「4割が料理雑誌離れ」という試算…料理本・雑誌が売れない理由はレシピサイトにあるのかも

↑ 料理を作る人には欠かせない料理本や料理雑誌だが……

雑誌不況の中で料理雑誌も売れていない

新聞同様、紙媒体の代表として語られることが多い雑誌はセールスを落としている。今回スポットライトを当てるのは、その中でも料理のコツやレシピを中心にした定期刊行の料理雑誌、そして料理本。次のグラフは主な料理雑誌における、社団法人日本雑誌協会が四半期毎に公開している「印刷証明付き部数」(第三者によって印刷冊数を証明された部数)の動向。

↑ 女性向けレシピ系雑誌印刷実績推移(部)
↑ 女性向けレシピ系雑誌印刷実績推移(部)

「栗原はるみ haru mi」はそのカリスマ性と雑誌ならではのコンテンツの豊富さもあり部数を維持しているが、それ以外の3誌は押し並べて減退傾向にある。特に「オレンジページ」と「きょうの料理ビギナーズ」の下げ方が著しい(「オレンジページ」と対で語られることが多い「レタスクラブ」は、2009年後半から部数を非公開化しているので、今グラフでは除外している)。

単に「雑誌そのものの不況だから」で片づけても良いが、やはり何か特定の原因も考えられそう。特に「栗原はるみ haru mi」の堅調さがポイントとなりそうだ。

レシピサイトの利用者は8割、うち5割は「料理本や料理雑誌を買わなくなった」

次に挙げるグラフはクックパッドが2013年7月に発表した料理、レシピサイトに関する調査結果。インターネット経由で女性に対して行われたものだが、調査そのものは専門会社が行っており、「レシピサイトの会社調査だから偏りがあるのでは」という懸念は要らない。

それによると調査対象母集団のうち81%がレシピサイトを利用しており、その理由としてレシピについて「豊富」「無料」「いつでも検索可能」「手軽に簡単料理のが手に入る」など、一般の料理雑誌や料理本では提供しえない、難しい機能が使えることを挙げている。

↑ レシピサイト利用理由(複数回答、利用者(全体の81%)限定)
↑ レシピサイト利用理由(複数回答、利用者(全体の81%)限定)

当然これらのメリットに慣れ親しみ満喫するに連れ、レシピや料理雑誌に対する姿勢も変わってくる。レシピサイトを使うようになって変化した事柄を挙げてもらったところ、第二位の項目には「料理本や料理雑誌を買わなくなった」が入っている。その率、実に53%。

↑ レシピサイトを使うようになって変化したこと(複数回答、利用者限定)
↑ レシピサイトを使うようになって変化したこと(複数回答、利用者限定)

単純計算をすると、全体の81%がレシピサイトを用いて、そのうち53%が「料理本や料理雑誌を買わなくなった」のだから、調査対象母集団全体比では43%という試算値が見いだせる(0.81×0.53≒0.43)。つまり「女性の43%はレシピサイトが便利なので、料理本や料理雑誌を買わなくなった」ということになる。

今件はインターネット経由の調査であること、「買わなくなった」が「一冊も買わなくなった」「あまり買わなくなった」など複数の解釈ができることから、単純に「料理雑誌の購入者の4割が、レシピサイトの影響で『料理本・料理雑誌離れ』をした」とは言い切れない。とはいえ、実際のレシピサイトの利便性や、紙媒体の限界、そしてレシピとインターネットの相性の良さ(写真を豊富に掲載できる、コミュニティの形成も容易、多様な検索性など)を併せ考えると、この4割という値もあながち的外れではない気もする。

ネットにある情報はわざわざ本では買わない。限定情報だからこそ雑誌を手に取る

そこで最初に挙げた「栗原はるみ haru mi」の話となる。なぜこの雑誌は他誌のような部数落ち込みを見せないのだろうか。

同誌では他の料理雑誌には無い、「栗原はるみ」嬢ならではのレシピが豊富に掲載されている。同誌の公式サイトにもレシピは掲載されているが、雑誌掲載分のごく一部分でしかない。他の料理雑誌が「珍しい」「カロリー控えめ」「特定の素材やテーマを取り入れた」料理に留まり、他の雑誌でも、そしてネット上でも手に入る情報なのに対し、今誌は著名料理研究家の栗原はるみ氏による、「栗原はるみ haru mi」でしか取得できないレシピが多数掲載されている。このオリジナリティがあるからこそ、他の料理雑誌が低迷する中でも、部数の維持が成されている。

インターネットでは手に入らない、雑誌ならではの情報。そしてカリスマ性のある執筆者や作品。これらのポイントは、料理雑誌界隈に限らず、他の雑誌市場においても、部数を維持、あるいは上乗せしている雑誌に共通するものである。

雑誌同士での争いに終始すれば良い時代は、とうの昔に過ぎ去っている。今はインターネットで容易に情報が取得できる現状を前提に、雑誌の構成をしなければならない時代。その対応を考慮した上でかじ取りが出来なければ、今後さらなる荒波にもまれて、多くの雑誌は姿を消していくことになるだろう。

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