Yahoo!ニュース

家賃滞納は現状でどれぐらい発生しているのだろうか(2014年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 昔のドラマや映画では家賃滞納の状況はよく見られたが……

直近では1/71で2か月以上の家賃滞納が発生

賃貸住宅の家賃は一か月ごとに家主に支払われるが、色々な事情で滞納が発生することがある。その度合いは現状でどれほどなのだろうか。賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」が定期的に実施している調査「賃貸住宅景況感調査日管協短観」の結果から、その実態を見ていくことにする。

月末、25日、10日前後など、物件によって日取りは異なるが、賃貸住宅の家賃は原則で月1回支払いが行われる。現在では家賃支払い方法の多分は自動引き落としだが、銀行口座残高の調整ミスで残高不足から家賃の引き落としを行えず、無意識のうちに家賃を滞納してしまうトラブルもある。

そこで「(調整ミスの可能性がある)月初全体の滞納率」「(ミスの可能性が排除された)月末での1か月滞納率」「(状況が悪化した、連続した滞納状態の)月末での2か月以上滞納率」それぞれについて、直近値を元にグラフ化したのが次の図。

↑ 家賃滞納率(2014年4月~2014年9月)
↑ 家賃滞納率(2014年4月~2014年9月)

残高調整ミスは頻発する事案。直近計測期において、全体では7.0%も発生している。大体14世帯に1世帯の割合である。一か月間丸々の滞納となると2.9%、2か月連続するという「危険信号」レベルになると1.4%の域に達する。

2か月以上の滞納率1.4%。これは「賃貸住宅の71軒に1軒は現在2か月以上家賃を滞納している」状況となるわけだが、切り口を変えて「通常支払い率98.6%」と表記すればそこそこ良い方に見える。

ただしリスクは低いに越したことは無い。例えば5階建・14列(=70部屋)の大型団地なら、1個あたりほぼ1世帯は2か月以上の家賃滞納世帯が存在する計算になるからだ。そして2か月もの滞納状態ともなれば、状況がさらに悪化し、未回収(+管理会社の費用持ちでの原状復帰作業)となる可能性は高い。

関西圏は高めだが……

首都圏・関西・その他地域で比較すると、大よそ関西圏の方が滞納率は高い。この関西圏に限り、経年変化をグラフ化したのが次の図。

↑ 家賃滞納率推移(関西圏)(~2014年上半期)
↑ 家賃滞納率推移(関西圏)(~2014年上半期)

直近期では関西圏でも「月初全体の滞納率」「1か月の滞納率」は前半期と比べれば改善している。ただし状況的には最も望ましくない「2か月以上の滞納率」がここ暫くは減退していたものの、今回上昇に転じている点は留意をしておかねばなるまい。

「月初全体の滞納率」が10%内外。これは10世帯に1世帯が滞納を経験していることになる。うっかりミスが多いのか、それとも銀行残高の調整が難しいほど家計のやりくりが厳しいのか。今件データだけではそれらを判断することは難しい。ただ、これが直近半年だけの動きでは無く、ここ数年のものであり、イレギュラーな傾向では無いことは事実。タイミング的には2011年下半期、つまり震災後、さらには大阪府・大阪市の施政体制が変化した時期に上昇をはじめているのが、気になるところではある。

現在賃貸住宅市場は借り手市場ではあるが、賃貸住宅利用者は「住まいを借りている立場」であることを忘れてはならない。理由はともあれ、万一にでも家賃滞納を起こしてしまったら、すぐにでも家主、管理会社に一報を入れ、最善を尽くしてほしいものだ。

■関連記事:

独身働き人の賃貸生活、家賃はおいくら?

50年余の民間・公営賃貸住宅の家賃推移をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事