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コンビニのたばこ販売額は3割近く

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 一番目立つ場所におかれることが多いコンビニでのたばこだが…

総売り上げの1/4強を占めるたばこ

健康志向の高まりや値上げに伴い、喫煙者は年々減少を続けている。しかしコンビニでのたばこ販売はむしろ盛況のように見える。今回はローソンのアニュアルレポート(統合報告書)を基に、コンビニでのたばこの販売実態を垣間見ることにする。

次に示すのはローソンの総売り上げにおける、主要商品区分別の売上シェア推移。ファストフードは米飯や麺、調理パン、弁当、カウンターフードなど。日配食品はベーカリー、デザート、アイスクリーム、生鮮食品。加工食品は飲料や酒類、加工食品や菓子。そして非食品は雑誌や日用品、本などで構成されている。

↑ 商品群別売上高構成比率推移(連結・チェーン全店、ローソン)
↑ 商品群別売上高構成比率推移(連結・チェーン全店、ローソン)

ほぼ一様に「たばこ」の売上シェアは増加中で、コンビニにおいて「たばこ」は年々重要な商材として位置づけられているのが確認できる。単に商品そのものの売上だけでなく、来店動機を持たせ、ついで買いを期待できるのもポイントだ。また2010年10月にたばこの大幅値上げが実施されたこともあり、2011年以降のシェアはさらに拡大、2013年(2012年3月~2013年2月)では全売り上げの26.1%にまで達している。

シェアとしては10%ポイント強の増加だが、ローソンの売上全体が伸びているため、売上そのもの伸びは3倍近くに達している。

↑ 商品群別売上高推移(連結・チェーン全店、ローソン)(億円)
↑ 商品群別売上高推移(連結・チェーン全店、ローソン)(億円)

値上げ後に大きく飛躍した昨年・一昨年と比べれば成長は鈍化しているものの、直近では前年比260億円ほどのプラス。金額そのものは大きく伸び、売り上げ全体に占めるシェアも増加している。

たばこは儲かるのか?

売上そのものは漸次増加中のたばこだが、実は他の商品と比べると儲けが出にくい商品でもある。いわゆる「粗利益率」がかなり低い。

↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)
↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)

他のカテゴリの粗利益率が改善しているのに対し、たばこを含む「加工食品」だけが元々の値が低く、しかも低迷を続けている。最新のレポート中ではたばこの粗利益そのものに関する直接的言及は無いものの、「たばこを除いた」などの表現が多数使われており、たばこが特殊な粗利益率を示していることがうかがえる。要は「たばこのセールスが伸び、『加工食品』のセールスに占める比率が上がったため、粗利益率の低いたばこの影響が大きくなり、『加工食品』全体の粗利益率も落ちてしまった」次第である。

一般的にはたばこの粗利益率は約10%とされており、通常の商品の1/2~1/3程度。小さな体積で高単価なこともあり、大いに儲けが出そうな雰囲気はあるものの、実際にはほぼ同じ価格のお弁当と比較すると、2倍から3倍の数量を売って初めて同じ利益が得られる計算になる。たばこは「売上そのものには貢献しているが、利益を生み出しにくい商品」なのである。

しかも今後はたばこ販売全体の売上減退が容易に想定できる状況にある。コンビニでもその流れに沿う形で、売り上げが落ちるのは道理というもの。ローソンの今レポートでも年後半にかけて、その兆しをうかがえる表現が相次いで確認されている。「売上の多数を占め、来店動機の重要な要素ではあるが、利益が出にくい」という、短所も併せ持った重要商品のセールス減退が目に見えるようになり、コンビニ大手は代替品となる商品の開発に躍起となっている。

↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(コンビニに限らず国内全体)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(コンビニに限らず国内全体)
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その一つがドリップコーヒー。売上はまだ少額だが、来店動機には十分つながり、利益率も高い。しかもたばこのように、やもすれば反発を受けるような商品ではなく老若男女に受け入れられ、季節を問わず販売することが出来る。各社とも注力しているのも理解はできる。

コンビニにおいてたばこがこれからも重要な商品であることに違いはない。しかし今後少しずつ環境の変化と共に、その立ち位置を微妙に変えていくことになるだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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