Yahoo!ニュース

米国では22州で成人の3割以上が肥満判定

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 肥満大国でもある米国。その実情を統計値から再確認。

肥満3割以上が22州

肥満体質の話となれば必ず事例として持ち上がる、アメリカ合衆国の肥満状況。現状ではどれほどの大人が肥満と判断されているのだろうか。同国の公的機関CDC(Centers for Disease Control and Prevention:米疾病予防管理センター)の公開情報から確認していく。

まず用語の確認。「BMI」とは「肥満」度合いを示す基準の一つで「体重÷身長÷身長」で算出される。日本肥満学会ではBMIが22で平均的体格・体重、25以上を太り気味、18以下をやせ気味としている。今件データを用いるアメリカ合衆国では

・Underweight(低体重)……18.5以下

・Normal weight(標準体重)……18.5-24.9

・Overweight(やや肥満)……25-29.9

・Obesity(肥満)……30.0以上

と区分している。

次の図は、アメリカ合衆国の各州などにおける成人男女(今件では18歳以上基準)のBMI値について、30以上の人、つまり肥満判定を受けている人の割合(現時点の公開最新値は2014年分)を示したもの。例えばArkansas州は35.9%とあるので、大人の1/3強が「肥満」判定を受けていることになる。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2014年、CDC・BRFSS)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2014年、CDC・BRFSS)

30%以上の州を薄い赤で色分けしたが、この領域に該当するのは全部で22州。最大値を示すArkansas州は35.9%、次いでWest Virginia州が35.7%、Mississippi州が35.5%と続いている。「肥満大国アメリカ合衆国」との俗名に恥じないデータではある。全米平均(植民地除く)では29.6%、最低の値を示すColorado州でも21.3%。5人に1人が肥満状態。

肥満以外の人の割合は

該当データページでは肥満以外に「やや肥満」=「過体重」、「標準体重」、「低体重」=やせ型の人の人数比率も掲載されている。そこでそれぞれを取得して、割合の実情を精査した結果が次のグラフ。なお並びは上記グラフ同様、「肥満」の人の割合が多い順にしてある。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者などの比率区分(州別)(2014年、CDC・BRFSS)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者などの比率区分(州別)(2014年、CDC・BRFSS)

全米では29.6%が「肥満」、35.4%が「やや肥満」。「標準スタイル」は33.4%、やせ型の人は1.8%に留まっている。

州によっては肥満判定者が多いにも関わらず標準・やせ型の割合も多いところもあるが、概して「肥満」と「過体重」の合計が6割から7割を維持しているのが分かる。つまり「肥満」の少ない州でも多分に「過体重」の比率が高く、「標準」+「やせ型」の比率が一定(4割足らず)に留まっている。「標準」「やせ型」の合計が4割を超えているのは6州のみ。5割超えは皆無。あまり想像したくはないが、これが現実である。

さらに前年分、つまり2013年分における「肥満」判定を受けた人の割合を今回2014年分と比較すると、増えた州の数は減った州のほぼ3倍にあたる。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2013年から2014年への変移、CDC・BRFSS、ppt)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2013年から2014年への変移、CDC・BRFSS、ppt)

多くの州で「1年間で」肥満と判定される人が「全成人の」1-2%ポイントほど増えている計算になる。100人大人がいれば、毎年1人ずつ、肥満の人が増えることを意味する。

ここまで肥満者が増えた原因は多種多様に及び、一概に「これのみが原因」と言い切ることはできない。基本的な生活様式に加え、食生活の改善と変化、交通機関の整備、社会生活そのものの変移、さらには現在5000万人に近しい人が対象となっているSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program:補助栄養援助プログラム、旧フードスタンプ)が一因との考え方もある。

また、全般的に歳を取るほどBMI値は上がる傾向にあることから、平均寿命が延びているのが一因とする説もある(それにしては急激だが)。しかし年齢補正を行った上での肥満判定者率を確認しても、状況に大きな変化はなく、加齢による積上げはほとんど無関係であるのがわかる。もちろん一つひとつ単独の項目のみが原因ではなく、複数の要因の積み重なりによる結果ではあろう。

最後に、データの連続性などの問題で2010年分までで留めているが、CDC発表によるアメリカ各州のBMI値30.0以上の大人の割合を示した映像を呈しておこう。

↑ 1985~2010年における米各州の肥満比率推移 (Percent of Obese in U.S. Adults)。

色々と感慨深い動きではある。

■関連記事:

男は中堅・女は高齢ほど肥満者が多い法則

平均体重80キロ!?…アメリカの2/3は「肥満傾向」にある

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事