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さまざまな視点で見る、正規・非正規社員比率(2014年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 身近な小売店舗の多くは非正規のアルバイト店員が支えている

男性の正規社員率78.9%、女性は42.3%

就労関連の話では多々スポットライトがあてられる非正規社員。現状では働き人のうちどれ位の割合が非正規社員なのだろうか。厚生労働省の定点観測的調査の一つ「国民生活基礎調査の概況」を基に確認をしていく。

今件では役員以外の働き人(雇われている人。自営業者や家族従業者、内職者などは含まれない)における、「正規社員・職員」と「非正規社員・職員」の比率を算出したものを確認していく。両者の定義としては「正規社員…正社員。一般社員」「非正規社員…パート・アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託など」となる。

次に示すのは男女別々の、正規社員と非正規社員の比率。性別で雇用様式・環境が大きく異なるので、あえて別途で計算している。

↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(男性)
↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(男性)
↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(女性)
↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(女性)

男性は10代では正社員率が3割台。20代前半では6割台となるが、まだ非正規社員率は相当なもの。これは中卒・高卒者による就労以外に、高校生や大学生によるパートやアルバイトも含まれるため。20代後半以降は8割から9割と高い値を占め、60代を過ぎてようやく定年退職によって正規社員率が下がり、非正規社員率が上昇する。しかし65歳以上でも3割強は正社員の立場を確保している。

一方女性は若年層でも正社員率は男性より低く、20代後半がピーク。これは「寿退社」などによる退社で若年女性正社員が辞めていくことに加え、世帯を持った主婦が子育てのさなかにパートなどの非正規労働に就き、値が底上げされるため。時としてこの数字だけを掲げて「女性の非正規雇用率が高いのは差別的雇用の結果だ」とする論説を見かけるが、男女それぞれの就労事情の認識が欠けているだけの話でしかない。

前年からの変化を確認する

前回年に当たる2012年分との変移を算出した結果が次のグラフ。

↑ 15歳以上の役員以外雇用者における正規構成比率変移(2012-2013年、男女別)
↑ 15歳以上の役員以外雇用者における正規構成比率変移(2012-2013年、男女別)

中堅層でいくぶん正規社員率が落ちているが、それ以上に若年層・シニア層での上昇具合が目に付く。また中堅層で特に女性の正規雇用比率が落ちている=非正規雇用率が上昇しているのは、どちらかといえば正規雇用が減ったのではなく、非正規雇用が増え、結果として相対的に非正規雇用比率が増加した結果といえる(「非正規社員の現状をグラフ化してみる」が参考になる)。

学歴で正規・非正規率に変化は……!?

最後に示すのは、回答者の学歴別正規・非正規率。世間一般のイメージ通り、高学歴ほど正規雇用率は高い。男性では大学・大学院卒で9割に近づいている。

↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(男女・学歴別)
↑ 15歳以上の役員以外雇用者の正規・非正規構成比率(「勤め先での呼称不詳」含まず)(2013年)(男女・学歴別)

女性の場合は既婚者就労の場合、本業として・世帯主としての就労ではなく、家計をサポートするためのパート・アルバイトの場合が多い。今件値のみで「女性は押しなべて非正規社員の比率が高い」と嘆く必要はない。条件が異なるのだから、違う結果が出て当然。無論女性にも、結婚した上で本業として就労する人も大勢いる。

世間一般には「男性21%・女性58%は非正規社員」との部分にのみ注目し、労働市場の問題として提起されることが多い。しかし実態は女性のパート・アルバイトが多分に値を動かしている実態を忘れてはならない。

さらにいえばこの非正規社員比率の換算には、役員や自営業者が抜けている。仮にこれらの人たちも計算に含めれば、全体に占める非正規社員比率はさらに落ちることになる。この点もまた、十分以上に留意しなければならない。

■関連記事:

なぜ非正規社員として働くのか? その理由を尋ねてみた(2014年)(最新)

正社員と非正社員の賃金差は?…雇用形態別の平均賃金をグラフ化してみる(2014年)(最新)

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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