COVID19パンデミックで浮き彫りになった政財界の腐敗

証人喚問されたNTTの澤田社長と東北新社の中島社長(写真:つのだよしお/アフロ)

日本の政治経済が腐敗まみれだ。街頭犯罪が少ないという意味では日本は一見「平和」な社会だが、政治経済の腐敗は街頭犯罪以上に多くの人を殺している。COVID19パンデミックでは、腐敗の結果として横行したデマで多くの人が命を失ったと考えられる。

政治も経済も腐敗

汚職は腐敗の一部の不法行為だが、腐敗行為自体は倫理的に問題でも現行法では取り締まれないものを多く含む。たとえば、森友学園では、現在のところ佐川元財務局長らの刑事責任は問われていないが、己の職権を利用あるいは示唆して不透明な手続きを進めたことが事実であれば、国民の一部ではなく国民全体、公共の福祉のために仕えるべき国家公務員としての規定・規範を逸脱する行為であり、倫理上の腐敗である。

腐敗は人命を奪い、人権を貶める行為である。2005年に発効した国連腐敗防止条約は序文で「腐敗は社会を多様な形で腐食させる陰湿な疫病である。民主主義と法の支配を弱体化させ、人権侵害をもたらし、市場を歪め、生活の質を侵害し、組織犯罪、テロリズム、および人間の安全保障に対する脅威を広める」と指摘している。

腐敗は人を殺す

腐敗に関与したことで自殺に追い込まれる人がいるのはわかりやすい事例だ。最近では森友文書改ざんを指示されたとする財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺に追い込まれ、遺族が国と佐川宣寿元同省理財局長を提訴している。遺族の主張が事実であれば、不正な手続きを指示し、利益を得た人間が彼を殺したようなものだ。

こうしたわかりやすい事例の一方で、腐敗は間接的な形で無数の人を死に追いやっている。

腐敗・汚職の問題は、端的には1)納税者や消費者のお金や機会を盗む行為であり、背信行為であることだが、より問題なのは2)政治、経済、社会のより効率的で公正なあるべき形を歪め、それにより3)中長期的に政治、経済、社会を衰退させること、である。

1の点は言うまでもなく、汚職にかかわった企業や政治家が、自分たちの経済的利益や幸福のために納税者、消費者、職員のものであるはずのお金やあるべき機会を盗んでいるということである。

たとえば、菅義偉首相の長男を使って総務省を接待した東北新社、同じく総務省や自民党幹部を接待したNTT、そしてそれらに応じた総務省職員や自民党幹部は、自分たちの経済的利益のために腐敗行為を行っている。彼らが弁明するように「業務に関する要請や要望は全くなかった」「記憶にない」「勘違い」だとしても、利益相反関係にある者たちが不透明な個人的コネで仲良くお食事会をするような間柄にあること自体、腐敗の温床であり、国民全体の利益のために奉仕すべき政治家、公務員としての背信行為である。

また、森友学園問題は、自分たちの思想に共鳴し自分たちを礼賛する森友学園を承認し、土地を融通することで安倍夫妻が己の承認欲求を満たした、つまり己の幸福のための腐敗行為であったといえる。文書改ざんを指示したとされる佐川元理財局長は、その後で出世を果たしているので、これが事実であれば、腐敗行為によって己の経済的利益と幸福の両方を満たしたといえる。

メディアも腐敗

森友学園問題にしても最近の接待問題にしても、刑事責任が問われるかどうかは捜査中、あるいは裁判進行中であり不明であるが、政治と法曹界もずぶずぶに腐敗している。

安倍元首相が定年延長して検事総長にしようとしていた黒川広務検事長は、賭博罪で略式起訴されている。しかもその賭け麻雀の相手が朝日新聞、産経新聞の社員であったというから、メディアの腐敗も深刻だ。

メディアの腐敗といえば、安倍元首相が各社大手メディア、新聞社を招いて行っていた食事会も指摘すべきだろう。そして、安倍政権は裁判所人事にまで影響を及ぼしていた。

権力の監視人として立法、司法、行政から独立しているべきメディアがその両者と賭け麻雀や食事会などといった、かなりお金のかかる行為で付き合っているというのは、市民に対する倫理上の背信行為であり、これもまた腐敗の一形態である。

政治の腐敗を糾弾すべき立場にある司法、行政、(検察は行政に属すが準司法的性格を持つ)、メディアも腐敗しているので、そもそも正しい情報が報道されているのか、司法が公正な判断を下すのか信頼できない。

メディアも公的機関も信頼できない

そして、腐敗や汚職の重大な問題はまさにこの「信頼できない」不信感を市民の間に広めてしまうことである。

それぞれ独立しているべき立法、行政、司法、メディア、経済が互いに金銭、あるいはより不透明な「友人」関係で繋がっており、それぞれが便宜を図ったりしていれば、それは2)のポイントである、政治、経済、社会のより効率的で公正なあるべき形を歪めることにほかならない。こうして、あるべき形が歪められていけば、市民はそのどれも信頼することができず、結果として問題を解決するために個人的な伝手を頼りに、政治家や経済人に「お願い」をせざるを得ず、さらに腐敗が横行する。そして、3)のポイントである、中長期的な政治、経済、社会の衰退が進んでいくのである。

