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緊急会議にウッズが駆けつけるPGAツアーのエマージェンシー(緊急事態)。議題は「リブゴルフ対策」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 「勝って兜の緒を締めよ」ということなのだろう。リブゴルフ側から仕掛けられた法廷闘争の「初戦」で勝利したばかりのPGAツアーが、リブゴルフへの諸々の対策を講じるための「緊急会議」を開こうとしており、そこには王者タイガー・ウッズも駆けつける。。

 米ニュースサイト「ファイア・ピット・コレクティブ」によると、今週18日に開幕するプレーオフ・シリーズ第2戦のBMW選手権の会場、ウィルミントンCC(米デラウェア州)で、8月16日と17日の両日、PGAツアーの重要会議が3種類、開催される予定だという。

 16日は、まず選手たちの諮問委員会のミーティングが開かれ、続いて、特別な顔ぶれで構成される緊急会議が開催されるそうだ。

 「特別な顔ぶれ」の筆頭はメジャー15勝、通算82勝を誇るゴルフ界の王者ウッズだ。そして、世界ランキングトップ20の選手たちや各方面に対して影響力があると考えられる面々が招集され、混沌とした現在のゴルフ界の中で、PGAツアーとそのメンバーである選手たちがどうあるべきか、リブゴルフに対し、何をどうすべきかを話し合うと見られている。

 翌17日には、PGAツアーを率いるジェイ・モナハン会長と選手たちとが向き合い、さらなる討議が行なわれる。

 プレーオフ・シリーズのようなビッグ大会の開幕直前の2日間に3種類もの会議を大会会場で次々に開くこと自体が異例だが、そこに、出場選手ではないインフルエンサー的な選手を呼び入れることは、もっと異例である。

 そして、出場選手ではない状況下にあるウッズが急きょ駆けつけることは、前代未聞の異例中の異例だ。

 それほどPGAツアーが置かれている現在の状況が「エマージェンシー(緊急事態)」であることが窺い知れる。

 かつて、ウッズの好敵手と呼ばれ、四半世紀以上の間、ともにPGAツアーを盛り立ててきたフィル・ミケルソンは、誰よりも先にPGAツアーに背を向け、リブゴルフへ移っていった。

 世界ランキング1位に輝いたダスティン・ジョンソン、メジャー4勝のブルックス・ケプカらが次々にPGAツアーから去り、最近ではマスターズ2勝のバッバ・ワトソンもリブゴルフと契約を交わし、ワトソンはPGAツアーのメンバーシップをすぐさま返上した。

 ビッグマネーの魅力で、こうしたスター選手たちを次々に奪い去ったリブゴルフのことを、ウッズが激しく批判したのは7月の全英オープン開幕前の会見だった。

 「才能ある若いゴルファーがリブゴルフに出ることで、生涯一度もメジャー大会の舞台を踏めなくなる可能性さえある」

 「4日間72ホールを戦うことや年間を通してツアーの日程をこなしていく経験をするチャンスが一度も得られないことになる可能性もある。それは、ゴルフにとって正しいことではない」

 「長い目で眺めたとき、リブゴルフが良い方向に向かっているとは僕は思わない」

 全英オープンでは予選落ちとなり、ゴルフの聖地セント・アンドリュースに涙で別れを告げたウッズが、あれ以来、初めて戦いの場に姿を見せることになるが、その戦いは、ウッズ自身のゴルフの戦いではなく、リブゴルフとの戦いだ。

 まさに、ゴルフ界のエマージェンシー(緊急事態)である。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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