近居は浸透しているのか、「高齢者同士の夫婦世帯や一人身高齢者」と「その子供世帯」との距離関係を探る
同居でも無く、二世帯住宅でも無く、しかし遠距離でも無い、個々のプライバシーを尊重しながらも手の届きそうな距離関係に住まう「近居」なる居住スタイル。高齢者の親とその子供の間で増えつつあるとの話だが、どのような状況なのだろうか。その実情を総務省統計局による定点調査「住宅・土地統計調査」の公開値から確認していく。
具体的には高齢者側の世帯を「高齢(65歳以上)単身者世帯」と「夫婦とも65歳以上の高齢者世帯」の2ケースに絞り、それらの高齢者が居る世帯と、その高齢者の子供の居住地との関係について、直近となる2013年分、そして過去の計測結果となる2008年分・2003年分とを合わせ取得。各種計算を行った結果が次のグラフ。
概要的には「同居世帯は減少」「片道1時間未満の距離は増加」「片道1時間以上は減少」「子は居ない世帯は減少」の動きは両種類世帯で起きている。同居が減り、近居が増え、遠居(とでも呼ぶのだろうか)は減っている。ちなみに(徒歩で)片道1時間とは不動産界隈の表現では4.8キロ程度と定められているので、直近では(同居も含め)高齢者のみ夫婦世帯では6割、単身高齢者世帯では5割が、大よそ5キロ圏内に子供の住宅が存在していることになる。
「近居」の定義は法的な形でのものは無く、自治体や不動産企業によってまちまち。UR(独立行政法人都市再生機構)では両世帯の属する集合住宅のそれぞれの近しい場所の端から端までの距離が2キロ以内と定義している。東京都千代田区では近居の概念に近い居住スタイルへの補助制度「次世代育成住宅助成」に関して同一区内での居住を前提としている。また新潟市では「子育て支援 健幸すまいリフォーム助成事業」の一環として「親子近居世帯」の企画があり、条件として両世帯間の直線距離が1キロ以内との設定を提示している。
「住宅・土地統計調査」では近居の定義はしていないが、仕切り分けや概要報告書の文言から察するに片道で徒歩1時間未満と見なすと、上記の通り直近では(同居も含め)高齢者のみ世帯では6割、単身高齢者世帯では5割が近居に該当することとなる。またより厳密に片道15分未満(距離ならば大よそ1.2キロメートル)とした場合は、(同居も含め)高齢者のみ夫婦世帯では3割、単身高齢者世帯では1/4が近居に該当する。
国や自治体、企業もライフスタイルの実情を見据え、高齢者世帯とその子供世帯による同居が今後も少なくなることは必然であると認識した上で、社会福祉面ではその代替として、該当世帯自身の要望として近居の需要が増えていることを踏まえ、さまざまな近居を促す施策を打ち出していくものと考えられる。それに連れて近居的な距離感を置いた高齢者世帯とその子供の世帯はさらに増加していくことになることは容易に想像できる。
あるいは将来的に、高齢者世帯とその子供世帯それぞれが必要とするインフラの違いを考慮し、高齢者専用集合住宅とその子供専用集合住宅について、それぞれを一定距離話す形で提供する住宅計画も施行されるかもしれない。
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