中山なりあき「武道必須化で下手に日本女性に手を出すと逆にやられるぞという風評を広めたい」はおかしい!

現代武道は敵を倒すためのものではない。(写真:アフロ)

先日ツイッターで、元文部科学大臣の中山なりあき(@nakayamanariaki) 氏がとんでもない発言をしました。腹が立って仕方ありません。

先日の日本武道協議会でも発言したが、護身術を身につけることを勧める。東大の空手演武会で女子部員による普段は禁じ手の護身術が披露された。必須化5年目の中学武道だが、柔道と剣道が殆ど。空手、合気道、少林寺拳法を増やしたい。下手に日本女性に手を出すと逆にやられるぞという風評を広めたい。

これの何がとんでもないかというと、その前にさんざん、沖縄での元海兵隊員による女性強姦・殺害事件について述べたあとの発言であるという点です。中学校で空手、合気道、少林寺拳法を必修化して禁じ手を教えれば、若い女性でも、レイプ・殺害しようと後ろから棒で頭を殴ってくる元海兵隊の男性を撃退できる、とでも言いたいようです。

私は小学校の頃から少林寺拳法を始め、社会人になってからはテコンドーをしてみたりと、かれこれ十数年は武道をしてきましたが、身長160センチ程度の私がどんなに頑張っても、元海兵隊の190センチくらいあるような男性に敵うとは思えません。護身の基本は逃げること、いかに戦わないかを考えること、最悪の場合でも不意打ちで相手が驚いている間に全力ダッシュで逃げることです。

こんな人が元文部科学大臣だったというのは、恐怖以外の何ものでもありませんし、彼のような不適切な人をそのポジションに据えていたのは、まさに日本の教育史上の汚点です。

彼はいくつか連続して投稿しているのですが、ツイート内容があまりにも支離滅裂です。

沖縄でもこれまで強姦や殺人事件はよく起こっているが、米軍基地絡みだと大騒ぎになる。政府も大慌て。犯人が日本人だったらどうだったか。ヤンキー・ゴーホームはヘイトスピーチそのもの。沖縄分断工作に加担する2紙、その裏に中国の影を見る人はまだ少ない。米軍が撤退したら何が起こるかは自明だ。

ヤンキーゴーホームはヘイトスピーチなのに、まったく無関係な中国を持ち出して陰謀がどうのというのはヘイトスピーチではないようです。だいたい、沖縄県知事にしても、米軍基地の現状のあり方に反対しているのであって、アメリカ人がどうのこうのという話はしていません。曲解です。

ちなみに、彼が文部科学大臣をしていたのは小泉内閣時代のことです。その後、自民党を出て、たちあがれ日本→日本維新の会→次世代の党と、保守系政党を渡り歩いているようですが、幸い、前回の衆院選で落選したので、今は議員ではありません。こういう人物には早いこと政界を引退してもらいたいと思いますが、本人はまだまだ国政を狙って頑張るつもりのようです。

日本武道協議会は、こんな人物を持ち上げてまで武道を必修化・普及させたいのでしょうか?

私も武道を学んだ人間として、学校教育の中でその要素が取り込まれることは素晴らしいことであると思っています。

たとえば、私が学んでいる少林寺拳法では、感動を覚えるほどの力強く美しい演武や、柔法技の奥深さなどを学び、どんな人でも少しずつ確実にできるようになっていきます。

それが可能なのは先生や先輩が懇切丁寧に指導してくれるからです。

ニコニコしながら「ちょっと持ってごらん。」と言われて、腕を握ったとたんに、ふわっと体が浮いて投げ飛ばされ(ちゃんと途中で止めてくれるので体を打ち付けたりはしません)たあと、「これはねぇ」と技や動きの一つ一つに奥深い解説をつけて丁寧に教えてくれます。

彼らが私にギュウギュウと関節技をかけて、痛めつけて、力で従わせようなどとしたことや、「俺の言うことを聞け」「俺が正しい」というような態度をしたことはありません。「強ければいい」ものではないからです。

なぜ体をこう動かすのか、なぜ腕をこう動かすのか、なぜこちらの方向に避けるのかなど、細かく、理論的に説明してくれます。単に「体で覚えろ」というのではなく、正しい構えや型を身につけるためにはしっかりと自分で考え、理解することが必要だということを学べます。しかも、あまり「才能」「体格」にも左右されません。背が低い、高い、力が強い、弱い、女性、男性など関係なく、それぞれが自分なりの強さや美しさを目指して練習にはげみます。

そして、教えてもらうばかりではなく、後輩や同輩に教えることで、「これはどういう仕組みなのか」「これはなぜなのか」をさらに深く考え、自分の技の甘さも理解でき、自分なりの工夫をするようになります。自分の技の上達とじっくりと向き合うことができるからこそ、自然と先生や先輩に対する尊敬の心も出てきますし、自分よりも体格や体力の弱い人、子どもなどに対して、怪我をさせたりしないように調節したり考えながら教えたりする思いやりも学びます。そうして、それぞれのペースはあるけれども、体はより素早く、拳はより強く、蹴りはより重く、技はより正確にかけられるようになっていくのです。

頭と体を使って人を成長させる、元祖・アクティブラーニングであるという点こそが、現代武道のあり方なのです。

武道を実践で活かすことなど、達人であっても難しいはずです。中山氏のいうように「禁じ手」を教え込んで、相手を傷つけることなど、現代武道の目指す方向性としては間違っていると思います。そもそも、銃器を持っている人もいれば、こちらの誘いに応じないめちゃくちゃな攻撃をしてくる人もいるのに、日頃の練習で想定していることを冷静に実践し、自分よりはるかに屈強な人間を打ち負かすなんて、ほぼ不可能です。

今回の被害者が武道の達人だと仮定してみましょう。それでも、まだ人通りもあるよる8時台に散歩をしながら「どこから敵が来てもいいように身構えて」いるわけがありません。そんなことをしなければいけないのは、もはや日常生活ではなく戦場です。沖縄は戦場ではないはずです。。。

今回の犠牲者の方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。