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増える精神科や糖尿病内科、減る外科や小児科…日本の医師数の変化をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 医療を支える医師数は増えているのか、それとも……

高齢化の進行や医療技術の発達による各種疾病の早期発見化に伴い、これまで以上に注目が集まるようになりつつある医療環境。その現場を支える医師や看護師、各種スタッフのうち、医師数の動向を厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」から探る。

同調査の公開データから入手可能なもっとも古い値である1994年の値を基準とし(糖尿病内科(代謝内科)のみ公開値で最古の値は2008年分なので、その値が基準値)、主要診療科別医師の推移をグラフ化する。各診療科別の医師の増減動向が把握しやすい図となっている。また合わせて直近2014年時点における主要診療科の医師数(重複カウント)も掲載しておく。なお医療施設従事医師総数は重複計算では無い。

↑ 医療施設従事医師数の年次推移(診療科名)(複数回答、各科の1994年を1.0とした時の推移)(糖尿病内科のみ2008年が1.0)
↑ 医療施設従事医師数の年次推移(診療科名)(複数回答、各科の1994年を1.0とした時の推移)(糖尿病内科のみ2008年が1.0)
↑ 医療施設従事医師数(主な診療科)(診療科は複数回答)(2014年)
↑ 医療施設従事医師数(主な診療科)(診療科は複数回答)(2014年)

総数もあわせ多くの科の医師数が増加している一方で、外科と産婦人科・小児科が減少を続けているのが実態。ただし産婦人科については社会問題化したこともあり、やや持ち直しの機運が見られる。また内科も少しずつ数を回復しつつある。

またグラフ中にも記しているが、2008年に診療科名の定義が細分化されたこともあり、調査項目も変更されている。それによる差異が2006年までと2008年以降には生じている。内科は2004年から減少しているとはいえ、2008年の急落はこの調査項目の変更によるところが大きい。

糖尿病内科は基準値が唯一2008年分のものであるにも関わらず、その上昇度合いは今回取り上げた診療科の中では精神科に続き高い値を示している。元々数が少なかったのも要因だが、同時に需要が急増した結果にも違いない。、

とりわけ下落が著しい外科・産婦人科・小児科の減少が再確認できるのが次のグラフ。1994年から2014年における変移を計算したものだが、産婦人科は1割近く、小児科は1割以上、外科は2割近くも減少している。

↑ 医療施設従事医師数推移(1994年→2014年)
↑ 医療施設従事医師数推移(1994年→2014年)

こちらも上記にある通り、診療科名の定義変更による誤差が(特に外科で)生じている可能性に留意しておく必要がある。精神科が需要に応える形で増加しているのをはじめ、ほとんどの科で増加している。それゆえに外科と産婦人科、小児科の減り具合が目立つ。また、内科が減少に転じているのは意外なところか。医療の発達で治療内容が専門化しているのが一因かもしれない。

ちなみに「複数回答」ではなく「主たる診療科」で答えてもらった場合の医師「数」は、次の通りとなる。

↑ 医療施設従事医師数(主たる診療科名)(2014年)
↑ 医療施設従事医師数(主たる診療科名)(2014年)

圧倒的な内科の多さ、整形外科の意外な多さが見て取れる。直上で「内科医師が減少傾向」としたが、需給上のバランスも考えられよう。

たびたび報道されることで、あるいは自分自身や周辺の人が実感して状況を把握している人も多いと思われるが、特に産婦人科の医師数の少なさは社会問題化している。その産婦人科や外科では、一部の過剰・偏向報道がきっかけで風当たりが強くなり、訴訟リスクが急増し、いくら医師(予備軍)本人の志が高くとも「現状では続けることはかなわない」と医学の道を断念したり別の診療科へシフトする人が相次いでいる。

もっとも尊い「生命の誕生」にたずさわる者たちが、半ば「いらぬ茶々」、さらには「加害側」の名誉欲のために仕事を追われ、あるいは志を断念させられる状況は健全とは言えない。一部の声高な人のため、ではなく出来る限り多くの人のため、そして正しい選択をしている人のため、しかるべき人が働き、動ねばなるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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