売れ行き不振は前世紀から・百貨店やスーパーの売上高推移

↑ 今も百貨店が憧れの場所には違いないが……

低迷続く衣料品と住関品

かつては憧れの場所、特に子供にとっては一日中居ても飽きない場所でもあった百貨店だが、今やその勢い、商品やサービスに対するきらびやかさは見られない。需要や流通の大きなが相対的立ち位置を後退させているからだ。しかしそれでも多彩な商品が一堂に会する、言葉通り「百貨」が集まるこれらの店舗には、不思議な魅力がかもされる。その店達の営業業績状況について、経済産業省・商業動態統計調査の発表結果を元に、確認をしていく。

その年次動向だが、現時点では年ベースで2013年分までの値が公開されている。

↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)

箇条書きにグラフから読み取れる動向を記すと次の通りとなる。

・1990-1991年までがピークで、それ以降は下降、ほぼ前年比マイナスを継続している。つまり売上額は減少の一途をたどっている。

・飲食料品は他分野と比べれば下げ幅が小さい。マイナス5%未満に収まっている。

・住関品や衣料品は1992年-1993年の低迷時期を皮切りに、約5年のサイクルで大幅な減少を見せている。

・衣料品は特に下げ幅が大きい。住関品も同様の傾向だったが、直近の下落期では衣料品の下げ方が著しい。リーマンショックは高額商品が多い衣料品に大きな影響を与えている。

・衣料品、食堂・喫茶の2008年-2009年の下げ幅はこれまでのパターンを逸脱するほどの勢い。

・2009年は全分野でマイナス、2010年もマイナスだが、下げ幅は縮小。

・2011年は震災の影響にも関わらず、年ベースでは総売り上げ・衣料品・飲食料品で下げ幅を縮小している。

・2012年も引き続き金額では下げているが、下げ幅は縮小。衣料品では実に1996年来振りに前年比でプラスを示した。

・2013年は食堂・喫茶のみプラス。衣料品は再びマイナスに転じたが、飲食料品や住関品などの下げ幅は前年より縮小した。

これらの動向からは、チェーンストアの低迷は昨日今日に始まった話ではなく、1990年前半以降継続中の問題であることが分かる。特に住関品・衣料品は1990年代後半以降、2004-2005年の好景気をのぞけば前年比マイナス3%から6%の範囲で低迷した状態がしばらく続き、両分野が深刻な状況にある。

2007年から始まる金融危機、さらに2008年のリーマンショックによる景気後退が原因の売上高の減少ぶりは、少なくとも1988年以降において類を見ないほどのもの。2010年に入って下げ幅はようやく縮小の雰囲気が見え始めたが、2011年の震災で再び頭打ち、そして2012年以降はようやく復調の気配が感じられる。

また、注目したいのは「食堂・喫茶」。金額が小さく、他の分野よりも直接客足に影響されやすい分野だが、こちらも衣料品同様の大きな下げが生じている。理由の一つは顧客の消費性向の変化(外食離れ)があるが、それと同時に店舗そのものへの来客数が大幅に減少している可能性を示唆している。

消費税率改定で生じる大きな動き

百貨店などでは2014年4月に実施された消費税率改定に伴う駆け込み需要と、その反動による動きが著しい。次に示すのは月次の売上動向だが(年次ではまだ直近の消費税率引上げに伴う動きが反映されていない)、2011年3月に発生した震災による減少とその翌年の反動による上昇をはるかに超える、大幅な上昇(駆け込み需要)と、税率改定後の反動が確認できる。

↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)(2011年1月-2014年4月)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)(2011年1月-2014年4月)

中でも耐久消費財が多分に含まれる「その他(住関品など)」では前年同月比で33.9%という、異様なまでの上げ幅が確認されている。特に大きな動きを示した2014年3月と4月に限り、売上高前年同月比を抽出したのが次のグラフ。

↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年比、既存店)(2014年3月-2014年4月)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年比、既存店)(2014年3月-2014年4月)

耐久消費財が含まれ、消費税率改定前の「駆け込み需要」の対象となりやすい「その他(住関品など)」は特需として33.9%の上昇幅を示したが、その後の反動が生じる4月では12.1%の下落で済んでいる。

他の項目も似たようなもので、食堂・喫茶を除けば税率改定前の特需による上昇分より、4月の反動分の方が変化率は小さい。税率改定による消費性向の減退は、直前の駆け込み需要を食い尽くすほどのものでは無く、案外軽微なものとして留まったことになる。唯一食堂・喫茶では反動の方が大きいが、これとて金額面では微細なものに済むことから、百貨店全体に与える影響はあまりないと見て良い。

これらのデータからは、今世紀に入ってから特にクローズアップされている百貨店などの低迷振りは、「1990年代以降露呈していた構造的な問題による売上低迷」に加え「昨今の景気後退による加速化」が加わった、二つの要素によるものであることが理解できる。2007年以降の景気後退、さらには2008年のリーマンショックはチェーンストアの業績悪化の唯一の原因では無く、あくまでも既存の現象を加速化させた一要因に過ぎない。仮に2007年以降も金融危機が発生せずに好景気が続いていたとしても、現状のような状態は発生したものと見て間違いない。

人口そのものの減少や可処分所得の漸減も、売上減少の理由として考えられる。しかしそれでは、GDPの増加期や好景気の時に、売り上げが伸びないことへの説明がつかない。むしろ今件の百貨店などにおいては「コンビニやディスカウントストアなどの台頭」「インターネット通販の普及」「家族構成の変化」「消費者の消費性向の変貌」など、競合相手の勢力拡大をはじめ、刻々と変わりゆく周辺環境の変化に対応し切れなかった点に、昨今の売上低迷の起因があると考えたほうが道理は通る。

消費税率の改定をきっかけに大きな売り上げの変動を示した百貨店界隈。夏前後には消費税率関連の消費性向減退分はほぼなくなりそうとの観測もある。この変動期を機会としてとらえ、ダイナミックな施策を望みたいところだ。

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