子供たちはどこまで社会に関心を持ち、新聞を読んでいるのだろうか
中学生より小学生の方が社会問題への関心度は高い
大人同様子供にもやるべきことは山ほどあり、しかも経験や能力が未熟なために、必要なあれこれを果たすのには手間と時間がかかる。それら義務を果たしつつ、自分の旺盛な好奇心をあちこちに向け、社会の問題や出来事に興味関心をいだき、色々と新たな経験をしたり、情報を取得して知恵と成し、成長を重ねていく。それでは昨今の子供達はどれほどまでに社会に関心を持ち、ニュースを取得しているのだろうか。文部科学省が2016年9月に発表した全国学力・学習状況調査の最新版(※)による公開値を基に、小中学生の社会への関心度と、新聞やテレビ・ネットなどのニュースの取得状況を確認する。
最初のチェック項目は、地域や社会で起きている問題や出来事(いわゆる時節的なお話)に興味関心を抱いているか否か。今調査項目は都合4年分の結果が確認できる(これは今記事の以降の項目も同じ)。
関心派は小中学生共に6割超え。しかも経年で増加する傾向がある。直近年度では前年度から大幅な増加、特に明確な肯定意思の回答率が増えている。今調査の直近年度分は2016年4月に実施されたが、直前に熊本地震が発生しており、それが影響した可能性はある。
他方、どの年度でも中学生よりも小学生の方が関心度が高い結果が出ているのは、意外といえば意外。多分に勉学や部活動、趣味趣向など、自分自身に手が届く範囲での環境への注力に忙しくなり、自分とは直接関係はなさそうに見える、少なくとも大きな影響は生じないであろう物事への関心は、優先順位が低くなるからだと考えられる。
小中学生の新聞離れの実態
社会問題により強い関心をいだくように見える小中学生。それでは文化の主軸であり、欠かせない存在であると自己主張する新聞へはどのような接し方をしているのだろうか。
「若者の新聞離れ」はよく見聞きするが、小中学生においてもその言葉は当てはまる結果が出ている。月一程度でも読む人も購読者と試算しても、小学生の購読率は5割足らず、中学生では4割足らずでしかない。しかも経年でますます新聞から距離を置く傾向を示している。通常の新聞は定期購読され毎日世帯に投函される状況を考えれば、ほぼ毎日読める機会は生じる。その上でその機会を活かし、日々新聞に目を通しているのは、小学生で1割未満、中学生では7%足らずでしかない。
この減退傾向には、世帯ベースでの新聞購読率が減少しているのも影響しているものと考えられる。子供が自ら望んで新聞を購入・調達するとは考えにくいからだ。一方で小学生よりは中学生の方が、購読率は低い。社会への興味関心度の低さ、あるいは自分自身の身の回りへの注力度の大きさは、新聞購読率にも表れているようである。
それでは紙媒体で無ければ、ニュースへの関心は高いのだろうか。テレビとネット系のニュースをひとまとめにする設問側の意図がいまいちつかめないが、その双方合わせて見ているか否か、その度合いを確認したのが次のグラフ。
要は「新聞よりも取得ハードルが低いニュース」との意味でテレビとネットをひとまとめにしたのだろうが、取得率は新聞よりはるかに高い。見ていない人は2割足らずに留まっている。過去4年間にわたり増減はほとんどなく、安定した高値を維持している。むしろ直近年度ではあきらかな増加への動きすら確認できる。
今件項目は子供達が社会に向ける目の方向性だけでなく、その好奇心をどのようなルートからの情報で充足させるのかなど、メディアの利用様式とも係わる項目のため、非常に興味深い内容に違いない。小中学生の習慣は概して高校生にも引き継がれ、それはさらに大人になっても変わらない可能性は高いからだ。
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※全国学力・学習状況調査の調査要綱
今回年度分は2016年4月19日、国公立及び私立の小中学校に対し悉皆調査方式(標本調査ではなく全体を調べる)で行われたもので、実施学校数は小学校が2万0049校、中学校が1万0526校。教科調査(学力テスト)は国語A・Bと算数(数学)A・B、そが実施されている。また4月に発生した熊本地震により、熊本県の全校や宮崎県、大分県の一部の学校で同一期日での調査実施が見送られている。