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戦後の所得税による税収推移

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 申告書の記述。最近ではe-taxのサイトで自動計算をしてくれるので楽だが

国の予算のうち収入にあたる税収の多分を占める、個人に対する主な国税となる所得税。言葉通り所得に対して課税される国税でもあることから、その動向は経済を中心に各方面で連動する、あるいは状況の裏付けとなるものである。そこで申告所得税・源泉所得税双方における所得税による税収の推移を、国税庁の公開データから確認していく。

簡単に用語の説明をしておく。「源泉所得税」とは名前の通り、最終的な所得の受け取り方に手渡される前に引かれるタイプの所得税。大抵は就労先の企業があらかじめ徴収しておくことになる。また預貯金の利子や所有株式の配当なども源泉が行われている。多くの場合、源泉徴収がされていれば、年末調整をしてもらうことで、自ら確定申告はしなくても済む。

一方「申告所得税」は納税対象者が自ら申告(確定申告)をして納税額を確定するタイプの所得税。自由業・自営業の類は大よそ確定申告を自ら行うことになる。

まず最初に示すのは、申告所得税分における、課税対象となる所得額の推移。要は収入から給与所得控除(経費のようなもの)を差し引いた、所得税がかかる対象となる部分の金額。税収そのものではないことに注意。

日本では累進課税が導入されているので、一人当たりにおいて額が大きくなればなるほど税率も上がる。また控除額の問題はあるが、概して申告者の収入が多ければ多いほど、対象額も増えるので、経済の発展・活況ぶりを示す一つの指針ともなる。当然国庫側から見れば、この額が大きいほど多くの申告所得税を得られるので、大きいにこしたことはない。

↑ 申告所得税用課税対象所得金額(兆円)
↑ 申告所得税用課税対象所得金額(兆円)
↑ 申告所得税用課税対象所得金額(兆円)(2001年以降)
↑ 申告所得税用課税対象所得金額(兆円)(2001年以降)

バブル期までほぼ一直線に伸びる様子、そしてバブル崩壊と共に落ち、その後活況期と不況期を交互に経ながらも漸減。直近の金融危機直前まではいくぶん持ち直しを見せたものの、金融危機と共に下落。リーマンショック後下落度合いは緩やかになり、2012年からようやく動きは上昇に転じ、2013年では大きな伸びを示しているのが分かる。直近となる2014年ではやや頭を垂れてしまっているが、後述する源泉所得税が大きく増加し、所得税の税収総額は前年比で増えている。

またそれと同時に、日経平均株価同様、申告所得税の対象となる所得金額は、バブル時がピークで、それを超える機会はまだ得られていないとの事実もあらためて認識できる。

もっともこれはあくまでも申告所得税対象に限った所得額。日本では所得税による税収は多分に源泉所得税が占めている。そこで申告所得税と源泉所得税(それぞれ各種加算税、重加算税など含む)を合わせた、所得税全体の税収推移を示したのが次のグラフ。源泉所得税は主に企業への従業者、申告所得税は自由・自営業者や退職者で占められるため、就業スタイルの大よその目安になる(一人一人税額は異なるため明確な比率換算に意味は無い)。

↑ 所得税税額推移(兆円)
↑ 所得税税額推移(兆円)
↑ 所得税税額推移(兆円)(1980年以降)
↑ 所得税税額推移(兆円)(1980年以降)

申告所得税用の課税対象金額同様、バブル期に最大値を示し、その後は大きく値を減らし、その後何度か復調の機会はあるが、バブル期を超えた所得税による税収総額になることは現時点では無い。

金額によって税率の違いはあるが、所得税額が所得そのものと密接な関係にあることを考えれば、これらの額の推移がほぼそのまま経済の活況感に連動していると見ても、あながち間違いではない。景気が良くなり、市場を回るお金の額が増え、所得が積み増しされれば、それだけ税額も増えていく。景気の活況化は税を集める側にとっても死活問題である。

また直近の動向に限れば、金融危機ぼっ発以前から失速の気配を見せているが、大きく減退したのはやはりリーマンショック以降。復調機運も震災や歴史的円高によって頭を押さえられてしまっている。2014年は金融危機ぼっ発直前の水準にまで回復している。消費税引き上げに伴う消費減退などの大きなマイナス要因がありながら、ここまで回復したのは注目すべき動きに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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