顕著化する「子供たちのパソコン離れ」…小中高校生のパソコン利用率推移
2010年以降の小中高校生のパソコン利用率
ビジネス用、あるいは技術研究用の汎用コンピューターではなく、個人向けのものとして各企業から発売されているパーソナルコンピューター(パソコン、PC)。インターネットの普及に伴い、インターネットへのアクセスツールとして欠かせない存在となり、また高性能化と廉価化を経てデスクトップパソコンからノートパソコンへ、その主流は移りつつある。それではそれらパソコンを、どれだけの子供達が利用しているのだろうか。内閣府が2017年3月に確定報が発表された内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)から、「子供のパソコンの利用状況」を確認していく。
技術的、価格的ハードルの高さから、携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方)と比べて保有・利用ハードルが高いものの、パソコン(デスクトップ、ノート双方を含む)もまた、デジタル社会においては、特にインターネットの窓口として欠かせないデジタル機器の一つ。そのパソコンをデスクトップ・ノートを問わず、そしてインターネットへの接続をしているか否かに関わらず、利用しているか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単純に利用しているか否かを尋ねているため、そのパソコンの所有権を回答者自身が有しているかは問われていない。回答者当人が「利用している」と認識している割合。「利用したことがある」ではないことに注意。
昨今ではインターネットに初めてアクセスする端末が、パソコンからスマートフォンやタブレット型端末へと急速にシフトし、その便利さからその環境に慣れ親しみ、パソコンを敬遠する動きが若年層の間に広まり、いわゆる「パソコン離れ」「キーボード離れ」が起きているとの話もある。元々2010年から2013年にかけてその動きがあったものの、2014年では急激に加速化した感がある……
……ように見えるが。「青少年のインターネット利用環境実態調査」は経年調査ではあるが、昨今のインターネット界隈の急激な変化に対応すべく、2014年調査分からは調査内容を大幅に差し換えている。今件該当部分も、2013年までは具体的に「自分専用のパソコンを使っている」「家族と一緒に使っているパソコンを使っている」など使用例を挙げた上で使っているか否かを尋ねており、その中には漫画喫茶や学校での利用も明記されている。ところが2014年以降は単に「下記の機器を利用していますか」とだけ尋ねており、その中にパソコンが含まれているのみとなっている。
具体例が挙げられなかったことから、「使っている」との言葉の解釈を回答者が、2013年までは多分に「その場所で使ったことがある」と経験則的な意味でしていたのに対し、2014年以降では「日常茶飯事的に利用している」と読み解く事例が増え、結果として回答率が減った可能性は多分にある。そのため、単純比較をして「1年間で半減、それ以下になった」とし、急激な減少傾向が生じたと断じるのは早計に過ぎる。
他方、インターネットの窓口として小中高校生の間にスマートフォンなどが急速に浸透しているのも事実。減退傾向が生じていることに違いはあるまい。
直近分の2016年では2015年からさらに確実に減少。小中校生共にすでに3割を下回り、高校生も間もなく3割を割り込む状況となっている。回答者の「利用している」との認識の範ちゅうにおいて、高校生ですら3割強しかパソコンは利用されていない。つまり7割近くはパソコンとはほぼ無縁の状態にある…現実には授業などで使うことがある位…実情は認識しておく必要がある。
「パソコンを使っているがネットは使っていない」事例
上記調査項目は「インターネットへの接続を問わず」との条件に基づいた、パソコンの利用状況。現在はパソコンの利用はインターネットの利用とほぼイコールであり、インターネットを利用しないパソコンの利用は、意図的にネットアクセスを禁じた上でのごく限られたソフトウェアの利用ぐらいしか想定できない。例えばお絵かき用のソフトや、特定のゲームソフト、教育用ソフトなどの専用機として使う事例。
そこで単純にパソコンを利用しているか否かの利用率と、パソコンでインターネットを何らかの形で利用している利用率それぞれについて、学校種類・回答者の性別に区分した上で確認したのが次のグラフ。
例えば家庭用ゲーム機の場合、単純利用率とインターネットを利用した利用率とでは大きな差異が生じる。しかしパソコンの場合は大よそイコールネット利用となるため、大きな差は生じていない。今なお「パソコンを利用する」は「インターネットを利用する」と見て良さそうだ。
一方、その利用率そのものを確認すると、小学生では男子の方が上、中学生でほぼ同率となり、高校生では再び男子の方が上になる。スマートフォン経由のネット利用率は小中高共に女子の方が高い値なので、多分に女子はスマホに傾注してしまう傾向が強く出ているのだろう。
なお前年比を計算すると次の通りとなる。
単純に機種利用ベースでも、ネット利用端末としても、小中高校生のパソコン離れが進んでいることが分かる。特に小学生と高校生の女子において著しい。スマートフォンの機能向上やアプリの充実が多分に影響していると考えられるが、将来の選択肢が確実に狭まることを考えると、憂慮すべき状況には違いない。
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※青少年のインターネット利用環境実態調査
直近年分は2016年11月5日から12月11日にかけ満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3284人(うちウェブ経由は108人)、保護者は3541人(うちウェブ経由は55人、郵送回収法は34人)。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。