感があった。しかしながら直近の2016年では有料動画配信市場が全体を大きく補完し、躍進に転じさせた感はある。

音楽業界では物理媒体の「金額的な」市場縮小分をデジタル媒体の市場拡大分で補いきれず、全体としては縮小する傾向にあるが、それと似たような雰囲気を覚えさせられる。ただし映像ソフトではデジタル媒体が補完できた形となっているのが幸い。

有料動画配信「市場」は直近の2016年時点では1256億円。そのうちのどれほどが「元々レンタルもセルも目に留めていなかった人が利用した、新規の掘り起こし的な需要」なのか、「セル市場やレンタル市場からのシフト組」なのかは判断する材料が無いが、後者の場合は対応する人数が同じでも、市場に投下される金額は随分と縮小する。

今後金額面での市場規模がいかなる変化を見せていくのか。大いに注目したいところではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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