15年ぶりに前年比プラスに…交通事故による死亡者、2015年は4117人

↑ 後を絶たない交通事故。原因は多々あれど……

減少続ける交通事故死亡者、だが…

警察庁が2016年1月5日に発表した統計結果「交通事故死者数について」によると、2015年の1年間で交通事故により亡くなった人は4117人。前年の4113人から4人・0.1%の増加となった。死亡者の増加は15年ぶりのものとなる。今件に関して公開資料から詳しい内情を確認していく。

まずは過去20年間における年間交通事故死亡者数の推移。今統計値における「交通事故死亡者」は、事案発生から24時間以内に死亡した人数を指す。統計ではその他に30日以内の場合の「30日以内死者数」、さらには厚生労働省の公開値として「1年以内死者」も存在する(後述)。

↑ 過去20年間における年間交通事故死亡者推移(2015年分反映)
↑ 過去20年間における年間交通事故死亡者推移(2015年分反映)

多少の凸凹はあるが、確実に減少の一途をたどる状況が把握できる。2000年はイレギュラー的にわずかに前年比で増加したものの、それ以降は過去20年間、交通事故による死亡者は大よそ年々減少して「いた」のが現状。

2015年はわずか4人ではあるが増加に転じている。これは報告書の解説文に

「交通事故における致死率の高い高齢者の人口の増加が近年の交通事故死者数を押し上げる要因の一つとなっており、昨年の交通事故死者に占める65歳以上の高齢者の比率は過去最も高くなっております」

「交通事故死者数が増加した要因としては、事故に遭った際の致死率が高い高齢者の人口が増加していることなどが挙げられる」

とある通り、高齢者の交通事故死亡者が増加したのが主要因。過去にさかのぼって確認しても、若年層・中堅層と比べて高齢者の死亡数の減少度合いはゆるやかで、増加する年もしばしば見受けられる。これが昨今の年間交通事故死亡者数の減少度合いのゆるやかさ、2015年の増加のもとと見て間違いは無い。

↑ 交通事故死亡者とそのうち高齢者(65歳以上)の推移(人)
↑ 交通事故死亡者とそのうち高齢者(65歳以上)の推移(人)

元々高齢者は人数、全人口比率共に上昇中。若年層・中堅層と比べて減少度合いがゆるやかになるのは仕方がないとする面もある。一方で、指摘の通り事故発生リスクそのものや、事故に遭遇した際の致死率は高齢者の方が高いのも事実。単に該当人口の増加だけでは説明できない要因もあることは否定できない、むしろその要因の方が、全体の交通事故死亡数の減退率のゆるやかさ・増加傾向の原因としてウェイトが大きい。

今件発表値を元に、年間死亡者数の前年比(減少率)を算出したのが次の図。数字のプラスが大きいほど、死亡者数が減少している割合も大きいことを意味する。

↑ 過去20年間における年間交通事故死亡者前年比「減少」率推移(プラスが大きいほど死亡者数の減少割合も大きい)
↑ 過去20年間における年間交通事故死亡者前年比「減少」率推移(プラスが大きいほど死亡者数の減少割合も大きい)

前世紀末、2000年ごろまでは多少のぶり返し(死者数の前年比増加)もあった。しかし今世紀に入ってから、特に2005年以降は数年に渡り、減少率が上乗せされ、死亡者数が加速度的に減少している様子が実感できる。2008年以降は減少幅が落ち着きを見せ(上記指摘の通り、高齢者の死亡数減少がゆるやかになってきた時期と一致する)、直近の2015年では2000年以来再び減少率がマイナス、つまり死亡数の増加を示す結果となった。

「交通事故死亡者」の定義を変えてみると

今件交通事故死亡者の数はあくまでも「事故発生から24時間以内」のもの。あるいは「24時間はとにかく延命させて、数字の改ざん的な動きをしている」と陰謀説を巡らせる人もいる。しかしその考えは正しくない。

同じ警察庁の報告書「交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取り締まり状況について」の2013年版(現時点ではこれが最新版)には詳細な計測値が盛り込まれている。その報告書では「交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移」のグラフが確認できる(昨年秋に発覚した千葉県警の不祥事により現在各統計が再計算中で、今件図表はその修正前のもの。ただしグラフの形状をくつがえすものではないので、今回はそのまま流用する)。

そのグラフでは24時間に限定せず、「30日以内」、さらには厚生労働省統計の「1年以内」の数も含まれている。そしてこれらの値を眺めれば、約20年の間、すべての値が減少しているのが把握できる。

↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移
↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移

グラフに注釈の文字を加えたが、1960~1970年における「第一次交通戦争」は経済発展の中で自動車、特に商用車の急速な普及と共に、立ち遅れた交通行政と自動車社会に対する啓蒙不足、法整備不足を原因としている。そして「第二次交通戦争」は自動車交通の加速化に対して行政の対応が間に合わなかった(環境整備予算、人員数、若年層への啓蒙)とする意見が有力。

しかし第二次交通戦争以降は

・車両台数は増加、その後十年強の間は横ばい

・事故発生件数、負傷者数は上昇、その後横ばいから、直近10年は減少の傾向

・死者数(24時間以内、30日以内、1年以内)は一環して減少

の様相を見せている。特に事故発生件数と負傷者数は2004年から2005年にかけて減少したのを皮切りに、ようやく減少傾向に転じたのに対し、各種死者はそれ以前から一様に急速に減少しているのは注目に値する。

これら一連の減少傾向について警察庁のレポートなどによればその理由として、

・シートベルト着用者率の向上

・事故直前の車両速度の低下(安全運転の徹底化や取り締まり・法令強化、警告装置の充実)

・悪質・危険性の高い事故の減少(∴死亡事故が減る)

・歩行者の法令遵守

・自動車技術の進歩(エアーバック、ABS、車体構造、シートベルト)

・シートベルト着用、飲酒運転などに関する交通ルールの規制強化

・医学、生存技術の進歩による事故死の減少(事故数と負傷者数が比例していることも裏づけ)

などの複合効果による成果としている。これらの対策が積み重なり、確実に交通事故による悲劇を減らしている。それは上記の各種データが語っている。

一方、繰り返しになるが、高齢者数の増加に伴い、高齢者が引き起こす交通事故、そしてその事故による死亡者のさらなる増加は容易に想像できる。交通事故は当事者だけでなく周囲の人も巻き込み可能性が多分にあることを考慮すれば、早急に法令の改正も合わせ対応が求められるに違いない。

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