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米国の「未婚の母」による出生率の実情を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 米国の出生率を支える非嫡出子による出生率。その動向は……

米国の出産数の4割は未婚の母によるもの

先進国における出生率動向の鍵の一つとなるのが、未婚の母による非嫡出子。アメリカ合衆国ではこの値が高いことで、出生率全体が底上げされている現状がある。その実態を同国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)内にある人口動態統計レポート(National Vital Statistics Reports)から探る。

次に示すのは各種データを抽出して算出した、「各属性の出産数のうち、結婚していない女性によるものの割合」。例えば最新データとなる2013年ならアメリカで出産した子供の40.6%は「未婚の母」によるもの(婚外子、非嫡出子)となる。

↑ アメリカの主要人種別「婚外子出生率」
↑ アメリカの主要人種別「婚外子出生率」

日本では2%前後でしか無い婚外子出生率だが、アメリカでは全体で4割、出生率の一番高いヒスパニック系で5割強、黒人では7割強に達する。これはアメリカをはじめとして諸外国では「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)ことが社会的・文化的に容認されつつあること、国や社会全体が支援する仕組みを構築しつつある(あるいは個人の「何とかなるだろう」という楽観的な考え方、「そうせざるを得ない」という悲観的状況の増加など)が要因にある。

なおアメリカ合衆国国内のアジア・太平洋圏系の「婚外子出生率」は10%強のまま推移しており、過去からの推移も含めて他の属性と比べて極めて低い。文化的な発想・結婚に対する考え方の違いが表れているのかもしれない。

人種の差が出産年齢傾向の差に表れる

各人種の年齢階層別出産者人口比を確認しても、ヒスパニック系の盛んな出産動向が見て取れる。

↑ 各人種・各年齢階層別、出産比率(アメリカ、2013年、未既婚問わず)
↑ 各人種・各年齢階層別、出産比率(アメリカ、2013年、未既婚問わず)

白人は25~34歳が出産のピーク。それに対し黒人は20~29歳、ヒスパニック系も20~29歳がピーク。ヒスパニックは特に30歳以降でも白人に近い出生率を示している。つまり出産頻度の高い年齢が幅広いことになる。またアジア・太平洋諸国ではピークが白人と同じく25~34歳だが、35~39歳でも6.7%と高めの値を示しており、やや高齢の出産も盛んであることが分かる(各属性では30~34歳、35~39歳、40~44歳の各層で最大の出生率を示している)。

さらに例えば18~19歳では白人が3.5%なのに対し黒人は6.7%、ヒスパニックは7.1%などの高値を示していることからも分かる通り、20歳未満の出産も概して黒人・ヒスパニックの人たちによるものが多い。アジア・太平洋諸国では逆に少なくなっているのはやや意外なところか。

日本は「未婚」と「未出産」がほぼイコール。そのため、未婚化・晩婚化が進めば、合計特殊出生率も低下していく。一方で先進諸国の一部で合計特殊出生率が増加しているのは、主に今回のアメリカのように「婚外子出生率の増加」「ヒスパニックなど出生率が高い傾向にある一部移民の増加」の2要因によるところが大きい。

日本の場合は元々社会文化として「婚姻」と「出産」が結びついており、それが維持されたまま「未婚化・晩婚化」が進んでしまったのが少子化の一因といえる。この「未婚化・晩婚化」の要因としては「経済的な不況」「若年層に対する労働市場環境の悪化」など複数の要因が挙げられているが、その他に「結婚のスタイル」の変化、つまり「見合い結婚の減少」が遠因であるとの指摘もなされている。

「未婚の母」に関する問題は本人らの意志はもちろん、文化的側面、社会的側面、人口の維持観点など、多方面から考慮すべき問題に違いない。その上で、アメリカの実情は、大いに参考になるものといえよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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