親世代との同近居実情・現在同居中は5%、同居OKは13%、近居なら15%
現在の親世代との居住関係は!?
居住環境や経済的観点、子供の世話や介護など、さまざまな問題の観点で、親子二世代による同居や近居が注目を集めている。その実情や思惑を厚労省が2015年10月に発表した、人口減少社会に関する意識調査結果(2015年3月6日から9日にかけてインターネット経由で実施。有効回答数3000人。男女構成比は1対1。年齢構成比は15~29歳、30代、40代、50代、60~79歳の仕切りで均等割り当て。その後国勢調査の地域・性別・年齢人口構成比に応じたウェイトバックを実施)から確認する。
次に示すのは調査対象母集団において現在すでに同居や近居をしているか否か、していなければ意向はあるかについて尋ねた結果。すでに近居をしている人は意向者も合わせ「近居〇・同居×」に該当する。
現在すでに同居中の人は5.1%。同居はしていないが意向がある人は12.7%。他の調査結果でも同居希望・すでにしている人の割合・世帯は少数派となりつつある動向が確認されているが、今件でそれが裏付けられる形となった。一方、近居希望・すでに近居をしている人は15.2%。奇しくも、同居・近居いずれの意向もない人と同率である。
他方、独身で結婚意向が無い人が1割ほど、分からないとする人も2割強。同居・近居問題に関して、別の方向性で論議に参加しない・できない人もいれば、色々と思うこともあり意見を留保したい人も少なからずいることになる。
これを属性別に確認したのが次のグラフ。
若年層で「分からない」「結婚意向無し」の回答率が高めに出ているのは意外。今件調査は同居・近居に係わる話ではあるが、はからずしも若年層の結婚願望に関する動向も確認できたことになる。
それを除くと近居希望は中堅層に多く、高齢層になると同居意向が強くなる。若年層でも男性は2割前後、女性も1割強はすでに同居・同居希望を示しており、一部で言われている「同居スタイルはすでに全否定」との話とは少々事情が異なる実態がある。
一方で性別動向をよく見ると、男性は同居を望む声が強いのに対し、女性はむしろ近居を望み、また同居も近居も否定する声が強い。実際に同居をすることになれば、負担が大きくなるのは概して女性であることから、その負担を懸念してのものと考えられる(他調査でも類似傾向の結果が出ている)。
なぜ同居・近居を望むのか
それではなぜ同居や近居を望む・しているのか。その理由を同居・近居をしている・したい人に聞いた結果が次のグラフ。
もっとも多い意見は「親の安否確認」で46.1%。一人暮らしをしている親世代へは特に、健康管理などの観点で安否を気遣う意味での同居・近居をしている、したいとの意見となる。次いで「親の介護」が続くが、意味合いとしてはほぼ同義。
次いで多いのは「育児の手伝いへの期待」で26.5%。ほぼ同率で「家事などの手伝い」が続いており、子を持つ世帯の人的補助への期待が同居・近居の理由となっている。そして「経済負担の軽減」も、多分に同じ意味を有する。
これを回答者の属性別に見たのが次のグラフ。
回答者が若いうちは家事や育児の手伝い、経済的負担減への期待が大きい。特に女性の30歳未満では育児の手伝いへの値が突出している。そして歳を経るに連れて、親の介護と安否確認の値が大きくなる。実質的には親に何らかの援助を期待できるのは回答者自身が30代から40代までで、それ以降はほとんどが安否確認・介護のための同居・近居であることが分かる。
同居・近居の理由は実世帯によりケースバイケースに違いないが、全体としてはこのような意向・理由を持って行われている、あるいは意向がある。この現状は、今後の住宅関連問題を精査する上で、知っておいて損は無かろう。
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