「安倍昭恵総理夫人」が名誉校長を務める神道小学校の国有地不正売却問題

安倍首相の国会発言と食い違う内容の昭恵夫人の発言。真相はいかに?(写真:ロイター/アフロ)

もともと「安倍晋三記念小学校」として寄付金を集めていたという、「瑞穂の國記念小學院」に対する異常な安値での不明朗な国有地払い下げ問題。大手メディアは大きく報道していないが、この問題は想定以上に国ぐるみの「スキーム」であった可能性が出てきている。

不明朗な国有地払い下げスキームについては下記の記事が詳しい。

『森友学園の国有地取得の収支』

『森友学園への不明瞭な国給付』

格安での払い下げどころか、現状では国有地を買った森友学園の国への収支はプラスである。つまり、森友学園はほぼタダで国有地を手に入れた上に、補助金によってトータルで利益まで得ているのだ。国が森友学園に対して「有益費」として約1億3000万円余を支払い、さらに建設中の建物が国によって「木質化」の先導事例に選定され約6000万円の補助金を得ている一方、土地の購入費用は頭金を除き10年分割とされたからだ。しかも、10年後に全部払い終わった時点でも森友学園の国に対する収支がプラスになる計算だ。

一番おかしいのは、小学校用地が決まっていない段階、それも異常な短期間で国有地払い下げが承認された点だ。しかも、財務状況やカリキュラムなどの懸念点があるとして、大阪府は4月開校予定のこの小学校にいまだ認可を出していない。

このような不明朗なスキームは、森友学園が単体でできるようなものではないので、国交省、財務省、文科省など国が関わっていたはずだ。国交省、財務省、文科省、そして安倍首相周辺がグルになって森友学園を優遇していたのだとすれば、これは汚職、談合事件であり、検察が介入すべき問題だ

この件については、刑事問題に発展する可能性も出ている。

当の安倍首相は「妻が名誉校長になっているのは承知している。私や妻が(売却に)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と明言している。

問題は、どこまでいっても「首相が直接的に売買に関与している」ということを証明するのが難しいことだろう。

首相答弁と首相夫人コメントの矛盾

この問題をしっかりと報道している大手メディアは、今のところ毎日新聞、朝日新聞、テレビ東京、TBSだけだ。

テレビ東京の報道は、2015年の「安倍昭恵総理夫人」瑞穂の國記念小學院名誉校長就任演説での内容と、安倍首相の国会答弁の矛盾点を伝えている。

まず、この名誉校長就任演説で昭恵夫人は「教育方針を理解した上で名誉校長に就任したことを強調」している。しかも、「こちらの教育方針は、大変主人も素晴らしいと思っている」とした上で、安倍晋三記念小学校にしたいという話があったことについて、安倍首相が「総理大臣というのはいつもいつもいいわけではなくて、時には批判にさらされることもある。むしろ名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたい」と答えたというエピソードを伝えている。

そして森友学園の籠池園長も「瑞穂の国、安倍晋三記念小學院という名前を銘打たせていただく予定でありましたけども、ご婦人、というか名誉校長のほうからおっしゃっていただいた主旨で、瑞穂の国記念小學院という名前でおさまってます。やはり瑞穂の国、日本の国を支えていく人材づくり、というのを目指してまいります」と、言っている。

総理大臣在任中に話を持ちかけられた、ということだ。

これは、安倍首相の国会発言と食い違う内容だ。

安倍首相は「私が(2007年)総理を辞めた時に、私の考え方に非常に共鳴している方、その方から小学校を作りたいんで、安倍晋三小学校にしたいという話がございまして、私はそこでお断りしたんですね」と答えている。

安倍昭恵氏と籠池氏が嘘をついているのか、安倍晋三氏が嘘をついているのか、それとも記憶違いだろうか?

もし2007年の会話を、2015年の総理在任中の話と混同したのだとすれば、そんなに記憶が不明瞭な人が首相などしていて大丈夫なのだろうか?

いずれにせよ、教育方針に積極的に賛同している安倍首相夫人が名誉校長として関与している小学校であり、安倍首相が国会で答弁したように、籠池園長は安倍首相にとって「私の考え方に非常に共鳴している方」である。

省庁、政治家が絡む談合ではないのか?

この不明朗な国有地払い下げスキームは誰が考え、誰が承認したのだろうか?