日本の人々の政治不信は深刻だ。政治に期待している人がいないので、投票率が低い。現在の小選挙区制では選挙区で一人しか当選せず、二位以下の候補者への投票が全く反映されないので、組織票を動員できる自民党が全有権者の四分の一の得票で、議席の7割以上を占有できてしまう。そして、この「組織票」についても、各支持団体と政治家の間に腐敗があるのだから、選挙制度自体が腐敗まみれであり、それで選ばれる政治家も腐敗まみれである。たとえば、自民党の二階幹事長は、選挙応援してくれたら税金で桜を見る会に招待するのは「あったって別にいいんじゃないか」と豪語し、支持団体が「選挙やってくれたら予算つけるのは当たり前」と全く悪びれもせずに言い放っている。

腐敗を腐敗とも認識していない、腐敗した政治家が、腐敗した選挙制度によって選ばれ、司法、経済、メディアとの腐敗をさらに進めていく。市民が問題の深刻さに気づいたときには、それを断罪する手立てすら奪われているかもしれない。

腐敗により社会が衰退し、人が死ぬ

腐敗の最も深刻な問題は、中長期的に政治、経済、社会の衰退が進むことであり、それが無数の人々の命を奪うことである。世界全体で、腐敗により少なくとも100兆円、数百万人の命が直接的、間接的に奪われている。

日本でも、コネ採用、コネ承認、コネ受注によって納税者や消費者から盗んだお金、機会があれば死なずに済んだ人々がどれだけいるのだろうか

腐敗が進むとデマや陰謀論が広まる

腐敗は社会の危機にその猛威を振るう。

メディア、国家機関、経済、そして政治が腐敗していれば、そこからもたらされる情報を信用する人は減る。結果として、それぞれ自分が信じたいものを信じる状況になるので、陰謀論や科学的根拠のない眉唾情報にすがる。

COVID19パンデミックはまさに、こうした人々の政治不信やメディア不信を浮き彫りにするとともに、そもそも政治やメディアが事実として信用できないということを見せつけた。

台湾、韓国、ニュージーランドのように積極的検査を実施していれば、感染拡大や経済被害の長期化を防げたかもしれない。だが日本では、政治、メディア、医師、知識人が世界の成功例と逆行するPCR検査抑制論を主導していた。

市民にはPCR検査抑制が強いられていた一方で、政治家は無症状でもさっさと検査を受けて入院しているのだから、二枚舌であり、政治的権力者は優遇するなど、まさに腐敗である。

一部ではコロナウイルスが中国の研究所で作られただとか、製薬会社が作り出した、などという陰謀論も飛び交っている。しかも社会的権威のある人や知識人にもそれを信じ、デマを拡散しているケースが散見される。

社会にデマが広まり、知識人や専門家までもがそのデマに惑わされるのは、国家機関や政治、メディアが正しい情報を発信し、有効な政策を実施する機能を有していない、あるいは有していないとみなされているからだ

政治、経済、社会に腐敗が蔓延すると、不公正、不公平、非効率、デマが社会の様々な場所で弊害を生み、しかもそれを統治、取り締まりする公的機関にまでそうした弊害が及び、収拾がつかない状況になる。

腐敗を予防する方法は透明性の確保しかない

腐敗を予防する唯一の手立ては、透明性の確保である。透明性を確保するために公文書管理法や情報公開制度があるが、十分に機能しておらず、公文書は改ざんされ、情報は黒塗りで秘匿され、政治とメディアの腐敗の温床とも言うべき記者クラブは、質問すべきことを質問せず、政治家ともども不透明性の確保に執心している。

すでに多くの犠牲者を出しているCOVID19パンデミック関連に限って注視してみても、不透明なものばかりだ。しかもメディアも政治もそれを本気で糾そうとする気配が見られない。

  • アベノマスク納入業者(ユースビオ)はいったいどのような手続きで購入されたのか?誰が決済したのか?
  • なぜ世界の成功例と逆行するPCR抑制論が日本でだけ広まったのか?
  • 予見されていた医療崩壊が起こったのは、医師数不足のせいではないのか?
  • 日本医師会が医師数抑制を指導しているのは、医師間の競争を不当に抑制するためではないのか?
  • 政府が日本医師会の医師数抑制を許しているのは、日本医師会が自民党の支持団体だからではないのか?
  • なぜ政府は、ファイザー社製のワクチンを六回接種可能にするための注射器購入を進めなかったのか?
  • 「医療従事者向け先行接種」の病院はどのように決定されたのか?
  • 接触通知アプリCOCOAの不具合が何か月もの間放置されたのはなぜか?
  • 政府はアプリを開発した企業(パーソル プロセス&テクノロジー)、をどのように選定したのか?
  • なぜ政府はこうした納入業者選定プロセスや契約を開示しないのか?

国際的指数では日本の腐敗度は低い。多数の開発発展途上国、新興国が腐敗指数の平均を押し下げているためである。しかし、腐敗度が低かろうが高かろうが、それが改善されない限り、腐敗の犠牲者は出続ける。このまま日本の政治、政府、経済、メディアの腐敗が改善されることなく、国家やメディアに対する信頼がますます低下すれば、さらに多くの人が腐敗の犠牲として直接的、間接的に命を落とすことになる。すでに政府、政治、メディア、経済に自浄作用は無い。個人が徹底した透明性を求め、声を上げ、戦う以外に、腐敗を防ぐ方法は無い。