財務省、国交省、そして麻生副総理も「適切」の一点張りだが、財務省、国交省、文科省職員が首相や首相夫人に対する配慮・萎縮によって、この神道小学校に対する優遇を行なったのならば、彼らが何らかの圧力を感じていたということになる。その圧力が何だったのか、誰からかかっていたものなのか、もっと詳細に調べるには、検察が動くべきである。もし首相も国も関わっていないというのならば、徹底的に調べられても何ら問題はないはずだ。

この問題が悪質なのは、大手マスコミもまともに取り扱おうとしない、つまり国民にこの問題がまともに知らされることもない状況で、国民の財産が国家権力を通じて盗み取られている点であろう。しかも、戦前・戦中の軍国主義を押し付けるような教育方針を持っている小学校に、である。

日本国民はもはや皇国臣民ではない

安倍首相は「売却の件にかかわっていれば議員を辞める」といっているが、そもそも間接的であれ直接的であれ、教育方針や教育者の思想的にも色々と問題の多い小学校に安倍首相夫婦が関わっていることだけでも、十分に問題視されるべきである。

この4月に「瑞穂の國記念小学院」の開校を目指している森友学園は「塚本幼稚園幼児教育学園」を経営している。この幼稚園は、教育勅語や五箇条の御誓文を暗唱し、伊勢神宮への合宿参拝を行ったり、戦前・戦中の軍歌を歌わせ、最近では保護者に対して、中国韓国に対するヘイト文書まで配布していたことや児童に対する虐待まがいの扱いも明らかになっている。

「安倍昭恵総理夫人」も安倍首相本人も、これだけ問題の多い幼稚園の教育方針に賛同しているのだ。

産経新聞は、2015年1月に、この小学校設立プランに賛同して報道している。それによれば、昭恵夫人は2014年4月、同園の視察と教職員研修のため訪れたとき、鼓笛隊の規律正しいふるまいに感動の声を上げ、籠池園長から「安倍首相ってどんな人ですか?」と問いかけられた園児らが「日本を守ってくれる人」と答える姿を見て、涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら、「ありがとう。(安倍首相に)ちゃんと伝えます」と言ったそうだ。

戦前・戦中の皇国臣民教育を信奉しているとも取れるような教育内容だが、一般的な公立小学校でその教育効果が薄れてしまっては元も子もない。せっかくの教育効果が薄れてしまうことを防ぐために、同じような教育方針の小学校を設立しようとしたことが今回の事件の発端であるといえるだろう。

現在の日本は国民主権を基本としており、国民は天皇の「臣」つまり家来でも使用人でもない。国民一人一人に国家運営の主権があるのだ。瑞穂の国記念小学院の教育方針のトップには「天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ」「愛国心の醸成。国家観を確立」「教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成」とされているが、戦時中の軍歌を歌わせ、中国韓国に対するヘイトを教育者自らが撒き散らしているのが森友学園だ。

そもそも、教育勅語というのは、国体としての天皇を中心とする神道の国教化を唱え、民心を掌握(教化)することを提唱した水戸学派の儒教にその淵源がある。(*)水戸学において尊王とは、どのような制度をも凌駕する絶対的なものであり、天皇が幕藩体制の上に位置していた。こうした天皇と幕藩体制の関係性の理解そのものが「天皇は幕府=国王の上位にあり、皇帝と同等である天皇の下に位置する諸国王は天皇の下にある」という認識の淵源であり、アジアに対する膨張主義を援護するものであった。国体としての天皇、そしてそれを無批判に信奉するような教育勅語を信奉するような教育は、日本のアジア侵略を正当化し、国民の自由を奪った軍事ファシズム時代を無批判に信奉しているのと変わらない。

戦後日本は民主主義と平和主義を基調とする国家建設を目指し、日本国憲法を発布そしてその翌年には、教育勅語に見られていた天皇主権、尊王攘夷などの儒教的思想を徹底的に排除した、教育基本法を発布した。新たな国家を築く礎となるのは、民主主義と平和主義、すなわち憲法に則った新たな教育であったからだ。教育こそが、敗戦から立ち上がった新たな民主主義国家日本の再生の第一歩だったのだ。

その公教育を真っ向から否定するような教育方針を掲げているのが森友学園なのだ。

これについては、昭恵夫人自ら「この幼稚園でやっていることは本当に素晴らしいんですけれども、それがこの幼稚園で終わってしまう。ここから普通の公立の学校に行くと、普通の公立の学校の教育を受ける。せっかくここで芯ができたものがまたその学校に入った途端に揺らいでしまう」と語っている。

繰り返していうが、安倍首相は籠池園長について「私の考え方に非常に共鳴している方」と言っている

籠池園長と安倍総理は麻生副総理とともに日本会議のメンバーである。どこでどのようなやり取りがあって、今回の件が進められることになったのか、考えれば考えるほどおかしなことばかりの今回の国有地払い下げ事件問題。このまま幕切れにさせないためには、国民がしつこく声を上げ続けるしかない。

*教育勅語は、水戸学に傾倒していた儒学者横井小楠の後輩である元田永孚と井上毅によって起草された。井上毅は知っての通り、明治憲法の起草者でもある。